戦略の大家・内田和成氏がゲストに!長尾塾長との対談実現『長尾一洋 ラジオde経営塾』5月30日(月)放送
約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、経営戦略や日頃のお悩みのご相談にじっくり回答する『長尾一洋 ラジオde経営塾』。毎月最後の月曜日は、注目のビジネス書をご紹介しています。
今回5月30日放送はスペシャルバージョン!戦略やリーダーシップのオーソリティである内田和成先生をお招きし、ビジネスやご著書にまつわるさまざまなお話をおうかがいしました。
内田先生と長尾社長、歴戦のビジネスパーソン2人の対談は聞き応え抜群!事例などもたっぷりとお話しいただき、ビジネスマン必聴の回となりました。
■内田和成先生をゲストにお迎え!
内田 和成(うちだ かずなり)先生 (写真中)
東京大学工学部卒業、慶応義塾大学大学院でMBAを取得。
日本航空を経て、ボストンコンサルティンググループに入社。日本代表まで務める
2006年には世界の有力コンサルタント25人に選出。
早稲田大学教授を務められ本年3月にご退任。ビジネス書も多数執筆。
有名コンサルタントであり、多くのビジネスパーソンに影響を与える教育者、文筆家としても名高い内田先生。
長尾社長もご著書を何冊も読んでいて、特に2009年刊行の『異業種競争戦略』に大きな感銘を受けたとのこと。「これはコンサルタントの必読書、読んでおかないとマズい本!」と話します。
特に文中に出てくる”異業種格闘技”という言葉に感銘を受けたそう。
「当時うっすら思っていた”業界の垣根を越えていく”ということが、本に書かれていた。自社の業界や領域の捉え方、従来の範疇を超えて戦う異業種格闘技。非常に影響を受けました」。
そんな長尾社長の感想を受けた内田先生。
「『異業種競争戦略』は最初『異業種格闘技』というタイトルを希望したのですが、編集者に〈それはマズい〉って言われて。私は主張を通す方だけど、さらに〈『異業種格闘技』で出してもいいですがプロレスとかのコーナーに並びますよ〉って言われて(笑)。それはさすがに意図と違うので『異業種競争戦略』に変えました」と裏話も披露してくれました。
■新著『イノベーションの競争戦略』
内田先生による注目の新著『イノベーションの競争戦略』は本年4月に刊行されたばかり。
「競争戦略が私のフィールドですね」という内田先生により、進化するビジネスモデル戦争の本質が説かれた1冊です。
長尾社長は、文中の『行動変容に至らなければイノベーションとは言えない』という指摘が印象的だったそう。「”イノベーティブな会社”と言われる企業が、案外イノベーティブじゃないんじゃね?という疑問がもともとあったんです」と話します。
後追いや他社のものを買収しただけの商品やサービスでも世界を席巻している、賞賛される事実。あるいは「なかなかアイディアが出なくて…」と言い訳する企業の多さ。逆にアイディアさえ出したらいいと安易に考える人の多さ。そんなことを感じていた長尾社長は…
「アイディアや技術があるだけでは、本当のビジネスとしては成り立たない。やり切って、一般のお客様の行動を変えるところまでやらなければいけないというご指摘に、なるほど大事なことだなと…」と、深く感銘を受けたと言います。
■イノベーション=行動変容を促すもの
「行動変容を促すものがイノベーション?そういう理解でよろしかったですか?」と尋ねる長尾社長に、内田先生も「ありがとうございます、その通りです」と応えます。
先生によれば、特に日本企業は「最初に自分たちで生み出さなければいけない」という思い込みが強いそう。
多くの企業のイノベーション◯◯室、新規事業△△室は、まずネタ探しから始めます。しかし内田先生の研究会で1000近くの事案を見たところ、オリジナルの商品やサービスを開発してもそのまま最後まで行けるケースは少数派とのこと。
例えばiPodはAppleの発明だと思っている人は多いですが、もともとMP3プレーヤーは韓国の企業がいろいろと出していたもの。「その前はウォークマンでしょうしね」と長尾社長も共感。
最後に勝つためには、お客さんが商品やサービスを手に取り、使いこなしてもらう『行動変容』までたどり着く必要があるそうです。
■イノベーション(変革)とインベンション(発明)
ビジネスの果実を取るには…
また日本の問題点の1つに、イノベーション(変革)とインベンション(発明)が同義語に近い形で捉えられていることが挙げられると言います。
本来イノベーション=変革であるのに、誰かが最初に”技術革新”と訳したことが、混乱の原点となっているのではと内田先生は推測。「イノベーションとインベンション、最初に発明することと、実際に根付かせることは分けて考えた方がいい…」と話します。
発明の名誉を取るならインベンションが大事ですが、ビジネスの果実を取るなら明らかにイノベーション。
