「近所に騒音を振りまく親子でした」鬼滅やSEEDの大ヒット曲を手掛けた梶浦由記が語る音楽の原点は父の伴奏だった

野村邦丸アナ「音楽を作る方の多くはだいたい音楽大学に通われていますが、梶浦さんは津田塾大学のご出身なんですね。これはどうして？」

梶浦由記「大学を選んだときは将来音楽の道で食べていこうなんて夢にも思っていなかったんです。英語をちゃんと勉強しようと思って津田塾に入ったんですけれど 並行してやっていたバンド活動の方に就職してから声をかけられました。それで仕事をやめて、はじめはバンドとしてデビューしたんですが、それほどヒットするわけでもなかったところに「映像作品のBGMを作ってみないか？」とお声をかけて頂きました。当時の私は映像作品を殆ど見てなかったので、「そういえば映像に音楽って付いてた気がする…」みたいにぼんやりしたところから始めたんですが、やってみたらすごく面白くて、「映像作品のBGM」という道に進んでみたいと思うようになったんです。」

邦丸「梶浦さんが育ってきた環境は、音楽と関係があったんですか？」

梶浦「そうですね。特に父親は山に登って歌を歌うような「山と合唱」の世代で、人前で歌うことに抵抗がなかったんですね。父はドイツ歌曲やオペラが好きで、それも自分で歌いたいほうだったんです。娘の私が言うのもなんですけど結構いい声をしてたんですが、当時はカラオケにクラシックは入ってなかったので、歌うには伴奏者が必要でした。そこで私が幼稚園に入ると「俺のためにピアノを習え」と言われて、先生のところに連れて行かれ、物心つく頃には父親が歌うオペラとかドイツ歌曲の伴奏をさせられて…というか私もすごく好きだったので、嬉々として近所に騒音を振りまく親子が誕生したわけです。」

邦丸「そして大学卒業後は普通の会社に入られた。でも音楽の道に進みたい気持ちは少しあったんじゃないですか？」

梶浦「いや仕事はすごく面白かったんです。当時はSHINE’Sさんとか仕事しながら音楽活動もしているバンドがいらして、それに憧れて「仕事しながら音楽活動ができないかな？」なんて甘えたことと薄ぼんやり考えてたんですけど、世の中そんなに甘くはなく、どちらかを選ばざるを得なくなって、仕事も続けたかったんですけど音楽の道に進んだ、という感じでしたね。当時はバンドでデビューしたかったので仕事をやめて、いつの間にか流れでBGMの方に行ってました。」

邦丸「このときは、まだアニメの音楽はやってないんですよね。」

梶浦「はじめは実写映画の話を頂いていて、その後で初めてアニメのお話を頂きました。ただ私は、高校を卒業するまでテレビがない家で育ったので、アニメって言うと幼稚園の時にムーミンを見ていたぐらいの記憶しかなかったんですね。だから正直「はてな」ってなりながら作ってみたんですが、アニメの音楽って実写より派手に作った方が映えるんです。ヒロインが声を張り上げて泣いたり、悪役が高笑いしたりするような世界って、ハリウッド映画とアニメにしかないじゃないですか。実写映画だと日常に近いから「バーン！」ってシンバル鳴らしてホルン吹くわけにはいきません。アニメの音楽はハリウッド映画とか、あと私が幼い頃に大好きだったオペラの世界に近くて、そういう音楽が作れるって事に気がついてすごく好きになりました。」

邦丸「アニメで最初のお仕事はなんですか？」

梶浦「その頃は深夜にアニメの放送はなかったんですが、EAT-MANという深夜アニメをやるから音楽を作ってみないかと声をかけていただきました。そしたら監督に気に入っていただき、色んなアニメのお声をかけていただいて作っていくうちに夢中になっちゃったって感じです。」

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