東日本大震災から12年、これからの“震災報道のあり方”を考える
ノンフィクションライターの石戸諭と、女装パフォーマーのブルボンヌを迎えた3月10日放送「西川あやの おいでよ!クリエイティ部(文化放送)」。
「きょうのクリエイティ部」では「『震災報道のあり方』を考える」というテーマでお届けした。
2023年3月11日で、発生からちょうど12年となる東日本大震災。警察庁によると、これまでに確認された死者は1万5900人。その後の避難生活や自殺など「震災関連死」と認定された人が3789人。さらに現在でも、2523人が行方不明となっている。
福島第一原発の処理水など、震災から12年経った現在も被災地にはさまざまな困難が残されている一方、メディアや世間の関心は年々薄まり、風化が進んでいるといわれている。報道する数も減り、被災当時の景色も無くなっていく中、今後どのように震災の記憶を伝えていくべきか。
西川あやの「原発の問題もそうですけども、色々あったことを12年経った中で、これから“復興”とか“震災以降についてどうするのか”とかをリアルタイムで体感していない子供たちにどう伝えるかっていうところを話し合いたいんですけども、ブルボンヌさんはどう語り継がれたほうが自分事に持っていけるなと思いますか?」
ブルボンヌ「 (震災当時の)SNS上でも激しく色々な感情が渦巻いていた時に印象的だったのが、その時に楽しげなことを書くことすら、すごく責められる雰囲気があったりしたんだよね。あたしも(震災が起きてから)3ヶ月目ぐらいに、少しは元気になりたいって思って、『猫を撫でている』くらいの平和なことを書いただけでも『いまどんな時期だと思ってるんだ』みたいに引用リツイートとかされちゃったんだよね。なんか“悼むべきである”っていうところからの思いって、あたしは『違うんじゃないの?』と思って、“べきである”じゃなくて“自然に(傷ついた人の)痛みに気づけるような情報が流通してくれること”が大事なことじゃないかなと思っているので、なんとなくの流れで観た番組とかが、とても作り手の思いが感じられる、一生懸命気持ちに寄り添って取材されたんだなっていう良いコンテンツだと、結局グイグイ心引き込まれるし、そこで感じられる痛みって、これから起こるいろんな悲劇に対して『自分が人にどんなふうに思ってあげられるか』とか『自分自身はそこでどういられるか』とかっていう、色々なメッセージも含まれているんだってことが気づけるから、あたしは他人事にしてしまういやらしさを持っている人間だってわかるからこそ、そこを引っ張ってもらえたときに作り手のメッセージとかに感動するかな」
西川「以前、震災から5、6年経った時に、実際に女川のほうに取材に行って皆さんにお話を伺うと、その当時ってよく“震災を忘れない”みたいな言葉があったんですけども『忘れたい』と思っている人もいるんですよ。それも本当に個人の気持ちなんで、メディアが決められるものでは絶対にないし、キャッチコピー化しちゃうのもおかしいなっていうことはあるんですけども、12年経った中で、これからのメディア・報道・特集みたいなものって、どういうものが求められるんですかね?」
石戸諭「これはもうハッキリ言って、何が求められるかっていう答えがわかっていたら苦労しない話なんですよ。だって、そんなの僕もわからないです。だけど、試行錯誤が必要だろうなっていうことだけは確実なんですよ。いままでと同じパターンになってくるとパターン化していくし、どうしても。だから、これはどうしたらいいっていう答えは出ないけど、やっぱりいろんな伝え方が絶対にあるはずなんですよ。その“あるはず”っていうのを追い求めていくと、いずれ一人ひとりがやっていく方向っていうのはあるだろうなと思う。あとは、震災を経験した結構な数の人たちが記者になっているんですよ。それですごく思ったのは、当時経験して何かを思った子たちが伝える側にまわっていくっていうことが、なにか新しい風景が開けるんじゃないかっていうふうに思ったんですよね」
ブルボンヌ「語り部の子たちもいるよね」
石戸「そう、そういう子たちが語っていくときのパワーとかを見てみたいですよね、今後」
西川「それに対して、できることもあるでしょうしね」
石戸「既存の今までのパターンにとらわれないようなものっていうのは、もしかしたらその子たちが作っていくかもしれないから」
さらに、震災当時のSNSの影響力や、岩手県が行った東日本大震災からの復興に関する県民意識調査などについても話した。
「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜〜金曜の午後3時30分〜5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6kHz、radiko)で放送中。また、radikoのタイムフリー機能では1週間後まで聴取できます。
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