『桃太郎』が時代や規制を超えて語り継がれてきた理由とは!?
3月6日「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」(文化放送)、特集コーナーは「表現の規制、どこまでセーフでどこからアウト?」というテーマでお届けした。2月9日、『はじめの一歩』作者の森川ジョージさんが、東京都議会に「不健全図書」の名称変更を求める陳情を行なったことにちなんだものだ。なお、この日は山内マリコ、重藤暁が休みのため、大島育宙(XXCLUB)、の古舘理沙(寄席演芸興行師)が代理を務めた。
西川あやの「陳情書には『あしたのジョー』のちばてつやさん、『進撃の巨人』の諌山創さんなど多くの漫画家が名を連ねましたが、結果的に陳情は採択されませんでした。森川さんたちが陳情を出したんですけど、その方々が不健全図書にされているわけではないんですね」
大島育宙「自分たちの権利が侵害されたから怒っているのではなく、漫画家全体の利益や表現者全体のことを考えて、代表者が声を上げた、ということですね」
西川「『不健全』というネーミングに対してどうなんだろう、ということをおっしゃっていたという」
大島「表現の自由や規制に多くの問題がある中で、ごく一部の話が今回、粒だてられたという話ですね。『不健全』という言葉が曖昧で古い、その割に影響力を持ちすぎているということを森川さんたちはおっしゃりたかったんだと思うんです」
西川「基準がないですからね」
大島「具体的には『成人向け図書』『成人漫画』とかでいいじゃん、なんで『不健全』という、存在自体が悪であるかのような言い方をしているの? ということ。それと1回指定されてしまうと、Amazonとかで取り扱われなくなってしまう。この方々は大御所で大金持ちだと思いますけど、いまから頑張る漫画家の方が困る、という話でしょうね」
古舘理沙「あくまで創作物の中で起こっている出来事であるということと現実の境目がわからない、自主規制の線が引けない人たちのことを『未成年』としていると思うんです。判断がまだつかない人たちの目に触れないようゾーニングをする、というのは教育的な立場からも、あることだと思います」
西川「はい」
古舘「親として見せづらいな、というものはたくさんあるので。ゾーニングというのはされてほしいことではあります」
西川「いま東京都の話をしていますけど、都道府県ごとに決めるという話なんですね。じゃあそれはどのようなメンバー構成で行われるのか、男女比は、というところに視線が集まっている、という状況で。大島さんはかつて、山本直樹さんの『ビリーバーズ』という、映画化もされた漫画を紹介されていて。私にもすごくおもしろい作品だったんですけど、不健全図書、成人指定をされることが多い作家さんではありますね」
大島「山本直樹さんはそれもわかっていてやっているような方でもあるというか。そんなに不当だと感じているわけではない、と思うんです。それもゾーニングの問題で、読んで『こういうのは普通のことなんだ』『あるべきことなんだ』と勘違いされる場所に置かなければいい、というだけの話で」
西川「誰が決めるのか、という問題はありますね」
古舘「不健全な図書、というのが悪いこと、みたいになっているんですけど、私は古い、90年代とかを生きていた人間なので『名誉じゃん!』と。『不健全と言われたら、余計見たくなるじゃん!』という、そういうサブカルの露悪的な部分があった時代を知っている」
大島「ああ~!」
古舘「規制されないような表現が無難だからダメだと言われていた時代があった。そういうのはもう時代の変化によって『悪い』『ダメですよ』となったら淘汰されてしまいますけど、(あるいは)それが権力側の都とか国とか行政側の論理や、市場の需要によって失われていくパターンもあります」
西川「ありますね」
古舘「それこそ『桃太郎』もGHQによって規制されたことがあるぐらい。ただそれで消えてしまわないでいまだに語り継がれるということは、作品に強度があれば、規制や時代を超えて生き残ることができる、という気もしますね」
「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」は毎週月曜~金曜の午後3時30分~5時45分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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