「転職の壁」打開へ半歩 藤井氏「“労働市場の流動性を高める”って耳障りの良い言い方ですけど…」
4月13日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、木曜コメンテーターで京都大学大学院教授の藤井聡氏と寺島尚正アナウンサーが、「転職の壁」打開へ半歩というニュースについて意見を交わした。
藤井氏「経営者からしたら使い捨てしやすくなる」
政府は12日の新しい資本主義実現会議で労働市場改革の具体策について本格的に議論を始めた。自己都合で失業したときの給付金を迅速に支給し、在職中に学び直しをする場合の助成金支給額の引き上げなども検討する。包括的な取り組みで転職しやすい環境を整え、成長産業への労働移動を促すとしている。
政府はリスキリング(学び直し)を推奨しているが、具体策としては海外大学院への留学・オンライン留学の促進、休業より教育訓練などを選ぶように雇用調整助成金の支給率を見直すこと、教育訓練を選んでも助成金が支給されるようになる、といったものがあるという。
失業した際に収入を保障される失業給付は、「自己都合」の退職と倒産や解雇に伴う「会社都合」の場合に分かれる。現状では自己都合なら給付開始まで原則2カ月以上かかる。これを会社都合のときの7日間と同じ水準にまで短縮する調整に入るとしている。
労働市場の流動性が高まれば、企業も人材の獲得や定着に取り組む必要性に迫られることになる。
寺島アナ「“転職のしやすい社会”ということなんですけども、藤井さん、これはどうでしょうね?」
藤井氏「“労働市場の流動性を高める”って耳障りの良い言い方ですけど、要するに経営者からしたら“使い捨てしやすくなる”っていうことですよね。アメリカ型社会ってそういうことなんですけど。アメリカは景気が悪くなると急速に失業率が上がっていくんですよ。それがアメリカの脆弱性の一つで、日本の雇用は比較的安定している。雇用が守られていくというのは日本の経済を安定させる大きなプラスのメリットだったわけですけど、それをわざと捨てに行ってるっていうことですよね。だから、聞こえは良いんだけど、これは本当に“使い捨て型社会”だということにもなるので、そうならないような仕組みをちゃんとやればいいんですけどね」
さらに、藤井氏は転職しやすい環境を整えていく上での経済の在り方について自身の見解を述べた。
藤井氏「しかも、これはデフレを放置したままだったら、より一層使い捨てになるわけですよ。そうじゃなくて、ちゃんとインフレで経済が成長していくような状況で、より良い職場を求めるようにするためにリスキリングを推奨するんだったらいいんですけど、インフレになっていって下客を切って上客で経済が回っていくような状況にして、それでもなお、職場と労働者のマッチングがうまくいってないところについての転職サポートっていうのはあると思いますけど、デフレを放置したままこれをやると、弊害のほうが増えると思いますね」
寺島アナ「物事にはすべて良い面と悪い面ってありますけど、良いところばっかり見て、悪いところが『あれ?抜けちゃった』みたいなのでは済まされませんからね、こういうのって」
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