ついに開幕!カタール・ドーハってこんなところ~サッカージャーナリスト了戒美子現地レポ
FIFAワールドカップカタール大会開幕しました。日本代表初戦のドイツ戦は日本時間11月23日午後10時キックオフ!
文化放送では大会期間中、現地カタールで取材するドイツ在住のサッカージャーナリスト了戒美子さんから随時レポートして頂きます。
今回は開幕直後のカタール・ドーハの様子「ドーハってどうよ」です
Photo:Yoshiko Ryokai
カタールW杯が開幕しました。開幕戦で開催国カタールがエクアドルに0-2で敗れました。開催国の初戦の戦績は16勝6分1敗。つまり、開催国として初の開幕戦黒星という不名誉な記録を作ってしまいました。2019年に隣国UAEのアブダビで行われたアジアカップ決勝では、日本はカタールに1-3で敗れて準優勝でした。月日が流れているとはいえ、そのカタールがエクアドルにも歯が立たないとなると……と考えさせられる一戦でもありました。
さて、サッカーではよく聞く国カタールとはどのような国なところなのでしょうか。地理的にはサウジアラビアの東側、アラビア湾側にちょこんと突き出たところがカタールで、ドーハはその首都です。外務省のデータによれば秋田県よりも少し狭い面積で、人口は約280万人だそう。在ドーハ日本大使館によればカタール人はそのうちの約10パーセントのみ。実際に街を歩くとインド、パキスタン系労働者が多く、フィリピン人、ネパール人などもよく見かけます。インド系が多いためか美味しく安いカレー屋さんが多いというのはドーハを訪れることの多い、私を含む同業者の感想です。
気候的には、現在は11月下旬ですが日を追うごとに昼間の暑さが和らいでいるように感じます。夕方以降は外でも長袖でいいくらい。昼間の気温も30度を切っている日もあります。湿度に関しては、日本から来た人たちは「乾燥している」と言い、ドイツからきた私は「ベタベタする」と感じます。晴れている日の夕焼けはとても美しいです。
もしドーハを訪れることになったら、おそらくはスーク・ワーキフという旧市街エリアか、コーニッシュと呼ばれる湾岸エリアを観光することになるでしょう。この辺りは今、W杯関連イベントでいっぱいです。ビル群のライトアップがあり、たくさんの出店やパブリックビューイング会場があり、打ち上げ花火を見るのにももってこいのエリアです。今大会は全スタジアムが近いので(これまでであればスタジアムからスタジアムへは飛行機移動しなくてはいけない距離のため、一会場の近くにいるのは数カ国のサポーターだけ)さまざまな国のサポーターが入り混じって、なかなか良い雰囲気です。
ちなみに私が初めてドーハを訪れたのは2005年、カタール国際トーナメントというユース年代の大会でした。スーク・ワーキフ近くには小さな商店や、小汚いけど美味い飯屋、安ホテルがところせましと立ち並んでいました。丸の内かのようにビルが立ち並び綺麗になってしまった今のドーハを見ると、時の流れとオイルマネーのパワーと同時に懐かしさも寂しさも感じるものです。
今回カタールを訪れる多くのサッカーファンにとっての問題はアルコール類の入手です。サッカーとビールは切り離すことはできない一つの文化ですが大会2日前になってFIFAはスタジアム周辺での酒類の販売を禁止することにしました。直前まで情報は二転三転し、販売されるとの情報があった時期もあったのですが結局FIFAはカタールの事情を汲み取ることにしたようです。もちろん外資系ホテルのバーに行くなどすればアルコールを楽しむことはできます。ですが、報道されているようにビール一杯1900円程度と高額。それにホテルで一杯やれたとしても、スタジアム観戦しながらビール片手に盛り上がる楽しさとは一味違うものです。
また、ファンたちを苛立たせるのがこの措置が一般客のみを対象にしているということ。スタジアムのVIPエリアではシャンパンやワインが振舞われるのです。これもあって、エクアドルのサポーターたちは試合中に「私たちはビールが欲しい」と歌い出したのだとか。FIFAのインファンティーノ会長は「1日3時間くらい酒を飲まないでもいられる」と言ったようですが、ただの3時間ではなくW杯中ですからこれは無神経な発言でした。
日本サッカー界との関わりで一番有名なのは1993年のドーハの悲劇です。アメリカW杯最終予選、日本対イラクがここドーハで行われたのでした。勝てば日本にとって初めてのW杯出場がかなうこの試合で、ロスタイムの失点によりその夢はあっけなく散りました。これがドーハの悲劇です。森保一現日本代表監督はこの試合でフル出場していました。そのため、カタール・ドーハで行われるW杯は彼にとってのリベンジでもあるのです。
日本にとっては予選や育成年代での大会など、とにかくカタールはよく訪れる、慣れ親しんだ国です。そういった意味でドイツ、コスタリカ、スペインに比べれば圧倒的なアドバンテージがあると言えるでしょう。強豪相手にこの強みを生かせるのか。初戦ドイツ戦はもう間もなくです。
Text&Photo
了戒美子 Yoshiko Ryokai
映像制作会社勤務からサッカー取材を開始。五輪は2008年北京五輪、W杯は2010南ア大会から現地で取材。2011年からドイツに拠点を移し、ブンデスリーグ、ヨーロッパで活躍する日本人選手を精力的に取材し、雑誌、新聞、WEB、ラジオなど媒体を問わず活躍中。
「ニュースパレード」では大会期間中、了戒美子さんから現地レポートを交えながら大会結果をお伝えしていきます。「西川あやの おいでよ!クリエイティ部」内、平日午後5時~5時15分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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