時は大廃業時代。後継者のいない2代目花屋さんの悩みを解決!『長尾一洋 ラジオde経営塾』8月1日(月)放送
約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が,今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答!
今回は都内で2軒の花屋さんを営む方からのご相談。後継者のいない中、お店の将来を憂うご相談者さんに長尾社長はどう答えたのでしょうか。その一部をご紹介します!
※『長尾一洋 ラジオde経営塾』は毎週月曜の夜19:30〜文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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■2代目花屋さん、後継者なし。10年先を見据えると…
ラジオネーム『ゆうすけ2号』さんのご相談は…。
都内で2店舗花屋をやっています。親から継いで私で2代目です。
いつもお店では文化放送をかけっぱなしです。
松尾アナ:ありがとうございます!
長尾社長:素晴らしい花屋さんですね!
店での販売だけでなく、オフィスへの観葉植物の貸し出しとメンテナンス、アレンジメントフラワーやお祝いの花のECサイト販売など、販路やサービスを広げています。
今日は相続というか、事業承継の相談です。子供たちは別の道へ進み、後継ぎがいない状況です。かといって、これまで後継者としての育成をやって来ておらず、スタッフには経営がわかる者がいません。
うちのような数名のスタッフでお店を回しているようなところは、年齢的、体力的に力尽きたら廃業という道なのでしょうか。10年先を見据えたとき、どうお店を持っていけばいいのかを思うと心憂うばかりです。何かヒントやアドバイスをお願いいたします。(一部略)
■廃業は一番もったいない!
長尾社長:ご相談の中に「力尽きて廃業」というお話がありましたが、それが一番もったいない!M&Aというとちょっと大げさですが、事業を売却するというようなことを考えられたらいいんじゃないでしょうかね。
大廃業時代とも称される昨今。日本では年間4万~5万社の中小企業が休業や廃業、解散する実態があります。
10年先を考えると廃業かも…とご心配のご相談者さんに、長尾社長が提案するのは事業売却の可能性を検討することです。
長尾社長:個人で物を処分する時を考えるといいですね。家電でも処分する時は引き取り料、処分費用を取られちゃいますよね。でも売ればいくばくかのお金になります。
同じように会社でも設備や店舗があって、廃業というのはそれを捨てちゃうということ。引き取り料、原状回復だなんだと、費用ばっかり取られて行くことになります。だけどそれを売れば、高くなかったとしてもプラスになる。そのようにお考えになられるのがいいと思います。
松尾アナ:それによってある程度の資金、老後を暮らす余裕が?
長尾社長:悠々自適に行けるかは、現状の借入の大きさとかいろいろな要素によりますけども。マイナスを食らうよりはプラスがあった方がいいでしょうからね。
■子供に継承すればうまくいくわけではない時代
今回のご相談者さんのお子様方は別の道へ進まれたとのことですが、長尾社長によれば現代は「子供が後継ぎだから大丈夫」という時代でもないと言います。
長尾社長:子供がいないケースももちろんありますが、いるけど継がないというケースが増えて来ています。
昭和の時代は、基本的に成長軌道に乗っていた。人口が増えマーケットが広がる時代。従来の商売を守って行けば、それなりにやっていける環境だった。ぶっちゃけ息子さん娘さんがポヤッとやっていても、現場社員さんに支えられ、神輿に乗ってなんとかやっているうちに経営を覚えて行く…というようなことが通用したんです。
しかし昭和から平成を経て、今は令和。非常に経営が難しくなっています。マーケットが縮小し、今までと同じことでは生き残れない。後継者だからうまくいくわけでなく、それなりの工夫をする人でなくてはならない。第二創業、第三創業みたいな感じで。
それに子供がほかの道に進んでそれなりに頑張っているのに、無理して継げよという時代でもないんでね。
■実はややこしい!スタッフや知り合いへの継承
長尾社長:よく「じゃあ社員が継いだらいいじゃないか」とか言われるんですけども、相続というか税金や借入の保証の問題などがあります。やはり一般の社員さん、従業員さんではそこが難しいんです。
ご相談者さんは、スタッフには経営者教育を施していないということでしたが、スタート時は経営の素人なのは実子であっても同じ。
ただし子供の場合は、相続によって株などの資産をおのずと受け継ぐことになります。しかし社員が会社を継ぐ場合、株は子供へ、経営者としてのポジションは後継者の従業員へと渡り「資本と経営の分離」が起こります。
さらに社長が個人保証していた借入がある場合は、もっと話はもつれると長尾社長。
長尾社長:子供の立場では「え、そんなのいらねえよ。」となりますよね?「あんたが経営しているならあんたがやりなよ」と。
社員さんにしてみたら「株はあんたが持っているのに、なんで俺だけやんなきゃいけないの」となったりしますよね。
松尾アナ:ややこしいですね…。
■価格だけではない!賢い事業売却のすすめ
松尾アナ:…となると、一体誰に買ってもらったらいいんでしょうか?
