「一番効くのはトラウマ経験を何度も語る持続曝露です」精神科医が訴えるいじめ被害者優先のケアとは?

「一番効くのはトラウマ経験を何度も語る持続曝露です」精神科医が訴えるいじめ被害者優先のケアとは?

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10月24日の大竹まことゴールデンラジオは精神科医の斎藤環さんをお招きし、社会学者の内田良さんとの共著「いじめ加害者にどう対応するか――処罰と被害者優先のケア」について伺った。

斎藤環「いじめられると非常に深いトラウマを受けて、学校の卒業後も何年間も続くことが現実があるのですが、残念ながら日本では、立派な疾患であるにも関わらずほとんど知られていません。なぜかというと、いじめ被害者の方は、家に引きこもってしまい、病院などに行かないので医師が診るチャンスがないんですね。私は引きこもり専門なので、結構な割合でそういう方がいるのに全く知られてない状況に危機感を感じて提唱したのです。」

大竹「7歳から11ぐらいにいじめ被害に会うと、何十年か経ってから体に影響が出てくるそうですね。」

斎藤「精神科医の滝沢龍先生がイギリスでやった調査で、小学校時代にいじめにあった8000人ぐらいを40年間追跡すると、中高年になってからうつ病とか自殺とか、いろんなリスクが高いことが分かったんですね。私から見れば常識に属することですが、ほとんどの方は「子どものいじめぐらい学校を卒業したら忘れるでしょう」と認識していたでしょうところに、このデータが出たので、あっと驚かれました。日本の新聞の投書などを見ても「小学校時代のいじめが忘れられなくて同窓会に出られない」という話が載っていたり、結構あるんですよね。それが軽く見られてきたところに問題があると思います。」

大竹「本人には具体的にどんな事が起こるんですか?」

斎藤「いじめられた場面が目に浮かんできてパニックになるとか、あるいは同世代の学生を避けるとかですね。一番深刻だったケースでは「声が聞こえてくる」というんです。いじめ加害者が「万引きしてこい」と被害者に盗みをさせることがあります。そういう命令に従わせられて、30代になっても声が聞こえて万引きを繰り返してしまうという人がいました。原因はトラウマなんですが幻聴と思われて、ずっと統合失調症の治療を受けていたんですが全然良くならなくて、私のところに来られました。統合失調症の幻聴は匿名なんですよ。誰が言ったか男か女かもよく分からない。いじめが原因の場合は相手の名前まで分かります。だから幻聴と言ってもぜんぜん違うんです。統合失調症の幻聴は薬で回復しますけど、いじめが原因の場合は薬が効かないんですね。」

大竹「薬が効かないというと、どうするんですか?」

斎藤「一番効くのは「持続曝露」と言って、そのトラウマ経験を何度も語り直してもらうんです。これをやると段々とトラウマの威力が弱まってくるんですよ。」

大竹「本人にとっては結構辛いでしょうね。」

斎藤「おっしゃる通り、すごく辛い治療で、やっている最中に具合が悪くなったりするんですけれど、でも非常に有効でちゃんとやりきった人はかなり改善しますね。」

大竹「40年たってから症状が出たりするということは、社会に出てからいろんな場面で小学校時代のそのトラウマが蘇ってしまうこともあるんですか?」

斎藤「そうですね。その時の記憶が何度も場面を選ばずに出てきたりとか、あるいは似たようなキャラクターの人がいたら、訳もなくは怖がって近寄れないとか、そういうこともあります。昔味わったような経験を繰り返したくないので、いじめっ子と同じキャラの人とは付き合いたくないというか、避けるような傾向になったりとかですね。」

大竹「自殺の確率もかなり高くなるんですか?」

斎藤「高いですね。なかなか症状が改善しないので、10年とか20年してから残念ながら死を選ぶ方もいるんですが、当然のことながらいじめ自殺とは報道されませんから、原因不明になりますね。いじめをなくす事ができれば理想なんですけど、これは私は無理だと思っています。なぜかというと…」

いじめが無くならない原因とはなにか?この続きはradikoのタイムフリー機能でご確認下さい。

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