ゆれる連合、お騒がせの芳野会長 ~ 5月2日ニュースパレード山本香記者取材後記
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文化放送報道記者として国会、官邸を担当し、日夜取材活動で活躍する山本香記者が放送でお伝え出来なかった話題を取材後記としてお届けします。
ゆれる連合、お騒がせの芳野会長
自民党との接近が目立っている連合の芳野ともこ会長は、先月、自民党の「人生100年時代戦略本部」の会合に出席し、講演を行った。終了後に行ったぶら下り会見では、マスクをしていても隠せないほどの笑みと笑い声を上げながら応じていた芳野会長の姿が印象的だった。記者からは、よほどうれしかったのかという声もあがっていたほどである。
芳野会長と自民党との距離感が縮まってきているといわれるのは、この会合出席だけが理由ではない。去年の衆議院選挙後から自民党幹部との接触が度々、行われているほか、1月の連合の新年会に岸田総理が出席。メーデーには外遊中の総理に代わり、松野官房長官が挨拶を行った。
また、芳野会長は、麻生副総裁や小渕組織運動本部長との度々の酒席を重ねていて、麻生副総裁は「酒を飲める関係になった」とご満悦である。
連合は本来、野党の立憲民主党と国民民主党に組織内候補を抱える団体であり、野党側を応援するのが本筋であるにも関わらず、この接近ぶりを苦々しい思いをしているのが立憲民主党である。
もちろん、芳野会長は立憲民主党との酒席にも参加しているが、芳野会長は連合内部で「小渕さんは料亭に連れて行ってくれたけど、西村さん(立憲幹事長)はお好み焼きだった」と不満を漏らしているという。立憲民主党内からは、お好み焼き接待について「もう少しましなところに連れて行くセンスはないのか」という声もあがっている。接待の内容で態度を変えるようなら芳野会長の器も小さいということだろうが、立憲民主党も、芳野会長1人、もてなせないようでは、選挙で有権者の心をわしづかみに出来るのかはなはだ疑問である。
連合の会長が自民党と接近するのは今に始まったことではない。笹森会長は自民党大会に出席したこともある。自民党幹部と酒を飲んだ経験がある会長も存在するが、いつ、誰と誰がどこで飲んだのか、これまで表面に出ることはあまりなかった。今回、芳野会長の一挙手一投足が表に出てくるのは自民党サイドが意図的に情報を流しているからだと言われている。
連合と自民党の距離感が取りざたされているが、そもそも、両者の間にそれほど距離感があるわけでもない。自動車総連は、以前から自民党に対するロビー活動を続けているし、座間に工場があった関係で日産は甘利前幹事長を窓口にずっと働きかけも行ってきたという経緯もある。現在も炭素税にからみ、自動車総連の熱い目線は野党より自民党の方に向けられているのは自明のことである。去年の衆議院選挙では、トヨタ労組が国民民主党所属の組織内候補を応援しない方針となったため公示直前にその候補が出馬を断念したということもあった。
今、連合は分裂含みで揺れている。しかし、分裂するエネルギーさえ残っていないという声が内部から漏れてくる。ある連合関係者は、芳野会長について、飲み会要因のような存在だった人物しか会長につけられなかったことが今の連合の状況を物語っていると苦々しく語っていた。