『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 政府が「貯蓄から投資へ」と旗を振るけれど、やっぱり投資に手を出すべき?
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2023」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
政府が「貯蓄から投資へ」と旗を振るけれど、やっぱり投資に手を出すべき?
2023年2月25日の放送では、「NISA」についてメールをいただきました。
★メールまとめ
・新しいNISAなどがマスコミを賑わせている
・でも選び方などわからない
・自分はそんなに賢くないと考えている。手を出さない方がいいのでは?
★メール本文
最近では政府が旗振り役となって「貯蓄から投資へ」という大キャンペーンを繰り広げていますよね。
新しい「NISA」についての記事もたくさん出ています。
でもやっぱり、「投資」って、頭を使うものだと思うんです。
賢い人向きというか…
私のように、そんなに賢いとはいえない人間は、手を出さない方がいい分野だと思って長年生きてきました。
大垣先生、この考え方って、間違ってますか?
(ノリ・マキオさん・埼玉県草加市 59歳)
「NISA」やった方がいい?
大垣 鈴木さんは、お知り合いの方に「NISAやった方がいいよ」と言われたそうですが、まず「NISAとは何か」というところから考える必要があります。
NISAは、限度額の範囲内であれば、金融商品から得られる利益が非課税になる制度。通常は、およそ2割が税金で持っていかれてしまいますので、これはとてもお得な制度なのは間違いないですね。
これを使うか、使わないかは個人が判断すべき問題で「使った方がいい」ということは言えません。ただ、もし投資をやるということであれば、NISAの枠の中で行ったほうがいいのは確かです。
投資は「賢い人」向きなんですか?
残間 この質問されてきた方は「自分は賢くない」とおっしゃってますが、投資は「賢い人」じゃなきゃ、やらない方がいいの?
大垣 まず「賢い」という定義が難しいですよね。投資って、頭を使うと、大体うまくいかないものなんです。
鈴木 そうなんですか!?
大垣 短期間で勝ちに行こうと思っても、常に勝ち続けられるかと言えば、そういうものではありません。
案外、一番儲かるのは、全然頭を使わないやり方…「ただ買って置いておく」というものだったりします。あるいは、毎月愚直に積み立ていくやり方もあります。最近「積み立てNISA」というのも出てきました。なまじウロチョロ、一喜一憂するより、こういうものを利用されるのも悪くないと思います。
投資の入門書などを見ると「長く持つのが一番いい」と書いてあることが多い。大きな理由は、ご存知の方も多いと思いますが、売り買いするときに手数料を取られるからですね。10%とか、20%といった具合に、大きく儲かっているときに、1%や2%を取られるのは、そんなに痛くないかもしれません。でも、今は儲かって5とか、せいぜいそんな時代ですから、そこから1,2%抜かれるのは、かなり痛手でしょう。
預金の金利は1年とか2年といった期間の話ですけれど、売り買いはその都度手数料がかかりますから、しょっちゅう取引していると、手数料をものすごく引かれます。もちろん、そういったギャンブル的な楽しみを味わいたいという方は良いでしょうけど。でも、なんとか儲けてやろうぜ、とか思って売り買いすると、うまくいかないことが多い。
残間 賢いとかそういうんじゃなくて、性格の問題もあるかもね。
問題は「70」を越えてから
大垣 ご質問されてきた方は59歳。おそらく60ぐらいになられると、一回退職金をもらわれたりすることがあるでしょう。それから70までの間に、そのお金が必要かといえば、おそらくまだまだ、働いて稼いでらっしゃるのではないでしょうか。
欧米でもそうなんですけど、この60からあと10年というところで、投資をやった方がいいんじゃないか、という議論があります。
退職金というのは、もともと税金をそれほど引かれずにもらえるお金です。これをNISAに入れておく。本当にお金の心配がリアルになってくるのは、だいたい70くらいから。その時、NISAに入れておいた退職金は、まず減っていることは考えにくい。過去10年、20年とさかのぼってみても、その入口と出口で、出口のほうが減っていたという例はほとんどありません。
そしてNISAであれば、それをいよいよ必要になって出すとき、税金がかからなければその分も上乗せされます。
NISAって、新聞とか読むと「若い人用」って書いてあることが多いけれど、そういう意味では、こういう退職を控えた節目のところで使う選択はアリだと思います。
ただ、どんな投資をしたいかによるんです。利ざやを稼ぎたいなら、ご質問されてきたようなタイプの方には向きません。でも、ただ貯金しといてもしょうがないから、じゃあNISAに入れとくか…って感じで置いておくと、10年後にはけっこう増えているかもしれない。
ただ、私がいつも言ってるのは、それよりも何よりも…自分が長く稼げた方が絶対いい、ということ。自分がこれから20年ぐらいのスパンで何をやるかっていうようなことを考えた方がいいと思うんです。
投資で食べていくのは難しい
大垣 投資では食えない、と思っていた方がいいです。
「アセット・アキュミュレーション」という言葉があります。これは「財産を増やしていく時期」のこと。そのあと、「財産を保護する時期」があって、最後に「上手に使い切る時期」がやってくる。
財産を保護する時期は、50歳から70歳くらいまでの間。この時期は、増やすことを考えるよりも、そこまで持ってきたものをいかにキープしていくか。物価が上がった分だけ、資産が増えればそれでOK。でも貯金だけだと、物価が上がっても資産は増えないから、ここで投資、NISAといった選択肢が浮上してくるわけです。
貯金を切り崩していくのは70くらいから、だんだん少しずつ減っていって、亡くなるときゼロになっていれば理想ですよね。
今回は、投資について考えてみました。
メールをお寄せいただき、ありがとうございます。
大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。
第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。
東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』など。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。
※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください。
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
関連記事
この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…