ブレイディみかこ、初の小説『両手にトカレフ』を書いて「じつは小説のほうが……」
7月20日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに、自身初の小説『両手にトカレフ』が話題、ライターのブレイディみかこさんが登場した。
大竹まこと「トカレフってロシアの拳銃?」
ブレイディみかこ「そうですね。撃ち合いをするという話ではないんですけど。彼女(主人公)が貧困家庭で、いわゆるヤングケアラー的な(立場で)。依存症の母親と小さな弟の面倒を見ながら、食べられないほどの貧困の中で、心の中で銃を構えているように武装して生きている女の子、という設定で。『両手にトカレフ』というラップのリリック(歌詞)を書くんですよ。そこから題名をとっています」
大竹「これまでノンフィクションを書いてきて、小説は初めて」
ブレイディ「『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』という本を2019年に出したんですけど、それはノンフィクションというかエッセイで。私の息子が通っている学校のことを書いていたんですね。その学校がもともと荒れた地域にあって成績も振るわなかったんですけど、子供たちに好きなことを思い切りクラブ活動でさせるようにした。バンドをさせたり、ラップ、ストリートダンスに力を入れたりして。そうしたら素行も改善されて成績も上がってきた。というユニークな学校だったから、その話を書いたんですね。それを息子が読んだら『これだとうちの学校はキラキラした場所に見えるけど、実際にはクラブ活動すらできない子供たちもたくさんいる』と。『そういう子たちからしたら、うちはたぶん全然違う学校に見えていると思う』と言われてズキッときたというか。私自身、そういう子たちも知っているし交流もあるから。でもそれってもうノンフィクションでは書けない。その子たちが抱えている問題はうちの子が体験しているものよりヘビーだしハードだし……。となったとき、これはもうノンフィクションでは書けないんじゃないかと思って、そういう子たちのエッセンスを入れたひとりのキャラクターをつくって。そのミアという子の話をフィクションで書いてみようかなと」
今作を執筆しながら、気づいたこともあるという。
ブレイディ「意外と小説のほうが本当のことを書ける部分があるなと。どうしても自分の身の周りのことを書いていると本人が触れられたくないことは書けないじゃないですか。いいところしか書けないから、いい人ばかりになっちゃう(笑)。(ノンフィクションは)人間が重層的に描けない部分がありますね。じつは小説のほうが本当のことを書けるんだな、と」
壇蜜「そこはフィクションだからと言って、イヤなところも文章にできる。ミアちゃんはいまのイギリスのティーンにありがちというか、ありやすい状況を……」
ブレイディ「そうですね。見聞きしていることを盛り込んで、ひとりの子にしたという感じです」
『両手にトカレフ』にはブレイディさん自身の貧困体験も反映され、自伝的な部分もあるという。主人公のミアは図書館に通うという一面も持つ。
ブレイディ「この子も貧困の中でスマホとかが使えないから本を読んでいたわけで。本に救われる話でもあるんですよ。子どものころって親や先生……、触れ合える大人って限られているじゃないですか。でも本を読むと、普段接することのない大人の話が聴ける。まったく出会うはずのない哲学者とかの話も。たくさん本を読んで、視野を広げるというのは大切だと思っているので、そういう気持ちも込めました。本……というか言葉は大事だと」
壇蜜「それがラップにつながっていく……」
ブレイディ「まさにそうです」
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