『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 家と私、どっちの寿命が先!? 老後の住まい、専門家のおすすめは
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2022」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定のエッセイ。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。
今の持ち家の寿命がきたら、どこに住むべき?
2022年5月14日の放送では、横浜市青葉区にお住まいの63歳の方からお便りをいただきました。
いつも楽しく聞いています。
親が早くなくなったこともあり、相続した家で、
長年住み続けてきました。
築そろそろ半世紀を超えて、作りは頑丈ですが、
少しずつ限界に近付いている感じもあります。
これまでは、私と家の寿命が同じくらいならいいかな、と
思ってきましたが、最近では家の寿命が先かな…
という気がしてきています。
ギリギリまで住んで賃貸に移ればいいかと思っていましたが、
ところが先日の放送で、60歳を超えると賃貸物件がないというお話。
かといって建て替える気力もありません。
考えると滅入ってくるので考えないようにしていますが、
どうするのがベストなんでしょう…?
(ミスター心配性さん・横浜市青葉区・63歳)
賃貸は「サ高住」も視野に入れてほしいが・・・
私も今年で63歳になりますので、質問者さんとほぼ同年代。
半ば自分ごととして(笑)、質問にお答えします。
まず、先日の放送というのは、こちらの記事のことです。
『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 60歳以降は賃貸が借りられない? 専門家がアドバイス
60歳を過ぎると、賃貸住宅の審査が通りづらくなるので、
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などを利用しよう・・・ということをお話ししたのですが。
ただ、サービス付き高齢者向け住宅は数が限られていますから、60歳以下の方よりも、賃貸は住まいの選択肢が少なくなることは確かですね。
リバースモーゲージを検討してみて
一つの選択肢としては、リバースモーゲージを利用してリフォームをすることが考えられます。
リバースモーゲージは、最近は、60歳以上の方が新築住宅を建てたり、もしくは今お持ちの家を大規模リフォームする資金を借りる、住宅ローンの一種として使われています。
リバースモーゲージは、元本は死亡時に一括して担保住宅を処分して返しますので、生きている間に支払う必要があるのは金利部分のみ。このため、普通の住宅ローンに比べると支払額が非常に少なくてすみます。
賃貸を探すより、リバースモーゲージを借りるほうが簡単?
今の時代は、賃貸物件を探すより、リバースモーゲージを借りて今の家をリフォームするほうが楽なケースがままあります。
リバースモーゲージは、およそ土地代の半分程度を借りられます。
質問者さんはお住まいが横浜市の青葉区ですから、それなりに地価が高いはず。
おそらく、数100万円から、うまくいけば1000万円近く借りられる可能性もあります。
それだけのお金が手元にあれば、だいたいのリフォームはできそうですよね。
築年数を考えると、一度耐震補強を入れる必要があるかもしれません。
耐震補強工事のためには、壁を剥がす必要がありますから、この際、間取りをこれからの自分のライフスタイルに合わせて変えてみる・・・なんてこともあるかもしれません。
月の返済額は、1000万円借りても1.6万円程度に収まるケースも
さて、気になるのは月の返済額。
前述の通り、リバースモーゲージは月の返済が金利部分のみです。
1000万円を2パーセントの金利で借りた場合、金利は年間20万円。
これを12ヶ月分で割ると、毎月の返済額は1.6万円程度です。
質問者さんはメールで、今の家に住めなくなった場合は「賃貸に移れば」とおっしゃっているので、家賃を払う程度のお金はあるのですよね。
それならむしろ、住み慣れた我が家で、暮らしやすい間取りや設備をリフォームするほうが、暮らしの質は上がるのに、月々の支払いは安くなるかもしれません。
相続税対策にも有効かも
リバースモーゲージのお話しをすると、多くの方が不安に思われるのが
「子供(相続人)に家を遺せない」とか、
「残った元本を相続人が払わなければいけない?」ということ。
まず、お子さんが「家を相続したい!」と思った場合、もちろん相続は可能です。
ただし、お子さんは相続時に、残った元本の一括返済をする必要があります。
なお、ご質問者さまがお住まいの青葉区は地価が高いですから、相続税もかなり高額になります。
その際、ローンなどの「負の財産」があれば、その分だけ相続財産が減ります。
つまり、土地代が2000万円と評価されたとしても、1000万円のリバースモーゲージを借りている場合、差し引き1000万円が相続税の計算ベースになります。
土地を引き継ぐつもりのお子さんからすれば、一種の節税対策になりうるということですね。
相続しない場合でも「ノンリコース型」で対策を
・・・ところで、お子さんが家を相続したいと思うかどうかは微妙なところですよね。
というのも、最近は長寿化のおかげで、相続の頃には子供が60代になっているなんてことも多いわけですから・・・。
というわけで、お子さんに家を相続する気持ちがなさそうな場合は、
リバースモーゲージを借りる際に「ノンリコース型」というタイプを選択することができます。
これは、家の売却後、なおローンが返しきれなかった場合でも、ローン残額を返済する必要がなくなるもの。
ノンリコース型は、ローンの金利が少し高くなることがデメリットですが、
借りたローンの「後始末」を子供にさせない、ある種現代的なローンの借り方といえるかもしれませんね。
そんなわけで今回は、60歳を過ぎてからの住まいについて考えてみました。
ミスター心配性さん、メールお寄せいただき、ありがとうございました。
家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.net まで。
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お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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