生み出すことに注力するのは悪くはないけれど、「あれを最初にやったのはウチだ」という話に終始してしまいがち。最初に生み出すことより、最後にお客さんに使ってもらうことの方が大事だと内田先生は考えます。
また全部を「ゼロから1を生み出し、1を10にして行く…」という一気通貫でやる必要もないとのこと。あえて言うなら最後の部分だけやればいいのだとか。
「モノマネ、パクリって呼ばれもしますが、それでもいいじゃないですか。品がないと言われるかもしれないけどビジネスですから。最後はちゃんと果実を取った方がいいよね…ということですね」と話してくれました。
■中小企業やベンチャーならではの戦いかた
「本の中のノウハウは大企業だけでなく、中小企業にも使えますか?」という八木アナからの質問に
「もちろん。逆に中小企業の方が〈自分たちにもできるんだ〉と思ってもらえるかなと云う部分もあります」と答えた内田先生。
ベンチャー起業発のサービスであるZoom(ズーム)の快進撃を挙げ、中小企業やベンチャーの戦い方の一例を教えてくれました。
《事例紹介》
現在、WEB会議といえば多くの人が思い浮かべるのがZoom。しかしMicrosoft® TeamsやSkype(現在はマイクロソフト傘下)など、似たサービスはずっと以前から存在していました。
普通に考えれば、先発、しかもマイクロソフトの商品であるこれらが勝っておかしくない状況です。その中で後発のzoomが勝ったのはとても象徴的な出来事です。
このような事態の要因は、TeamsやSkypeは、ある程度ITリテラシーのある人が使うWEBツールだったことにあると内田先生は考えます。
海外とやり取りをする、リスクやセキュリティへの意識も高く、ID登録などに抵抗もない、そんな人たちがWEB会議ツールの主な利用者でした。しかし近年WEB会議が急速に普及する中で増えたユーザーの多くは、生まれてこのかたWEB会議をしたことのない方々。
ID登録ってどうするの?カメラはどこに付いている?そのような状況では、従来型のセキュリティ万全のツールはとてもハードルが高く感じられます。
それに対し、Zoomは主催者以外はURLをクリックするだけで参加できる、とても簡単なスタイル。そこのバーをすごく低くしたのが、zoomの成功要因だと内田先生。
これは大手は真似できない部分です。
「要はマイクロソフトでは、セキュリティがザルなアプリなんか出せない訳です」。
大手企業は中小や零細企業の技術を買ったり、パクったりが簡単にできてしまうもの。そこで大手が真似できない方法を見つけることに中小企業ならではの勝機があるそうです。
■読者やリスナーの皆さんに伝えたいこと。
最後に、内田先生からビジネスパーソンの皆さんへのアドバイスとして、「違うレンズでものを見る」ことの大切さについてメガネスーパーの成功を例に取り教えていただきました。
《事例紹介》
メガネやコンタクトレンズの全国チェーンである「メガネスーパー」。
もともとメガネスーパーは、安売り競争に参戦せず、目に不自由を抱えている中高年の方々をターゲットとして成功を収めていました。
ところがその主要顧客層は、新型コロナのリスクに一番敏感な方々。コロナ禍が深刻になるにつれ、来店するお客さんが激減。
そこで普通なら「どうすればお店にお客さんを呼べるか」と考えるところ、メガネスーパーは発想を転換。ワゴン車に検査機器やメガネ一式を積んで家庭を訪問する移動販売を始め、厳しい状況を乗り切ったと言います。
このように違うレンズでものを見るために内田先生自身が心がけていることの1つが『極端に振ってみる』方法です。
例えば、物がどんどん安くなる中では、多くの人が「うちも値下げしなくては」と考えます。
しかし「うちは値上げしたらどうか?」とあえて逆サイドに振ってみる。
値上げして売れるなら商品の価値が認められるということ。値上げして売れなくなるならちょっと勝負の方法を変えてみる。あえて逆の発想を突き詰めてみると良いそうです。
また日頃から違うものの見方、考え方をするクセをつけるのも大切なのだそう。
例えば、番組収録のため文化放送にご来社くださった内田先生は、ふと入り口が1階に無いことを不思議に思ったのだとか。
「なんでだろうな?景観上?セキュリティ上?そんなどうでもいいことに興味を持って、日頃からふとした疑問を持って、突き詰めて考えるのが大事かなと思っています」と話してくれました。
■内田先生の新著の情報
「イノベーションの競争戦略: 優れたイノベーターは0→1か? 横取りか?」
内田和成(著, 編集)
東洋経済新報社
https://str.toyokeizai.net/books/9784492534496/
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