かけこみ成立で国会閉幕~12月13日ニュースパレード  山本香記者取材後記

かけこみ成立で国会閉幕~12月13日ニュースパレード 山本香記者取材後記

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 文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)

 その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。

 文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。

 



 

 

目次

  1. 異例の駆け込み成立
  2. 言葉遊び
  3. 厚い壁
  4. 被害者の涙

異例の駆け込み成立

 

 旧統一教会の悪質な寄付を規制し、被害救済を図る新法が、一部の野党を除く賛成多数で可決・成立した。

 会期末の12月10日の午後6時20分頃。閉会間際に駆け込み成立となった。土曜日に国会が開かれるのは、前日から深夜の審議にもつれ込み、日付をまたいだケースを除くと29年ぶりで極めて異例だ。

この法案をめぐっては、政府が提出する法案を事前に与野党で協議し、野党の意見を一部反映させるという異例の経過をたどった。異例が相次ぐ対応となったのは会期日程が背景にある。野党側は法案審議に関し、衆議院だけで30時間以上の審議が必要だと主張し与党を揺さぶった。

会期を延長せずに国会を閉じたい与党側にスピード審議をしたいならこちらの要求を飲めと、日程を盾にとって駆け引きに出たためだ。そして、これ以上、与党の譲歩を引き出せないというぎりぎりのタイミングで修正合意に応じ、会期内成立にこぎつけたというわけだ。

 

 

言葉遊び

 

 与野党の修正協議は、国会最終盤までもつれ込んだ。

 野党側が強く主張し続けたマインドコントロール下での寄付の取り消しについて、与党側が難色を示したためだ。国会会期末が迫る中、最後は、法人の寄付を募る際の配慮義務規定にある『自由な意思を抑圧しないよう配慮する』に『十分に』という文言を付け加えることで与野党が折り合いをつけた。『配慮する』を『十分に配慮する』に変更したことで、どれほどの強い効果が生まれるのかはなはだ疑問という声が野党内からも上がったが、このままでは法案の成立が危ぶまれてしまうため、妥協するしか道はなかったのかもしれない。

こうした手法について同じ野党の国民民主党の玉木代表はツイッターで「言葉遊び」と皮肉った。

旧統一教会による不当な寄付・献金行為この法案の正式名称は「法人等による寄付の不当な勧誘の防止等に関する法律案」

 

 

厚い壁

 

 与野党による新法の事前協議に加わった立憲民主党の長妻政調会長は「『十分に』という文言が入ったから合意したのではない」と強調。その上で協議では「大きな壁が立ちはだかったと感じた」と振り返った。

法案協議に立ちはだかった「大きな壁」とは何を指すのか・・野党議員は、法人が寄付の勧誘をする際の配慮義務を野党が求める「禁止」にできなかった背景について創価学会を母体に持つ公明党への配慮だと指摘する。一方、自民党関係者からは「壁は公明党だけではない。旧統一教会以外にも宗教団体から支援も得ているため、様々な配慮が働いたのではないか」という見方を示した。

 野党から見ると、巨大与党も厚い壁そのものだ。立憲民主党の泉代表は9日の記者会見で「議席数の差が歴然としている。多数派が押し切ろうとすればすぐにできる」と苦しい胸の内を明らかにした。

「十分に」という文言を追加して修正合意した背景には、与党に強硬されると採決で反対する道しかない。しかし修正合意することで賛成に回れば今後、法律の見直し協議でも積極的に加わることができる道を残しておきたいという思惑もあった。

長妻政調会長は「賛成し、より良い法律にしていく努力にコミットしたほうが、被害者救済にはプラスだ」と先を見据えた考えを強調していた。

 

 

被害者の涙

 

 旧統一教会元2世信者の小川さゆりさん(仮名)は、新法が衆議院を可決した8日の記者会見で「まだまだ課題が残っている。被害者がいることを忘れないでほしい」と涙ながらに訴えた。また9日の参議院消費者問題特別委員会に参考人として出席し「被害者救済法案はあくまでも献金の問題を解決しようとするものであり、問題はそれだけではございません。今回の法案の最大の積み残し課題は、子供の被害が現実的には全く救済できないということです」と訴えた。
 
 この新法は、被害救済と被害を未然に防止するというものだが、子供や配偶者が受けた被害は養育費などに限定され金額も少ないという課題がある。また債権者代理権についても、未成年の子供の場合について被害者弁護団の阿部弁護士は「両親とも信者なら子供が債権者代理権を使おうとしても容認しない。使うのはかなり難しい」と指摘した。

法律は成立したが被害者弁護団は「ほとんど役に立たない」「ないよりマシ程度」と厳しい評価だ。

 

 新法について岸田総理は10日夜の記者会見で「新たなスタート地点に立ったばかりだ。被害者がこの制度を利用しやすい環境を早急に整備することに全力を傾けていく」と強調したが、実効性はどこまで担保されるのだろうか。不透明さと多くの課題を抱えたまま施行される。

 

 

 

 

 

「ニュースパレード」は「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」内、平日午後5時~5時15分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

また「ニュースパレード」はPodcastでも配信しています。

ニュースパレードPodcast

 

そしてGoogleスマートスピーカー (#GoogleHome#GoogleNest )や、 androidスマホから聴けるようになりました。

「ニュースパレード聴かせて」と話し掛けてみてください。

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