長尾社長:もう第三者というか、この場合では店舗を展開しようとしている同業の花屋さんですね。もしくは近隣にある花を使う業界。今までのお得意先、結婚式場とか葬儀場とか花をたくさん使うところが「グループに花屋を持ってもいいじゃないか」というようなケースですね。
お店が2店舗あり通販もやられていますので、財産はやはり顧客リスト、顧客情報です。顧客を持ち、一定の年商があり、利益も残っているということであれば、当然その店舗には価値があるわけですから、それを評価して買ってもらうと。
さらに事業を売却することのメリットとして、さまざまな条件を契約に盛り込めることがあると長尾社長は考えます。
長尾社長:あんまり高く売っ払おうと思わず、それなりの価格で。そのぶん、例えば「従業員の雇用は維持する」という契約をするとか。さまざまなことを考える余地があるのが事業の売却ですね。
ご相談者さんは10年後のことを憂慮しているものの、現代は高齢となってもかなり元気な人も多いもの。事業を売っていきなりヒマになるのではなく「株は売って会社は譲渡しても、その後何年間か店長として働く」というような契約を結び、仕事を続けることも可能なのだと長尾社長は言います。
そういった場合では高く売ろうとしすぎると、条件を飲んでもらうのが難しくなるので、価格と折り合いをつけて希望の契約を結べる相手を探すことが重要となります。
■売却の可能性を意識し、お店の価値を高めておく
松尾アナ:となりますと、まず現在付き合っている方を一度リストアップして、ここにだったらお願いできるかな?と考えていくといいんですかね?
長尾社長:これが難しいところで。知り合いとか従業員とか親戚とか銀行に「売ろうと思うんだよ」と言った瞬間に悪い噂を立てるバカモンがいたりするから、やはり言いにくいことなんですよね。
最近はM&Aの仲介会社もあるし、金融機関との関係性にもよるものの、銀行にちょっと相談してみると第三者を見つけやすくなる。あとは得意先で信頼のできるところに打診してみるとか。
10年はやりたいというお考えなんで、今すぐそんな話はせずに、売却を想定して、今の内に高く売れるようにお客様をきちんと増やし、リストをよりリッチなものにしていく。これが価値になりますので、そういうことを意識しておかれるといいんじゃないかと思います。
松尾アナ:ゆうすけ2号さん、これからまだ10年あるということで「こうなりましたよ!」というメッセージもまたうかがいたいなと。ぜひお寄せください!
■ゆうすけ2号さんへの回答まとめ
・「力尽きて廃業」が一番もったいない!後継者がいないのなら事業の売却を視野に入れよう。
・従業員や知り合いに引き継ぐのは、税金や借入の保証などお金絡みがややこしい。
・マーケットが縮小する時代、経営は難しくなるばかり。子供に継がせることが良い方法とは限らない。
・事業の売却はただ売るだけでなく、従業員の雇用継続や、社長自身が譲渡後もリタイアせずに仕事を続けるなど、さまざまな条件を契約に盛り込む余地がある。その場合、あまり価格を高望みしないのが大切。
・売却を検討しても、気軽に周囲に漏らさずに。まだ先の長い話なので、現在は売却の可能性を意識しつつ、顧客リストをリッチ化してより価値の高いお店をつくろう!
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