13年間の集大成!吉崎達彦氏が現在の円安について最終解説!
ロンドン為替市場で28日、一時1ドル125円台をつけ、2015年8月以来、およそ6年7か月ぶりの円安水準となった。3月29日の「くにまるジャパン極」(文化放送)をもって13年間の最後の出演となるエコノミストの吉崎達彦氏は、この円安の原因や、今後の見通しなどについて詳しく解説した。
野村邦丸アナ「吉崎達彦さんに13年間火曜日の『深読みジャパン』を担当いただいて、その間、円が一番安くなったのが?」
吉崎氏「2015年の夏ですよね。その時はどうしてそうなったかと言うと、その前の年の2014年10月末に『黒田バズーカ』ってのがあったんです。黒田東彦(はるひこ)日銀総裁と言うと2013年の春にスタートして、『異次元の金融緩和』を始めて、それだけじゃなくてその翌年の秋にさらに一段の緩和策っていうのを出して一気に円安の流れが決まるわけです。それで2015年の夏になってやっぱり今と同じように125円台まで来たところで、黒田さんが口先介入したんですね。『これ以上の円安は望まない』みたいなことを言ったんで、それ以来マーケットの中では『黒田ライン』とか『黒田シーリング(天井)』と言うことで、何となくそこに敷居が出来たと。今回はその敷居際々まで行きました」
邦丸「改めて吉崎さん、何で今これだけ円安ドル高になっているか、教えてください」
吉崎「色んな理由が全部重なっているわけですね。まず、為替は何で動くかって言うと、やっぱり今だと金融政策によるところが大きくて、その中でもアメリカのFRB(連邦準備理事会)は『利上げです』と。3月にもう利上げ一回して、次は5月に会合があるわけですけど、
これは『0.25じゃなくて0.5上げるぞ』って感じになって来ていて、完全にアメリカは金融引き締めに向かっている。でも日本はどうかって言うと『金融緩和継続です』ってことを言っている。これは普通、ドルを買って円を売ると言う動きになりますよね。これがひとつ大きいんですが、もうひとつ日々の貿易による為替の売り買いって言うのは、コンスタントに行われているわけですが、こっちで今貿易収支が赤字になっている。特にエネルギー価格がものすごく上がっていますから、どうしてもエネルギーを買うために大体ドル建てで買わなきゃいけないんで、そうするとまあ、貿易収支の赤字って言うのも出て来る。それ以外にも為替って色んな理由で動くものなんですけども、以前であれば、例えばウクライナで戦争が起きている。こういう有事の時に安全資産である円を買うって言う動きがあったんですけど、今回はまったくそれが機能していない」
今回の円安は自動車産業などの輸出企業にとって明らかなプラス材料だが、一方で円安のデメリットは?
吉崎「はっきりしていると思うんですが、やっぱりエネルギー価格、食料価格が上がると言うことで、これは岸田総理が『緊急対策をやるんだ』と言う風に言ってますけども、ある程度ガソリン代とかは何とかしないと、大変だって言う人が多いと思われますね。ホント為替って言うのは僕はもう永遠のテーマだと思うんですよね。つまり、国と国との力関係で微妙に決まって来て、それは何かフェアバリューと言うか理論値みたいなものが無いんです。だから『え?こないだまで金融政策で決まってたのに、今は違うの?』みたいなことがしょっちゅうあって、例えば今みたいな時だったら軍事力だってひとつ大きな為替を左右する条件なんですね。『ああやっぱりアメリカは強いから、ドルは買いだよな』みたいな。或いはちょっと前だとミセス・ワタナベ(日本人個人投資家の総称)と言うトレーダーが大変話題になって、日本の外貨預金と言うのがオーストラリアドルやニュージーランドドルを買うので、それらのドルは輸出が命なんで通貨上がっちゃって『俺たちの商売上がったりだよ!何なんだこのミセス・ワタナベって!』って文句を言われる、そんな時期もあったんですが、
結局この為替に振り回されるグローバル経済って言うのは変わらないですね」
ウクライナに侵攻したロシアへの経済制裁を発端にして為替は大きく動き、世界経済はますます混迷を極めるが、今後も吉崎氏に頼る機会は多いだろう。
吉崎さん、13年間大変お世話になりました。これからもソフトでわかりやすい経済のお話を様々な番組でお願いします!
「くにまるジャパン極」は平日朝9~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。吉崎達彦氏はコメンテーターとして毎週火曜に登場。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。