有隣堂・松信健太郎社長に聞く!老舗書店が創る新たな価値『長尾一洋 ラジオde経営塾』6月13日(月)放送

有隣堂・松信健太郎社長に聞く!老舗書店が創る新たな価値『長尾一洋 ラジオde経営塾』6月13日(月)放送

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約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、悩めるビジネスマンのご相談に回答している『長尾一洋 ラジオde経営塾』。
6月13日の放送はゲスト回!
株式会社有隣堂 代表取締役社長 松信健太郎(まつのぶ けんたろう)さんをお迎えしました。長尾社長、そして有隣堂の大ファンの松尾アナも交え、経営について、本について、さらにあの大人気YOU TUBEの裏話などもお聞きしました!

■横浜伊勢佐木町生まれの老舗書店「有隣堂」

有隣堂といえば、関東圏の皆様にはとても馴染み深い書店。
創業は1909年(明治42年)。その後、関東大震災や第2次世界大戦での空襲などいくつかの大きな困難を乗り越え、現在は東京・神奈川・千葉あわせて40店舗の書店を経営されている老舗企業です。

松信社長:私の曽祖父にあたる人が、横浜の伊勢佐木町に小さなお店を出したのがはじまりと聞いています。
松尾アナ:横浜に立派な本社がありますよね?
松信社長:古いんですけどね(笑)。昭和31年に伊勢佐木町に建てたビルで、自称ですが国内初の本格的専門ビルと勝手に名乗っています。


■松尾アナは有隣堂の大ファン!

松尾アナ:文庫本を買うとカバーをかけてくれますよね?私、あの手触りとか、色を選べるのがすごく好きなんです!

松尾アナが大好きなのが、有隣堂といえばおなじみの、好きな色を選んでかけてもらえる「文庫カラーカバー」です。

松信社長:10色と有隣堂のロゴ入りの計11種類の中から選んでいただけます。資料によると1977年頃からスタートしたよう。少しでもお客様とコミュニケーションを取りたいと誰かが考えて。レジで『どの色になさいますか?』とお声かけして選んでいただく形が始まったそうです。

松尾アナ:カバーだけ欲しいなって思うんですけど…家で揃えたくて。

松信社長:カバーを10枚くるんで売ってます!ちょっとしたプレゼントなどに結構お求めいただいているようです。

松尾アナ:本がリッチな感じになるんですよね。カバー買いに行こうっと!

松信社長:ぜひよろしくお願いいたします。ついでに本もお願いいたします(笑)。

そして、もう1つ松尾アナが大好きだと言うのが、有隣堂の印象的なキャッチコピー『本は心の旅路』です。

松信社長:これも誰が言い出したかわからないんですが(笑)。私も小さいときからこれを見て育っていますので、当たり前すぎてあまり意識はしていなかったんです。
ただ最近、本の意義が問われる時代になって改めて見ると『本は心の旅路』っていいキャッチコピーで、もう1度大事にしていかなければいけないな…と考えています。


■松信社長がゲストに来てくれたワケ

実は、株式会社有隣堂は長尾社長の会社「NIコンサルティング」のクライアントさん。そのご縁で、今回のゲスト出演が実現しました。

松尾:本屋さんでIT系のサービスをご活用なさっているのですか?

松信社長:実は有隣堂のビジネスのおよそ半分を占めるのは書店以外のビジネス。民間企業や自治体、学校などに、O.A.機器やオフィス家具を販売したり保守を行っています。

私たちはこの分野を”外商”と呼んでおり、主にその外商の領域でNIコンサルティングさんの仕組みを活用させていただいています。

長尾社長:そうなんです。使っていただいていて、販売もしていただいているんです。オフィスの生産性を上げる一環として、ソリューションビジネスのような形にも取り組んでいただいております。

松信社長:営業マンが日報を上げる形で活用していて、社内のコミニュケーションが本当に活発になりました。上司から部下への指導が適切かつタイムリーに行われるなど、さまざまな効果が早速出ています。

 

■出版業界全体の危機の中で

本が売れない時代と言われて久しい昨今の情勢を、松信社長がどう捉えているかについてもお聞きしました。

 

松尾:先祖代々続く老舗の書店経営、舵取りを任されて、今どんなことを考えていらっしゃいますか?

松信社長:本が売れないのは、全くその通りで。1995年にWindows95が発売され、パソコン1人1台時代が到来しました。これを境に出版業界は右肩下がりが続いています。1996年に2兆6千億あったマーケットは、2021年1兆2千億と半分以下に。マーケットが縮まるのと連動して、書店も減って行っているということになります。
またECの発達、社会そのもののデジタル化というのも、書店経営に大きなインパクトを与えたと考えています。

松尾:そんな中、書店として生き残るために考えていることは?

松信社長:高度成長期のように本を仕入れ、本だけを売るのでは、なかなかビジネスが成立しなくなる中、私たちの社内では2つの方向性を考えて店舗運営をしています。
1つは、書籍以外の「モノ・コト・トキ」の力を借りて「書籍」を売り続けていく。
もう1つが、書籍を売ってきた信用力で 書籍以外の「モノ・コト・トキ」を売っていく。
この2軸で今、書店を再定義しようとしています。

 

■書店の再定義。老舗が挑む改革

この書店の再定義について、長尾社長も興味津々です。

長尾社長:物理的な商材じゃなくて、「コト」を売るという。さらに「トキ」というのは、他ではあまり見ないですね!先ほどの”心の旅路”じゃないですが、時間をどう使うかに注目されているのが、僕には有隣堂さんっぽく感じられます。

平素から長尾社長が番組で紹介している「ドメイン・シフト」とも重なるこの「書店の再定義」。松信社長に実例を挙げながら詳しく教えていただきました。


〈書籍以外の「モノ・コト・トキ」の力を借りて「書籍」を売り続けていく〉

松信社長:日本橋のコレド室町テラスに『誠品生活日本橋』というお店を出店しました。有名な台湾の誠品書店からライセンスを借り受ける形で私たちが運営しています。
飲食や宝石屋さんなどいろいろなテナントさんに入っていただき、書籍以外の「モノ・コト・トキ」の力を借りて、我々が直営部分で書籍を売るという形で運営しているお店です。

松尾:恵比寿店でも本以外にいろいろなものが売られていますよね。よくプレゼントに使わせていただいています!

