ビジョンに当事者意識を持ってくれる社員が少ない場合は?『長尾一洋 ラジオde経営塾』5月2日(月)放送
約8,000社の企業に携わってきた経営コンサルティングのエキスパート長尾一洋社長が、今週も悩めるビジネスマンのご相談に回答。
今回はMC八木ひとみアナいわく「かなり骨太なご相談」。多岐にわたる事業運営の中で、社員の当事者意識の少なさが気になるという、会社役員の方からのお悩みをご紹介します。
■IT企業役員のお悩み「会社のビジョンに当事者意識を持ってくれる社員が少なく、なかなか浸透しない…」
ご相談者はラジオネーム『マリオ』さんです。
職業:会社役員
業種:IT/通信
年代:40代
ご相談の背景:
既存事業・新規事業・国内・国外の4つの軸で、3社を経営している。
・既存事業は間もなく35年目を迎えるIT業。
・新規事業は2015年に自己資本で国内で起業。
・国外事業は2015年にベトナムで起業。
これらをグループ会社として、パートナーさんも含め120人程度をマネジメントしており、3社はすべてIT系の企業だが、その範囲や国籍が違う。
「事業内容、価値観、性格や国籍も異なる3社において、事業と組織を融合し、強みと弱みを補完しあうことで次の成長を作れないかと思っております。
具体的にはミッション・ビジョンを定義し、コモンバリューをリーダー格の社員で作っています。しかし当事者意識を持って参加してくれる社員は1割程度に感じ、現場にも新しいビジョンがなかなか浸透しません。このまま3社協業路線で進むのか、別々の道を歩むのか悩んでおります(一部略)」
というご相談。長尾社長はどのようにアドバイスしたのでしょうか?
■3社協業路線なら「ドメイン・コンセンサス」を重視
「素晴らしい経営をされていて、私がとやかく言うようなことではないかもしれませんが(笑)」と話し始めた長尾社長。
まず提案されたのは”ドメイン・コンセンサス”を得られるか検討することです。ご存知”企業ドメイン”とは、簡単に言えばその会社が「何屋さんか」ということ。表面をなぞった言葉遊びとなってしまう場合もありますが、シンプルな言葉で自分たちを定義し、それが上手くハマった時には、社内外の意識が変わると言います。
さらに今回のご相談で重視したいのは”ドメイン・コンセンサス”だと長尾社長。
ドメイン・コンセンサスとは、ドメインを社内メンバーが「たしかにウチは◯◯屋さんだね!」と受け入れること。ドメインに対する共通認識、合意のことを指します。
3社体制の今回の相談であれば「グループ全体を統合した時、”我々のドメインは何か”というのを、まず検討していただくと良い」と長尾社長。
それぞれ個性がある3社でも、共通して「俺たちは◯◯屋さん、△△業だ!」と言える定義ができ、社内で受け入れられれば、ご質問の3社協業路線ができると言います。
■”三社”三様路線もあり!
ただし、国も事業の性質も違う3社を経営されていれば、ドメインを1つに絞れないこともあります。その場合は、無理に一緒にする必要はなく、3社のドメインを分け、それぞれの道を進んで行くのも良いと長尾社長は考えます。
大手企業の場合では、バラバラの事業が増えすぎるとリソースが分散してしまう”コングロマリットディスカウント”という事態もありえますが、今回のご相談の状況では”小粒だけれどピリリと辛い”3社を作っていき、それぞれの会社でまた後継者を育てていくことを考えるのも1つの選択肢なのだそう。
■マリオさんへの回答まとめ
・3社協業路線を目指すなら、トータルで「われわれは◯◯屋さん、△△業だ!」と定義できるドメインを検討すべし!
・ドメインを定義するだけでなく、ドメイン・コンセンサスが得られるか(自社のドメインが社内メンバーに受け入れられるか)を検討する必要がある。
・国籍も事業の性質も違う3社について、1つのドメインに絞るのが難しい場合は、3社それぞれ独自の道を進むもよし。
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