障害のある弟に「頑張れと言えなかった」明石市長・泉房穂が政治姿勢の原点を語る
2011年から3期に渡って明石市の市長を務めている泉房穂さんが2月13日の大竹まことゴールデンラジオに出演。近著「社会の変え方、日本の政治を諦めていた全ての人へ」について伺った。
大竹「ご本には、泉さんが子どもの時のお話、両親が貧しい漁師だったらお話、弟さんのこと、色々書かれております。そして泉さんは、冷たい社会への復讐を誓ったそうです。なぜ冷たい社会が見えたんでしょうか?」
泉「うちの家は漁師で、一生懸命両親は働いてましたけど、おかずが少なかったし、色々思うところはありました。で、弟が障害を持って生まれて、今以上にもっと冷たい理不尽な社会でしたから、イイやつなのに歩けないというだけで周りから冷たい目で見られるような、そんな子ども時代に、こんな冷たい街じゃなくてふるさと明石を優しくしたいと誓って。市長になりたいと思ったのが小学生の頃なので随分時間かかりましたけど、なんとかたどりついて市長として12年間、明石を優しくするためにやっていた感じですかね。」
大竹「障害を持った弟さんが生まれた時、この国にはまだ優生保護法という法律がありました。お医者さんには何と言われたんですか?」
泉「その頃は優生保護法っていう法律も強かったですし、特に兵庫県は全ての都道府県中で一番ひどくて、障害がある子どもを地域に戻さないって運動をしてて。要は生まれた子どもをそのままにして見殺しにする運動だったんです。今から考えたらみたらむちゃくちゃですけど。1966年に兵庫県はそういう組織を作って、翌年に私の弟が障害持って生まれたので、そのまま病院で死ぬはずやったんです。ところがうちの両親が泣き崩れて、障害が残ってもいいからと言って家に連れて帰ってきたのが、私が4歳の時かな。本当に理不尽でした。「どうして障害があるのに見殺しにしなかったか」と言われた時代でしたから。そう言った中で子ども時代を過ごしたので、世の中に対して思うところは大きかったですね。」
大竹「お母様は、この障害を持ったお子さんと心中までしようと試みたらしいですが失敗に終わったとありました。泉さんは普通の学校と、その当時やっとできた障害のある子どもたちのいる場所の両方を行き来していたそうですね。」
泉「障害者の集い場というものを、うちの両親も運動して作っていただいたんです。自分の行く学校に行ったら全員飛んだり跳ねたりしゃべったりしてるわけですけど、弟の所に行ったらほぼ誰も喋れなく歩けない。私はその両方を行き来する中で、どうして別々なんだと、一緒でいいじゃないかと、どうして「それ」をのけものにするのかと、子ども心に思ったもんです。あとになって分かりますけど、日本以外の国は結構一緒にやってるんですよね。日本というのは非常に変わった国で、障害あるものを居ないもののように目をつぶってやってる社会なので、それを何とかしたいと。それが今に繋がるんですけど、子どもとか障害を持ってる方に極端に冷たい日本という社会を、もう少しマシにしたいというのが、自分自身の一種の役割かなと今も思っています。」
大竹「弟さんは1年生の時は運動会を黙って見ていたのですが、2年生になって運動会が開催されると何とおっしゃったんですか?」
泉「弟はなんとか歩けるようになり、まあ歩けるといってもよちよちですから運動会でとても一緒に走れる状況でなかったので、家族も無理だと言ったんですけど、弟は言うこと聞かずに「みんなと同じように運動会に参加したい」と言い張って、形だけ出たんです。弟はどうしても出たかったと思います。でも私は家族として周りに迷惑がかかるとか、みっともないからっていうことで、「やめといたら?」と言ってました。それでヨーイドンとなったら、当然走れなかったんですけど、みんながゴールした後に、ポツンと1人、まだよちよち歩きの状況でしたけど、本当に嬉しそうな顔をして走っているというか歩いてる姿を見て、どうして自分は弟を応援して頑張れと言えなかったのか、どうしてみっともないからやめとけと言ったのかと思って、本当にあの時のことをよく覚えています。」
大竹「みんながゴールしている時に、弟さんはまだスタートから10mぐらいのところを走っていたそうですね。」
泉「結局、本人の幸せって本人が決めると思うんですよ。障害があるから無理とか、障害があるから見てるだけで十分だってのは周りの判断であって、当の本人は一番遅かろうが、みんなに笑われようが、運動会で走りたいという方が多分強かったと思うので、あの時の笑顔を見た時に、分かっているつもりだったのに分かってなかったなと。兄弟であるのに自分は弟のことを分かっていなかったということを痛感して。そこは私の政治姿勢に繋がっていて、本人の幸せを決めるのは本人で、誰かが他人さんの幸せを決めることはできないんであって、子どもの幸せは子どもが決めるし、障害があるものの幸せは障害があるものが決めるんであって、それの環境整備というか、選択肢を増やすのが周りの役割だという感じのスタンスですね。」
「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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