『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』   富裕層のノウハウを中間層に

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』   富裕層のノウハウを中間層に

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

今回は特別編として、大垣さんの日本興業銀行時代の同僚であり、現在は早稲田大学商学学術院 ビジネス・ファイナンス研究センターの上席研究員、米田隆さんをゲストにお迎えした4月1日放送のダイジェストをご紹介します!

「トータル・ライフ・デザイン」という考え方

鈴木
米田さんは「トータル・ライフ・デザイン」という考え方を提唱していらっしゃいますが、これはどういうものなんでしょう?

米田
これは、キャリアデザインだけでもなく、ファイナンシャルプランニングだけでもない。両輪を回すことで、変化に対してより柔軟に対応できる生き方のことで、これを世の中に普及していきたいと思っています。
私自身が35歳で日本の銀行を独立して、ゼロから始め、何度かキャリアを変えながら、いま大学の常勤の仕事をしながらも、副業でいろいろな新規事業に関わっています。仕事が変わるたびに何か新しいものを身に着け、一方、確実に資産形成をする中でリスクを取ることを、その資産が支えてくれてきました。

大垣
プライベート・バンキングについて、ちょっと教えてもらえますか?

米田
富裕層の資産運用です。私がこの業務に関わったのは1990年前後、ちょうどバブルが崩壊する頃です。当時は不動産が突出して大きな財産になって、みんなそれに対する相続税をとても気にしていました。資産保全、イコール、相続税対策みたいな流れでだったんです。

大垣
本来の意味は違う?

米田
欧米の資産運用は、自分の事業を売却した後それを運用して次のことにチャレンジする、あるいはプロフェッショナルな人たちが自分の高いインカムの一部を安定的にセービングして、それを運用するということで、キャリア・チェンジしても対応できる。有価証券を中心とした資産運用がメインです。

そもそも「富裕層」とは…

大垣
以前、米田さんに「金持ちの資産運用って増やすんじゃないんだ、減らさないのが目的なんだ」って伺いました。バブル崩壊から30年以上経ちますが、いまの日本でプライベート・バンキングってどういう具合なんでしょう。

残間
聞いてる人たちは、特別な個人用の銀行があると思っちゃう。でも物理的にそういうものがあるわけじゃないんでしょう?

米田
プライベート・バンキングっていうのは、あくまでも富裕層向けの資産運用、っていう意味なんですね。しかもそれが有価証券中心で、普通は国際的に分散します。

残間
そもそも富裕層っていうのは、どれくらいの資産を言うんですか?

米田
欧米でいうと、少なくとも金融資産が3億円ぐらい、そこが最低ですね。ドルなら300万ドル、そこが入門コースで、だんだん増やしていく。だから上の方では100億、1000億と言う方もいます。

♪ここで一曲。
米田さんの想い出の歌「海を見ていた午後」(荒井由実)をお送りしました。

*******

富裕層のノウハウを中間層にも

大垣
きょう米田さんを及びしたのは、トータル・ライフ・デザインのお話を始められた。これは中間層をターゲットにされてますよね。プライベート・バンキングなんて関係ないと思われるかもしれませんが、事業を売った大きなお金を減らさないとか、そういうノウハウが普通の人の…爪に火をともして溜めたお金を減らさないというニーズは同じですよね。そういうことを本当に考えてあげなきゃいけないのに、いまだに何もない。儲かればいいと思う金融機関が、オトナ世代の人たちに売りつけようとして金融庁から怒られたりしています。やっぱり米田さんのような本当のお金持ちを見てこられた方が、そのノウハウで我々のところ、中間一般庶民層をやらないといけないと思い始めている、それはとても大きいことだと思います。

米田
私も富裕層の資産運用、一族の一体性強化という、実は資産運用から入りながら、お金じゃないんだ、一族の一体性のほうがもっと大事なんだ、というところに入って新しいプラクティスを作ってるんですね。1000億みたいなお客さんも実際いらっしゃるんですけど、他方、私が大変心を痛めているのは、中間層が劣化してきていること。その中で、誰もが所得では勝ち組に入れないけど、若い時からしっかり自分の収入の一部を積み立てて分散して長期運用すると、誰でもバランスシートリッチにはなれる。ここがとっても大事で、中間層がしっかりしていれば、民主主義も、個人の人権、特に尊厳もきちんと担保できる社会になる。そこに持っていくことが大事だと思うんです。
先日、ある資産運用会社に呼ばれて社内の研修をやったときに、運用会社の社会的なミッションというのは、中間層の劣化を防ぐことではないでしょうか、とかなり厳しく申し上げたところ、みんな背筋がピンとされて「大変強いメッセージをいただきました」とおっしゃっていました。

中間層劣化、最大の要因は高齢化

残間
具体的に「劣化」というのはどういうことなんでしょう。

米田
いろいろなスタディが出ていますが、所得が中間層が分かれていくという意味では、平均所得と中央所得の差が広がっているとか、戦後もっとも多い生活保護者とか。特に高齢化がこれからは直接的に無年金や年金が少ない方が高齢化を要因に、中間層から下に漏れていく。その人数がすごく多いのは高齢化が一番の理由。いままでは2000年から10年15年くらいは正規従業員じゃなくなった、若い人たちの所得が落ちて行ったけれど、これからは高齢かが中間層の崩壊の最大の理由になる。これからジワジワとくる、これをどう救うか。

大垣
この番組のリスナー世代はどうすればいいでしょう。

米田
オトナたちが子どもにどう教育するかがすごく重要で、どんなに政府が啓蒙活動しても、自分の親が成功して「こういうことが大切だ」と習慣で伝えない限りダメだと思う。

大垣
でも僕らの世代、そんな教えられるようなことやっているのかな。

「7:3のルール」を守ろう

残間
若い時から、一定の金額を少しずつ用意しておけばいいということ?

米田
そうです。具体的に言うと、確定拠出年金なんていうのは、税法上もすごく優遇されて、所得にリンクする税金や社会保険料まで少なくしてくれるわけです。
実は私、確定拠出年金ではそれなりに運用の成績を出しているんです。具体的に自分のデータなので喋ることは問題ないと思うんですが、積んだお金がおよそ920万。それが今、2770万になっています。投資額が1だとすると、2増えて3になっています。
自分の給与から引き落とされて、それが毎月投資される。実はこの、強制貯蓄っていう要素があることが…給与が去年から10上がりました、ということがあると、ほとんどの人はその10を使ってしまうんです。その時に、そのうちの7を強制貯蓄…これは将来のあなたの経済的な自由のために。3は去年から比べて自分を豊かにするために…私はよく「7:3のルール」と呼んでいます。

大垣
子どもたちは案外わかっているかもしれない。でも私たちの世代では、米田さんみたいに確実に確定拠出やってる人ってむしろ少数でしょう。

米田
日本の運用がうまくいっていない最大の要因は、成功者が少ないってこと。だから、成功者はカミングアウトしろ、って言うんです。ちゃんと言って、家庭の中でもそういう話をしっかりしようと。フランスの社会学者、ピエール・ペルデューが「家庭の持っている文化資本が格差要因の一つ」と言ってます。たとえば家に書籍がある、ピアノがあるということで。

残間
お金よりも体験とも言われてますよね。

米田
そうです。だから政府がいかに啓蒙活動をしても、効果はあまりない。それより親が成功体験を語ったり、習慣を促すようなことをしつけの一環としてやってるかどうかがすごく大事だな、と思うんです。オトナの皆さん、ぜひ子どもたちにしっかり伝えていただくよう、お願いします。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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