『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 母を介護してくれた妹が、現在のマンションに住み続けるには…
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
母が亡くなり、唯一の財産であるマンションが遺されました。相続人は私と妹。現在は母を介護していた妹が暮らしています。私が亡くなった後も、妹が安心して住み続けられるにはどうしたらいいでしょう。
★メール本文
母が亡くなり、唯一の財産であるマンションが遺されました。
相続人は、私と妹の二人。
妹は独身ですが、私は妻と子供が二人おります。
預金はほとんどないので、マンションをどうするか、
というのが相続に関する問題のすべてです。
現状は母を介護していた妹が居住しており、
しばらくはそのまま住み続けたいと話しています。
私も依存はないのですが、
妹はマンションを「共同所有にしたい」と提案。
私はそれでもいいのですが、私が死んだあとで、
妻がその権利を相続したら、十中八九、その性格からして
「取り分を現金でよこせ」と言いだしそうな気がするのです。
それを防ぐためにも妹の単独名義がいいと思うのですが、
妹は「それじゃ申し訳ない」と言うし、
妻もそれを知ったら「なんでそんなことしたの」と怒るでしょう。
私はどうすればいいのでしょうか。
(わらしべ亡者さん 中野区 60歳)
シンプルなのは相続放棄
奥様が怒り出すとか…そんなことないんじゃないかと思いますけど。すごくいろいろ考えていらっしゃいますね。
そもそも、お母様が亡くなられた時点で、既に共同で相続なさっているわけです。それで、マンションは名義を妹さんになさった場合、その半分の権利というか、本来はお金で清算するわけです。でも、そんなことをするおつもりは、まったくないのでしょう。一番簡単なのは、わらしべ亡者さんが相続放棄しちゃって、マンションを妹さんが相続する形です。よくある話ですけど、妹さんがずっと介護なさったんでしょうから…。
共有にする方法もあります
何かやり方があるかといえば、共有にして、それで自分の持ち分を「貸す」ことが考えられます。普通は「家賃はいいよ」と、タダで住まわせてあげるんでしょうけど、ここできちんと「賃貸借」の契約を結んで、月々、家賃をほんの少しでも支払っていただく。これをきちっとやっておけば、わらしべ亡者さんが亡くなられて、権利を奥様が引き継がれたとしても、基本的に妹さんに「出ていけ」とは言えなくなるわけです。
あとは、フランスで一般的な「ヴィアジェ」という方法を使うこともできます。亡くなるまでちょっとずつ、たとえば3万ずつ、代金を分割で払い続けて、亡くなったら終わり…という形で売るというやり方です。あまり聞かない方法だと思いますが、日本でもやることは可能です。そのほか「信託」という仕組みを使えば、いろいろなやり方が考えられるとは思います。
「放棄」するならできるだけ早く
いちばんシンプルなのは、わらしべ亡者さんが相続放棄することなんですけど、ただし、これはあまり時間をかけられない。3ヶ月以内にやらなくちゃいけないんです。
お母様の介護をされた妹さんに、マンションを遺すというのは、筋が通ってる話ですから、奥様としても文句を言う筋合いではないように思うのですが、いかがでしょうか。いろんなやり方は考えられるんですけど、あまり策を弄しない方がいいような気がします。
今回は、「相続」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
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入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
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賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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