燃料価格の高騰で「新電力」の撤退増加 内藤陽介氏「根本的な電力政策を見直す必要がある」
7月8日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)は、一般電気事業者(東京電力など)以外の小売り電気事業者である「新電力」の経営が悪化し、事業の縮小や撤退が増加していることについて、寺島尚正アナウンサーが金曜コメンテーターで郵便学者の内藤陽介氏に意見を求めた。
フランスでは電力会社を再国有化する流れも
「新電力」とは、2016年4月の電力小売全面自由化に伴って誕生した会社。発電所を持たない会社でも電気を販売できるようになり、消費者はライフスタイルなどに合わせて、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。
しかし、この冬の厳寒により燃料価格が上昇し、「市場連動型プラン」を選択する顧客の電気料金が急騰。さらにこの夏は猛暑に加え、ウクライナ危機に伴う燃料価格の高騰が長期化。価格にコスト転嫁できない会社は売れば売るほど赤字が増える状態に陥り、事業縮小や撤退を余儀なくされた。
新電力の撤退が見られた当初は、電力を卸市場からの調達に頼る事業者が中心だったが、現在では、自前の電力設備を持つ石油元売り大手のENEOSや出光興産なども新規事業の受け付けを停止するに至っている。
規制緩和によって競争が生まれることで、電気料金の値下げも期待された「新電力」だが、内藤氏は「やっぱり民間にすべて任せると不安ですよね」と、海外の例を示した。
「フランスが電力会社を再国有化している流れもありますが、非常時だと仕方ないと思います。日本についても、もちろん新規参入を受け入れることも大事ですが、今は原油価格の高騰や原発が稼働できていないことで電力が逼迫し、節電を呼びかけている状況ですから、(電力会社を)一時的に管理下に置くようなことを考えてもいいかもしれないですね。そうなると憲法の絡みとかも出てくるんでしょうけど、法的なものとして捉え直す必要が当然あると思います」(内藤氏)
すべての電力会社と契約が成立しなかった場合のセーフティネット「最終保障供給」の契約件数が3月以降急増しており、経済産業省によると6月15日時点で1万4407件、前年の約34倍にのぼっているという。一般電気事業者の電気料金も上昇中だ。
「個別の電力会社がどうこうという話ではなくて、原発を動かさなかったことによる影響や、再生エネルギーが現段階では補助電源になってもメインにはならないということをきちんと踏まえて、根本的な電力政策を見直す必要がありますよね」(内藤氏)
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