『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 不動産のクラウドファンディングって、どうなんでしょう?
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
★メールまとめ
・最近「不動産のクラウドファンディング」が流行していると聞きました。かなり利回りがいいと宣伝されていますが、本当でしょうか。
★メール本文
最近、不動産のクラウドファンディングが流行っていると聞きました。
金額は1万円程度から出資可能で、
利回りが10%から、うまくいけば20~30%にもなるというのです。
それでいて、リスクはかなり低い…というのですが、そんなにうまい話があるのでしょうか。
大垣さん、カラクリを暴いてください。
(ナッシーくんさん 多摩市 58歳)
昔からある不動産投資
これはネットで売っているから「クラウドファンディング」という言い方をしているんだと思います。おそらく実態は、大昔からある「不動産特定共同事業法」という法律に基づいた、不動産投資の一つだと思います。
以前「ワンルームマンション投資」が話題になりました。ご記憶の方もたくさんいらっしゃるでしょう。あまり性質の良くない業者などがたくさんあって、いろいろ問題が出てきたときに、国土交通省が「ちゃんと免許を取ってきちんとやりましょうね」ということで、この「不動産特定共同事業法」が作られました(1995年施行)。いま話題になっている「不動産クラウドファンディング」も、この法律に基づいて行われるものなのでしょう。小口にしてネットで販売することで「クラウドファンディング」という名前を使っているわけです。
最近の「クラウドファンディング」の特徴
昔はこうした投資の場合、借金して購入するのが普通でした。たとえば1千万ぐらいのものを、自己資金200万で、残りの800万は借金して買わせるという形です。
こうした投資の場合、利回りが悪くなると、かなり厳しくなってしまうのはお分かりいただけると思います。
借金して買うということで、税金がお得ですよ、という感じを出そうということと、利回りも全体に対しての自分の出資分が少ないので、高く見えるというのがポイントでした。
で、最近の「クラウドファンディング」に回ってくのは、そうしたかつての不動産投資をやられてた方が手放された物件とか、何らかの問題があって売りにくい物件を非常に安く買い入れたものとかが多いようです。
もともとの仕入れ価格が安いので、それを「クラウドファンディング」するにしても借金して支払う必要はまったくなく、手持ちのお金でなんとかなるんです。
確かに利回りがいいときもある
もともとが安い物件を、ネットでさらに細かく分割して売るわけで、お金を借りないで買えるなら、家賃の利回りは、それなりに悪くない場合もあります。
でも問題は、どんな会社が運営しているのかということ。こうした「クラウドファンディング物件」は「サブリース」といって、いったん全部借り上げた会社が家賃を保証し、店子を見つけていくことになります。だいたいがそんな規模の大きくない会社なので、こうした物件をいくつも抱えていると、金銭的な問題が起きがちなんです。そうなると、利回りどころではありません。しかも、自分で全部の権利を持っているわけではなく、たとえば1億ぐらいの物件の10万円分しか持っていないということだと、なんとかしたいと思っても身動きがとれません。
クラウドファンディングに手を出すなら
もし、こうした投資に手を出すなら「10%で回る金融商品」とは思わず、すごく個性的な商品にお金を使っている…と、自分で認識しておけばいいんだと思います。「あ、ここだったら確かにイケるわ」って確信できたら、この面白い投資をたくさんの人たちと一緒にやってるんだ、と思って買えばいい。確かにいま、値段がちょっと下がってきているところなので、それなりの利回りが得られる可能性もあると思います。昔、社会問題になった時と比べて、お金を借りないで買うなら、許容範囲でしょう。
こうした物件は「売れない」
ただ、繰り返しになりますが、こうした物件を売ることは、とっても難しい。うまくいっていないと、簡単にはいきません。
そうなると、たとえ10%の利回りとしても、10年もらって、やっと100%。だから元本が返ってくるまでリターンを得ようと思ったら、相当長くやらなきゃいけない。「今年10%で回りますよ」というだけではダメで、入れたお金が全部返ってきたうえで、毎年10%で回ってた…っていうのが「本当の10%」なわけです。
僕らはこれを「マネーイン・マネーアウト」っていうんです。お金を入れて、出て、そこから初めて振り返って計算する。それが本当の「利回り」なんです。
そういう意味では、その「クラウドファンディング物件」をどこで売ることになっているのかも大切です。出資した全員が同意しなければ売れないわけですから。
そうした細かいことを言い始めると、けっこう大変なところがあるかもしれない。
確かに不動産投資の状況は、少しずつ良くなってはいます。でも「10%」は今年の利回り。そこをよく考えて投資なさるのが懸命かと思います。
今回は、「不動産クラウドファンディング」について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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