「日本は国力も人も小さく縮こまっている」政治学者・白井聡が読み解く経済の行方とは?
6月20日の「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)は、思想史家で政治学者の白井聡さんをお招きして、日本の社会・経済か抱える問題を解説していただきました。
大竹まこと「日本は物価が上がっても賃金は上がっていません。年金はカットされて、正規雇用が増えて、将来の見通しも立ちません。娯楽を控え、恋愛も結婚もできない、子供は減り続けている。それでも岸田政権の支持率はあまり落ちてない。これはなぜでしょうか?」
白井「私たち政治学者やジャーナリストとかも結構困っているんですが、なぜかはわからないんです。みんな不満だらけのはずなのに選挙をやると政権が支持されたというような結果が出続けているんです。」
大竹「非正規の労働者が40%もいて、給料も25年間全然上がらない。なんで、日本だけこういう状況がずっと続いちゃうんですか?」
白井「日本の状況が刻一刻と駄目になってきていることは、いろんな証拠によって明らかになっています。例えば1人当たりGDPが数年前、韓国に抜かれて、このままなら今度は台湾に逆転されるでしょう。アジアの中で最も裕福な国民だという地位を明白に失いつつあります。これはやっぱり、国や社会の上に立っている人たちの指導がおかしかったんじゃないのかと考えざるを得ないわけですが、どういうわけか不満がスパークしない世の中になっています。これはひょっとすると、トップより日本全体が縮こまったような状況が元凶なのではないでしょうか。先日、京都で開催していた「鈴木敏夫とジブリ展」に行ったところ、徳間書店の親分である徳間康快さんが紹介されていて、この人は「心配すんな。金は銀行にいくらでもある」が口癖だったっていうんですね。考えてみるとこれは現代に当てはまる話です。アベノミクスで「異次元金融緩和」なるものをガンガンやって、金融機関にお金を流し込んで、いくらでも超低金利で借りれる状態を作ったのにうまくいかなかった。なぜかと言うと最大の原因は借り手がいなかったんです。お金を借りて、つまりリスクをとって何かを始める試みをしない社会になってしまった。みんなものすごく縮こまっていて、国力も小さくなった根底には、人間も小さくなっているという深刻な状況があるのではないかと思います。」
大竹「コロナ前は銀行がお金を借りてくださいと一大イベントをやってました。でも借り手がなく新しい産業などが産まれない。それで企業が人材を使いやすくするということで非正規を増やして、事業を縮小するときには首が切りやすくなったんですね。」
白井「要するに、この20~30年は企業が儲けを出すため、最も安易な道に逃れ続けてきたのではないのでしょうか。安易な方法とは、新しい事業を考えだすのではなく、とにかく労働者のコストをカットすることで儲けを出す方法で、経営者が経営の責任を果たさないような状態が普通になってしまった感じです。」
大竹「終身雇用を続けていくのはリスクが高いので、使い勝手の良い非正規を使うようになったのはわかるんですが、企業が新しいものを生み出さなくなってしまったのは、なぜなんですか?」
白井「よく失われた20年、30年と言いいますけど、この10年間はさらに深刻です。約10年前に3.11があって、原発のようなテクノロジーのあり方を見直さなければならない課題が迫り上がってきました。これを、どう乗り越えるのか、解決策を見出すことが成長にも繋がるはずだったんですが、「やっぱり原発は動かし続けたい」とか、「世界一安全な日本の原発を海外に輸出しよう」とか誰が聞くのかわからないことをやって、うまくいかなかった。そうこうするうち、世界は脱酸素の方向に急激に舵を切りました。20年ぐらい前なら、例えば太陽光発電の発電パネルで日本のメーカーは世界トップ5の中に複数入るような競争力を持っていたんですが、今や見る影もありません。」
大竹「これだけ駄目になっているのに有権者は何をしていたんですか?」
白井「そのヒントになる調査結果が昨年末ぐらいに発表されて、私も非常に衝撃を受けました。それは…」
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