映画「ライフ」東京国際映画祭 カザフスタンの鬼才が描いた怪作
鈴木BINのニュースな映画
文化放送報道部デスク兼記者兼プロデューサーで映画ペンクラブ会員の鈴木BIN(敏夫)が、気になる映画をご紹介しています
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東京国際映画祭コンペティション部門出品 カザフスタンの鬼才が描いた「ライフ」が凄い
中央アジアの国、カザフスタンの映画だ。東京国際映画祭のホームページで予告編を観て、暗く重い映画を想像した方は、実際に鑑賞し、その予想を大きく裏切られるだろう。小生は映画好きであるにも関わらず、毎度、数分間はうつらうつらしてしまうのが常なのだが、3時間近い大作であるにも関わらず、最初から最後まで気を抜くことができなかった。過激なジェットコースタームービーであると同時に、牧歌的なロードムービーでもある不思議な映画。ハラハラドキドキ、時にショッキングな場面が続くのだ。
サスペンスであり、一種のホラーでもあり、人間ドラマでもある。そして社会派ドラマとしても秀逸で、ついでながら後半はなかなかのエロ展開もある。映画を観ながらいつくかの単語が浮かんでは消えた。「韓国の鬼才キム・ギドク」「香港の異才ウォン・カーウァイ」「台湾の俊英エドワード・ヤン」「日本の天才北野武」 暴力性と深淵性の同居した独特な世界で、場面、場面の映像も役者の動きも恐ろしいまでに計算されつくしている。監督はエミール・バイガジンというまだ30代の若手。2013年の長編デビュー作の「ハーモニー・レッスン」でいきなりベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞したという。おそろしやカザフスタンの鬼才。
エミール・バイガジン監督
セリフの中に散りばめられた神の啓示のような言葉の数々にも感じるところがあり、一所懸命メモなどしてみたが、シネスイッチ銀座で上映中の暗闇の中で書いたので、後から見てもさっぱり読めなかった、残念。強権的なナザルバエフが牛耳ってきた国というイメージが強いカザフスタン(羽生のライバル、デニス・テンが殺された国というちょっと怖いイメージも正直言ってある)だが、共産主義時代の時間が止まったような古い町並みと近代化されたビル街が織りなす風景も、東京に例えれば佃島のようなコントラストで面白い(地下鉄の様子はいかにも旧社会主義国的な威容を誇る)。埃っぽく感じる街中をドローンが飛び回るサイバーチックなシーンも不気味だ。なかなか訪れるチャンスの無いカザフスタン。そのの街並みをスクリーンの中で眺めてみるのも興味深い、実に優れた映画。早めの日本公開、ぜひとも宜しくお願いします。
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Profile
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1964年、奈良県生まれ。関西学院大学卒業後、1988年、文化放送にアナウンサーとして入社。その後、報道記者、報道デスクとして現在に至る。趣味は映画鑑賞(映画ペンクラブ会員)。2013年「4つの空白~拉致事件から35年」で民間放送連盟賞優秀賞、2016年「探しています」で民間放送連盟賞最優秀賞、2020年「戦争はあった」で放送文化基金賞および民間放送連盟賞優秀賞。出演番組(過去を含む)「梶原しげるの本気でDONDON」「聖飢魔Ⅱの電波帝国」「激闘!SWSプロレス」「高木美保クロストゥユー」「玉川美沙ハピリー」「NEWS MASTERS TOKYO」「伊東四朗・吉田照美 親父熱愛」「田村淳のニュースクラブ」ほか