国葬、迷走、ざわつく永田町~ 8月3日ニュースパレード 山本香記者取材後記
文化放送をキーステーションに全国33局で放送中「ニュースパレード」(毎週月曜日~金曜日午後5時00分~5時15分)
その日に起こった最新の話題を中心に、幅広い分野にわたってニュースを紹介しています。昭和34年の放送開始以来、全国のラジオ局の強力なバックアップで、特派記者のレポート、取材現場からの中継など、今日最も重要なニュースを的確に把握し最新情報を伝え続けています。
文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
8月3日参議院選挙後、初となる臨時国会が召集された。会期は3日間。自民党が想定していた5日の追悼演説は延期され、弔詞贈呈のみ行われることになった。
秋の臨時国会は10月になる見通しだが、その頃は波風も納まり、追悼演説を行うにふさわしい静謐な環境をとりもどしているのだろうか。
期待される名演説
「沼は演説百姓よ
よごれた服にボロカバン
きょうは本所の公会堂
あすは京都の辻の寺」
1960年10月18日、当時の総理大臣である池田勇人氏が、凶刃に倒れた浅沼稲次郎社会党委員長をたたえる詩を引用しながら行った浅沼氏に対する追悼演説は、今なお語り継がれる名演説である。
浅沼氏と同様、演説中に凶弾に倒れた安倍元総理の追悼演説は特に国内外からの注目も高いとみられることから、池田演説同様、歴史に残る形にしたいという強い思いがある。しかし、誰がその大役を担うかをめぐり自民党内は迷走状態に陥り、追悼演説の日程も秋の臨時国会に先送りせざるを得ない状況に追い込まれた。
現職の国会議員が亡くなった場合、誰が追悼演説を行うのかについては、亡くなった議員と同じ政党に属する議員だけでなく、他党の議員が務める場合もあるが、遺族の意思を尊重して決定されるという。
しかし総理経験者が亡くなった場合は、対立する他の会派の党首や幹部が行ってきたという経緯がある。1980年7月25日、大平正芳元総理の時は、当時日本社会党委員長だった飛鳥田一郎氏。1988年12月20日、三木武夫元総理は当時日本社会党委員長だった土井たかこ氏。2000年5月30日、小渕恵三元総理の時は、社民党の村山富一元総理がつとめてきた。
このことから立憲民主党の西村幹事長は7月26日の記者会見で『追悼演説は他党の議員が行うのが通例だ」と述べ、立憲民主党の議員が行うべきだとの考えを示した。ただ、自民党や安倍元総理の遺族からの要請は来ていないという。
自薦か他薦か・・・
追悼演説は当初、甘利前幹事長が行うことで調整が進められていた。
甘利前幹事長をめぐっては、閣僚在任中の金銭授受問題や、お友達起用という批判が与野党から噴出。さらには安倍派の指導体制をめぐり、甘利前幹事長が7月20日、自身のメールマガジンで「当面というより当分集団指導制を取らざるを得ない。誰一人、現状では全体を仕切るだけの力もカリスマ性もない」と発信したことから安倍派内は猛反発。「昭恵夫人は意思を示していないらしい」「自分で売り込んだのでは」と、遺族の意思という党側の説明を疑問視する声まで飛び出した。
自薦について甘利前幹事長は出演したテレビ番組で否定。自民党幹部も「遺族は昭恵夫人とは限らない」と収拾に動くも後の祭り。
自民党の高木国会対策委員長は先送りになった理由として「今は静謐な状況ではない。少し騒々しいので次回の国会の方がふさわしいだろう」と述べていたが、騒々しくなった要因は政府・自民党にある。
安倍元総理の国葬について国会に何も説明もないまま閣議決定で決めたこと。旧統一教会と自民党との癒着疑惑に対する自民党幹部の「何が問題かわからない」「自民党とは関係がない」という発言も波風を更に立てる要因にもなっている。
閉会中審査
臨時国会を3日間で閉じる代わりに、十分な閉会中審査を行うことで与野党が一致した。
閉会中審査では、爆発的感染状態となった新型コロナウイルス対応、物価高、東京五輪の元理事による汚職問題、自民党と旧統一教会との癒着疑惑。それに国葬問題だ。
国葬問題については、新型コロナウイルスの緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置を決める際に開かれる国会報告と同様の形で開かれるようだが、政府で調整が続けられている国葬の姿がある程度決まってからになる可能性があり、開催時期は9月にずれ込む可能性もある。
こうした諸課題の中でも自民党にとって最大の懸案事項は旧統一教会の問題だ。野党側にも会合に出席するなど付き合いのあった議員が報告されているが、自民党の場合は次元が異なる。選挙で自民党の茂木幹事長は8月2日の記者会見で改めて「自民党とは関係がない」と言い切った。党のイベントに招待していなくとも、安倍元総理が旧統一教会の票を割り振りしていたと自民党内から複数の証言が出ているのに関係ないで済まされるのだろうか。しかも団体の名称変更に手心が加えられていたのであれば行政を歪めたことになる。数回、閉会中審査を開いただけで騒動は収まるはずはない。
果たして秋の臨時国会までに静謐な環境を取り戻せるのか?ざわつき波立つ国会は、当分混とんとした状態が続きそうだ。
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