試練の臨時国会 八方ふさがり 逃げ場はなし?~10月3日ニュースパレード 山本香記者取材後記
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文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
10月3日、臨時国会が召集された。会期は12月10日までの69日間で、政府は18法案と1条約の提出を予定していて、政府は2022年度第二次補正予算案や衆議院小選挙区の10増10減を実現する公職選挙法などの早期成立を目指す考えだが、開幕から国会は波乱含み、すでに荒れ模様となっている。
試練
岸田政権を待ち受けている試練は3つ。政権支持率急落の要因となった安倍元総理の国葬と、旧統一教会をめぐる問題だ。
国葬について岸田総理は所信表明演説で「国民の皆様からの厳しい声にも、真摯に、謙虚に、丁寧に向き合っていくことをお誓いいたします」と強調した。
所信表明では当初、旧統一教会という名前を出さず「現在社会的に問題が指摘されている団体との関係については」としていた部分を、当日の朝になって「旧統一教会との関係については」と変更した。国会演説で団体名を入れ込むのは極めて異例。世論や野党側の反応を考慮した判断であり、この1点だけでも岸田政権が相当の危機感を持っているということがうかがえる。
3つ目が最大の試練となる物価高騰対策。10月から再び値上げの嵐に見舞われる国民にとって最も関心が高く、政権としては喫緊の課題だ。岸田総理は所信表明演説の約4割を割いて経済対策を語り「何としてもこの物価高から、国民生活と事業活動を守り抜く」と決意を示した。が、しかし、具体策に踏み込んでおらず、野党側から「中身がない」「緊迫感がない」などの批判が相次いだ。
国葬、旧統一教会、そして物価高の3点セットで徹底抗戦を仕掛ける野党に対し、自民党議員の1人は「ひたすら耐えるしかない国会となるだろう」とため息をついた。
誤算
旧統一教会と自民党議員との関係について、自民党は9月30日、再調査の結果を公表した。茂木幹事長が記者会見を行って公表した前回とは異なり、今回は記者クラブのホワイトボードに書面を張り出しただけだった。結果は、12人から追加報告があったとしながら指名の公表は4人にとどまった。
自民党総裁の岸田総理は、安倍元総理の調査を行う考えがないことを繰り返し述べている。理由について萩生田政調会長は10月2日のNHK日曜討論で安倍元総理は亡くなっていて反論の機会がなく、正しく調査することに限界があると述べた。安倍元総理について野党側は、選挙の際の票の振り分けの関与や、見返りの有無について疑念を強めている。安倍元総理と同じ清和政策研究会の派閥の長を務めていた衆議院の細田議長についても同様の疑惑がある。しかし自民党は会派離脱を理由に調査対象から外した。自民党のホームぺージには、顔写真付きで党所属国会議員として掲載しているにもかかわらずである。
その細田議長も、臨時国会の日程闘争を野党に仕掛けられ、旧統一教会との関係について自ら公表する事態に追い込まれてしまった。
細田議長と同様、参議院の尾辻議長も調査対象から外していたのだが、尾辻議長が野党の求めに対して進んで公表することを決めたため、細田議長も公表せざるを得なかったというわけだ。だが、細田議長が公表したのはA4のペーパー1枚。すでにメディアで公表された事案のみ。野党側は、選挙の支援を受けたかどうかなど自民党が全議員に指示した8項目の点検にも満たないとして再調査と公表を求めたのが9月30日。臨時国会の召集まで3日。応じなければ、総理の所信表明に対する各党代表質問に野党が応じず、臨時国会は幕開けから空転しかねない状況に陥る恐れがあるため、自民党も細田議長の再調査を認めざるを得なかった。
瀬戸際がけっぷち
旧統一教会について立憲民主党は、国会に特別委員会を設置するよう与党側に求めている。国葬についても、政府による検証と合わせて国会でも行うよう要求しているが、どちらも自民党は後ろ向きだ。国葬が終われば、事態は落ち着くだろうとみていた政府自民党の読みの甘さがさらに事態を悪化させたのは言うまでもない。臨時国会での対応次第ではさらに追い込まれる可能性がある。政府自民党が、臨時国会で懸念している1つが旧統一教会との関係が次々と明らかになる山際経済再生担当大臣だ。国会召集日の10月3日の閣議後記者会見では、統一教会の問題に関する記者の質問が8割を占めた。国会審議でも野党の集中砲火を浴びるのは間違いない。経済対策や新型コロナウイルスを担当する山際大臣が、自分の問題で手一杯の状況にあり「物価高対策まで手が回るのか」という野党の指摘もあり、まさに瀬戸際大臣の様相だ。
何時、首に鈴をつけられるのか?タイミングを間違えば任命責任者として岸田総理の責任論にも発展する。
こちらも崖っぷちのようだ。
聞く力
岸田総理の持ち味は「聞く力」だったはずだが、トップダウンで決めた国葬も、旧統一教会の調査に後ろ向きの姿勢も「聞く力」とは程遠い。所信表明で岸田総理は「厳しい意見を聞く姿勢にこそ政治家岸田文雄の原点がある」と強調した。
10月4日で就任1年となる岸田総理。この1年間に発揮した聞く力は、何にどう、生かしてきたのだろうか。
秋の臨時国会は、岸田政権の評価も問われることになりそうだ。
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