 

〈書籍を売ってきた信用力で 書籍以外の「モノ・コト・トキ」を売っていく〉

松信社長:こちらの一番顕著な例は、東京ミッドタウン日比谷の「HIBIYA CENTRAL MARKET(ヒビヤ セントラル マーケット)」というお店。
ここはもうほとんど本を置いていないです。棚10本しかないお店で、居酒屋があり床屋がありアパレルも。本以外の方向に一度大きなベクトルを振らなければいけないと考えて作ったお店。ここ以外にも何店舗かブック&カフェという形の店舗を展開しています。

 

■大人気YOU TUBEチャンネル『有隣堂しか知らない世界』

そして有隣堂といえば、昨今大きな話題をさらっているのがYOU TUBEチャンネル『有隣堂しか知らない世界』。チャンネル登録は約15万人、再生回数は2000万回を超える大人気チャンネルで、実は長尾社長も大ファンとのこと。

長尾社長:ブッコローがね!!ぶっかまして来ますので、私もハマりまくって(笑)。つい見ちゃうんですよ。

※番組MCのミミズク『R.B.ブッコロー』。ポップで愛らしいルックスと、快刀乱麻を断つキレキレの毒舌に多くのファンが魅了されています。

注目のYOU TUBEチャンネルについて、松信社長だからこそ知るお話をあれこれうかがいました!
〈番組ができたきっかけは〉
松信社長:公式見解は私の一存で…みたいに言われているのですが(笑)必ずしもそうじゃなく、書店業界が厳しい中で、従業員の成功体験、明るい話題はないかと探していたところに、現在のチャンネルプロデューサーといろいろ話す機会があり、「じゃあ動画やりましょう」「よくわかんないけどやってみるか!」と始まったのがこの番組です。

 

〈有隣堂の社員さんも出演!〉

松信社長:そもそも一番最初は、有隣堂のスタッフが本当に好きなことや、こだわっているものを”愛を持って忖度無しに”紹介するというコンセプトで始まったので、当初は従業員ばかり出ていました。その後、関係者の方や取引先の方にも出ていただくようになりました。

〈とにかく面白い!その理由とは…〉

松信社長:私は一切の検閲をしません。誰かを傷つけないとか、最低限の品位を守るなど、本当に基本的な要件しか与えないので、面白くできているかなという気がします。

松尾:チェック無しなんですか?広報部とか入るのかと思っていました。

松信社長:ノーチェックです。番組は現場のスタッフとプロデューサーにすべておまかせです。
私もアップを見て、はじめて内容を知るんです。
※番組アップは毎週火曜と金曜の16時。松信社長によると「カッキンイチロー」と覚えるのが良いそうです!

 

〈動画からの好影響〉

松信社長:狙っているところではないのですが、動画で紹介されたものについて、売り場にお問い合わせをいただくこともあります。
何より一番いい影響は、従業員が自信を持って日々の業務にあたる、モチベーションが上がることだと思っています。売り場でのコミュニケーションにも繋がっているようですね。

長尾社長:スタッフの皆さんが出てくるというのは、組織としても非常にいい感じですよね。

 

■「本を読んで、心の旅を…」松信社長のメッセージ

出版業界を取り巻く厳しい環境の中で、老舗の経営という重責を担いつつも、書店を盛り上げる新しい価値を生み出し続けている松信社長。最後に現在のお考えをお聞きするとともに、リスナーの皆様へのメッセージをいただきました。

松信社長:今、出版業界全体が厳しいのですが、やはり業界が世の中の進化や変化について行けなかったのが大きかったと思います。しかし大手出版社さんを中心に変わりつつあるので、今が変わる最後のチャンスなのかなと思って、いろいろなことに前向きに取り組んでいます。

松尾:リスナーさんへ何かメッセージをいただけますか?

松信社長:デジタルであれ紙であれ、ぜひ本を読んでいただきたいと思います。世界一の富豪となったイーロン・マスクさんは、幼少期1日10時間SFを中心に読まれていたそうです。その体験が今のあの革新的なビジネスを生み出しているといいますし。
ITの申し子のようなマーク・ザッカーバーグさんも「本を読むことで我々は1つのテーマを十分追求し、深く没頭することができる。今どのメディアもかなわない。」と仰っています。
お忙しいかと思いますし、スマホなどいろいろなものがありますが、時には本を読んで心の旅をしていただきたいなと思います。

 

本への愛と信頼にあふれたメッセージに、長尾社長と松尾アナも深く感銘を受けていた様子でした。

松尾:ちょっとこの後行くしかないですね、有隣堂に。
長尾社長:そりゃあそうでしょう!

 

■長尾社長へのご相談を募集中!
『長尾一洋 ラジオde経営塾』では、パーソナリティ長尾一洋へのご相談やメッセージを募集しています。
お仕事のお悩みや、経営戦略のご相談などに長尾一洋が番組内でじっくりご回答いたします。

 

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