『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 35年の住宅ローンより総支払額が安くなるケースも。残価設定型住宅ローンとは
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2022」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定のエッセイ。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
残価設定型住宅ローンとは?
2022年5月21日の放送では昨年からサービスが開始した「残価設定型住宅ローン」の総支払額について考えてみました。
★これまで番組で残価設定型住宅ローンを取り上げた際の記事はこちら!
● 大和ハウスで売り出しが始まった「残価設定型住宅ローン」を解説
●定年後は10万円のローンが3万円に? 残価設定型住宅ローンの仕組み
●リ・バース60と残価設定型住宅ローン。新しい住宅ローン二つの特徴を解説
売って良し、借り続けて良しの新型ローン
まず、残価設定型住宅ローンとは、
・残価保証オプション
・新型リバモオプション
という、二つのオプションを付けた住宅ローンのことです。
残価保証オプションは、事前に設定した時期(残価設定月)以降は、いつでもローンの残高で不動産を買い取ってもらえるもの。
(※)残価設定月:家の条件やローンの借入額などによって変わり、およそ借入から20年後ほど。
二つ目の新型リバモオプションは、残価設定月以降、ローン返済額を4割以下程度(モデルケースでは、月10万円程度の返済であれば、3〜4万円程度)に減らせるローンに借り換えられるものです。
なお、借り換え後は、返済を終身にわたって行うことになります。
が、建物代を返し切ったあとは、月返済額は利息のみ、月額でいうと1万円以下になります。
要するに「売却時は損をせず、返済が苦しくなったら減額できる」ローンです。
返済期間が長くなる=総返済額は多くなる?
ちなみに、このローンの仕組みを開発したのは私なのですが(笑)、
この仕組みをメーカーさんや銀行さんに売り込むにあたって、実はあえて触れないでいた点がありました。
それは、このローンで新型リバモオプションを利用した場合、生涯の総返済額は増えるのではないか・・・ということです。
通常、お金を借りる際に返済期間を長くすると、月の払いが安くなるかわりに、総返済額は多くなりますよね。
月の負担が少ないとはいえ、終身でローンを返済する残価設定型住宅ローンは、35年の住宅ローンよりも返済額が多くなることが多いのじゃないかと自分でも思っていました。
ところが、実際にシミュレーションをしてみると、日本全国、地域を問わず、ほとんどのケースで、35年ローンと残価設定型住宅ローンであれば、残価のほうが、数100万〜場合によっては(地価が高い都心部など)1000万円近く、総返済額が安くなることが分かりました。
返済額が少なくなる理由は、◯◯を返済しないから
どうしてこういう現象が起こるかというと、実は残価設定型住宅ローンは、土地代の一部を返済しない(=ローンの完済を行わない)ローンだから。
土地代の一部は、オーナーさまが亡くなられたときに、家を売却するか、もしくは相続人さんが買い取りを行うことで返済を行います。
土地代の分をカウントしないので、返済額が少なくなるわけですね。
もちろん、「定年退職後もずっとローンを返済する心理的な負担を考えれば、多少しんどくても、35年で返しきったほうがいい」とお考えになる方も多くいらっしゃるでしょう。
ただ、新型リバモはあくまで「オプション」。35年で返済できそうな場合は返済してもよいわけです。
万が一の場合に備えて、このオプションを付けておくことは選択肢としてあってもよいのではないかと思います。
人生100年時代は、相続をしないのが一般的になる?
土地代を残し完済をしない、という点が引っ掛かる方もいらっしゃるかもしれませんので、解説をしますと・・・。
このローンは、人生100年時代を念頭において開発されたローンです。
実は、2022年の今でも、女性の半分は90歳以上まで生きる時代。さらに、寿命はこれからも伸び続けることが推定されています。
多くの方が90歳で亡くなる時代では、相続人であるお子さんの年齢はおそらく60歳前後。
すでに住宅をご自分で購入されていたりして、家が不要な場合もあるはずです。
相続人に負担を残さない家こそ、これからのスタンダードになるのではないか・・・と私は考えています。
賃貸派にこそ、残価設定型住宅ローンはお勧め
こういったことを考えてみると・・・。
残価設定型住宅ローンは「あえて賃貸派」の人にピッタリの住宅ローンじゃないかなと思っています。
若い方にお話を聞いている実感では、近年は「あえて賃貸派」の方が増えてきているようです。
というのも、終身雇用制度は崩壊し、安定した給料が続くかどうか分からない。さらに、一度家を購入してしまったら、住み替えが自由にはできない。
家を購入することで、人生の自由度が著しく下がってしまうことを懸念されているわけですね。
であれば、多少自由度が低くても、さらに、生涯で考えればコストがかかっても、賃貸を選ぶ・・・という選択は、非常に合理的です。
こうして見ると、残価設定型住宅ローンって、賃貸派の方々が求めていることの大部分を実現しているように思います。
たとえば、
・住み替えが自由にできる
・収入が不安定になった場合、月の支払いを減らすことができる
・相続人に負担を残さない
さらに、
・リフォーム等の自由度が高い
・賃貸よりも設備が良いことが多い
といった、持ち家ならではのメリットもありますよね。
持ち家と賃貸の「いいとこどり」のようなローンになっているのではないかな、と思います。
残価設定型住宅ローンを借りられる家は、今のところダイワハウスが作っている家のみ(2022年5月時点)なのですが、
これから家を建てることを検討されている方は、ぜひ残価設定型住宅ローンも視野に入れてみてください。
今回は、残価設定型住宅ローンの「新型リバモオプション」について考えてみました。
★これまで番組で残価設定型住宅ローンを取り上げた際の記事はこちら!
● 大和ハウスで売り出しが始まった「残価設定型住宅ローン」を解説
●定年後は10万円のローンが3万円に? 残価設定型住宅ローンの仕組み
●リ・バース60と残価設定型住宅ローン。新しい住宅ローン二つの特徴を解説
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お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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