「核が抑止力ではなくロシアの自由度を高めている」国際政治学者・廣瀬陽子が読むウクライナの今後

「核が抑止力ではなくロシアの自由度を高めている」国際政治学者・廣瀬陽子が読むウクライナの今後

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5月30日の「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)は、慶応大学教授で国際政治学者の廣瀬陽子さんをお招きし、ウクライナ情勢の今後についてお話を伺った。

大竹まこと「学者の方々は今回のロシアによるウクライナ侵攻を「ありえない」と思っていたそうですね」

廣瀬陽子「まさか侵攻が起こるとは思っておりませんでした。2月24日に侵攻が行われるということになりまして、これまで自分がやってきた研究は何だったんだろうと絶望的な気持ちになりました」

大竹「どんな研究をやってこられたんですか?」

廣瀬「欧米とロシアの間で旧ソ連諸国はどのように動いているのか、地域の中でのパワーバランスに注目して研究してきました。また近年では旧ソ連諸国の中でも中央アジアなどは、中国の影響を非常に強く受けるようになってきています。ユーラシアという場が、旧ソ連諸国を巡って今のロシア・欧米・中国の中でどのように動いているのかに注目しています」

大竹「廣瀬さんはこの侵攻で『私が知っているロシアは消滅した』、『私が構築してきた理論も崩壊した』と、ものすごいショックを受けたそうですね」

廣瀬「私が知っているロシアというのは長年の観察に基づくものなんですが、例えばドネツクのルハンシクという未承認国家の独立を承認したことは、ロシアの外交セオリーから見るとむしろ損な選択になるんですね。それをやったので『あれっ?』と思っていたら侵攻に至ってしまいました。ロシアはいろんな強みを持っていますので、それを旧ソ連諸国にチラつかせながら、時には融和的に、時には厳しい態度で、相手に揺さぶりをかけながら自分の影響下にとどめようとするのがロシアのやり方だと思っていんです。それが今回のように、力をもってして自分の好きなようにしようという態度に出たということはかなり衝撃的でした」

大竹「学者の方々は、核兵器は戦争の抑止になると思っていたわけですよね。ところが核保有国がこういうことを起こしたら抑止にならなくなっちゃった」

廣瀬「そうなんですよね。抑止にならないばかりか、ロシアが核をもっているので、他の核保有国はロシアを責められず、ロシアのやりたい放題な状況になってしまっています。核がむしろロシアの自由度を高めてしまうという逆効果を生んでいるので、核抑止論者にとっては非常に衝撃的だったと思います」

大竹「手出しができない、ということは、この戦争は長引くんでしょうか?」

廣瀬「長引く可能性は高いと思います。ロシアは度々、核の使用をチラつかせてはいるものの、実際に使ったらNATOやアメリカが、何もせずにはいられないと思います。すると核戦争の危険が非常に高まりますが、こうなるとロシア自身も太刀打ち出来ないことは分かっています。なので核戦争にならないレベルで核の脅威を利用して、相手を先導していくと思います」

「大竹まこと ゴールデンラジオ」は午後1時~3時30分、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。 radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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