増税隠しの国会をふりかえる~茶番劇か猿芝居か~ニュースパレード  山本香記者取材後記

増税隠しの国会をふりかえる~茶番劇か猿芝居か~ニュースパレード 山本香記者取材後記

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 文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)

 その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。

 文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。

 



 

 6月21日に150日間の会期を終えて幕を下ろした第211通常国会。立憲民主党の泉代表は「岸田総理は聞く力が全くない。防衛政策や財源の議論は中途半端で、少子化対策も当事者目線ではない。政府の変わらない姿勢が明確になった国会だった」と振り返った。

 政府は、防衛費について5年間で43兆円程度、少子化は2024年度からの3年間で3兆円台半ばという巨額の予算投入を決めている。先の国会ではそれらの財源問題をめぐって紛糾。防衛費について政府は、必要性や積算根拠さえ示さないまま。少子化対策についても2030年までに少子化トレンドの反転を目指すというだけで、出生数の目標値についての回答も避けた。国民の血税をつぎ込む対策の費用対効果も明確に示せないまま、国民には、財源という重しが将来、増税や借金という形でのしかかるのは確実だ。

 

看板に偽りあり

 211回通常国会冒頭、施政方針演説で岸田総理は「検討も決断も、そして議論もすべて重要であります。それらに等しく全力で取り組むことで、信頼と共感の政治を本年も進めてまいります」と強調した。振り返ってみると、防衛費増額や少子化対策、原発の耐用年数、入管法など人権に関わる法律など様々な議論が交わされたが、政府からの空虚な説明が繰り返されただけだった。

 会期末間際の6月16日に成立した防衛費増額のための財源確保法では、税外収入を複数年度にわたって防衛費に充てるというもので、増税を直接決めるものではない。政府は5年間で総額43兆円必要としているが、財源確保法で確保できるのは特別会計の剰余金や国有財産の売却益など3.4兆円。しかも1回限りの税外収入をかき集めたものだと指摘する立憲民主党の野田佳彦元総理大臣は自身のブログで「財源の確保とあるが、看板に偽りありの欠陥法案だ。その他の財源も法的に担保されておらず中身はスカスカ」と批判した。
足りない部分は借金か増税で賄おうとしているのは火を見るより明らかだが、岸田総理も鈴木財務大臣もついぞ増税という言葉を使うことはなかった。

 国会閉会を受けて野党幹部が「(増税という)痛みを隠した国民まやかし国会」と振り返った言葉が印象的だった。

置き去り
 
 先の国会では、改正入管難民法やLGBT法など人権にかかわる法律も成立した。
2つの法律に共通しているのは、当事者から批判の声が上がっていることだ。

 改正入管法は、2年前に廃案になったものの焼き直し、LGBT理解増進法はというと、同じく2年前に超党派で合意したが、反対する自民党内の保守派に配慮し、修正が何度も加えられた。2年前から俎上に上りつつ、前に進めなかったのは政府自民党の都合が大きいが、突如、先の国会での成立を急いだのも政府自民党。G7広島サミットの開催や、国連などの機関から国際基準を満たすよう勧告を受けていたことなどが背景にある。

 国会の外で繰り返された「当事者を置き去りにしないでほしい」という声は、審議されている委員会の部屋でもかすかに聞こえていた。

 
 もう一つ、人権にからみ注目されたのがジャニーズ事務所の性被害問題だ。被害者が自ら国会に出向き、声を上げたが児童虐待防止法改正案は、通常国会での審議、成立は見送られた。

 会期中の6月5日、約3万9000筆の署名を各政党に提出した被害者。その中のひとり、カウアン・オカモトさんは「未来に向け、子どもたちを守る法律を早く作ってほしい」と訴えたが、政府が慎重に考える必要があるとして、先の国会での審議、成立を見送った。

安心してください

国会閉会翌日、衆議院の廊下を歩いていると・・「安心してくださ~い。税金は一切使われておりません」という声が聞こえてきた。国会の警備に当たる衛視さんが国会見学の子どもたちに、衆議院中庭の池にいる錦鯉について説明していた際の言葉だ。

衆議院で飼っている錦鯉は25匹。すべて全日本錦鯉振興会から寄贈されたもので、一匹数十万円するという。もちろん餌も振興会が負担していて、衛視さんの説明通り、税金は1円も使われていない。

幕を閉じたばかりの通常国会では、防衛費増額や少子化対策などの財源問題で議論が紛糾した。その一方で旧文通費をめぐっては未だに領収書の公開を拒み続け、身を切る改革にも後ろ向き。衛視さんが「安心してください」と言っても、子どもたちが大人になる2050年前後には、日本の人口は1億人を割り込む見通しであり、国民一人当たりの国の借金の額はどれくらい膨れ上がっているのだろう・・・とても安心などしていられない。

(取材後記)
ある国会議員の秘書から「政治の劣化がはなはだしい」という言葉を聞いたのは通常国会が始まる直前のことだった。中小の野党が乱立し、政権への監視機能が分散していることで、政府与党も緊張感を欠いているからだという。簡単に言うと、ダメな野党のおかげで政府与党もだらけ切っているということだ。岸田総理は、国会閉会中に国会での議論を経ず、閣議決定でどんどん決めていったのは野党がだらしないからだとも指摘した。確かに安倍元総理の国葬は2022年夏、反撃能力保有などを明記した防衛3文書は同年12月の閉会中に閣議決定された。その後、国会に関連する法律案が提出されても、数の上で上回る与党。野党が束になってかかっても太刀打ちできない。しかも同じ野党内で政府案に歩み寄りを見せる党もいる状況はなおさらだ。現状を打破するためには選挙で勝って議員の数を増やすしかない。

先の国会では、解散を巡って右往左往した与野党議員たち、次の解散時期は、早ければ秋の臨時国会冒頭解散とみて、国会が閉じた途端、選挙の準備を加速させている。頭の中は選挙でいっぱいということがなければいいが。

 

 

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