『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』ミャンマークーデター前夜、現地銀行のCOOになった日本人がいた。泉賢一さんをゲストにお迎え
情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。
この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2022」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定のエッセイ。今回はゲストに、『ミャンマー金融道 ゼロから「信用」をつくった日本人銀行員の3105日』の著者・泉賢一さんをお招きしました。前後編でお届けします。
後編はこちら:疫学研究者になるはずが、ミャンマー現地銀行COOに?! 泉賢一さんをゲストにお迎え
泉賢一さんプロフィール
1966年のお生まれ。神戸大学農学部を卒業後、現在の三井住友銀行に入行。2013年ミャンマーに赴任。2019年からは一般財団法人日本建築センター嘱託職員を経てミャンマー住宅開発インフラ銀行COOをお勤めになり、現在は住友林業勤務で、今年(2022年)、アメリカはテキサス・ダラスに赴任予定でいらっしゃいます。
ミャンマー×金融といえばこの人。泉賢一さんをゲストにお呼びしました
鈴木 今回のゲストは『ミャンマー金融道 ゼロから「信用」をつくった日本人銀行員の3105日』(河出書房新社、2021年12月)の著者でいらっしゃいます、泉賢一さんです。よろしくお願い申し上げます。
泉 泉です。よろしくお願いします。
残間 私も拝読しました。仕事や人生で壁に突き当たっている人が読むと、元気になりますよ。
大垣 泉さん、放送(2022年3月19日)の約10日後にはアメリカ赴任のため出国されるということで。当分、対面ではお話が聞けなくなるので、急遽お呼びしました。
鈴木 ええっ。いつご出国なさるんですか。
泉 今月(2022年3月)末を予定しています。
大垣 ミャンマーは、クーデターや、クーデターにともなう金融制裁の影響で、現地でビジネスを続ける雰囲気ではなくなってしまいましたね。
泉 そうですね、残念ながら・・・。いつかミャンマーにまた戻りたいとは思っているのですが。
2013年のミャンマーで、銀行は「ほぼ」機能していなかった・・・?
鈴木 ご著書によると、泉さんがミャンマーと関わることになったのは2013年、47歳のときだそうですが。
残間 帯には「4月1日、突然の辞令によりミャンマーへ」と書いてありますね。
「銀行がほぼ機能していないミャンマーへの赴任を命じられ、中小企業への融資制度を作る使命を託された。
その部署には前任者もいなければ同僚もおらず、現地の情報もほとんどない」・・・。
大垣 「銀行がほぼ機能していない」っていうのは、柔らかい言葉ですね。ないに等しかったですよ。私もミャンマーには、政府のODA事業の一環で携わったことがあるんですが。
泉 (笑)。
大垣 だって、ミャンマー国民が銀行にお金を預けるときって、どうやって預けると思いますか。まず風呂敷のようなものに、ぼろぼろのお札をいっぱい入れるんです。
泉 そうそう。日本でいう麻袋にお札をいっぱい入れて、銀行の窓口にポンと置きに行くんですよね。
鈴木 ええっ。
大垣 そこから始まって、銀行に信用保証の仕組みを作られたわけですから、泉さんがミャンマーにもたらした功績は大きかったと思います。
43歳時点で、TOEICの点数は400点前後
残間 「突然の赴任命令にもかかわらず、現地で金融システムを作りあげる」と聞くと、もともと語学に堪能なのかと思う方もいらっしゃると思いますが、泉さん、違うんですよね。
43歳で英語の学びをスタートして、TOEICの点数が400点前後だったところから、2年で850点まで点数を上げたと。それを評価されて、ミャンマーへの赴任が決まったそうじゃないですか。
泉 いやいや。
大垣 泉さん、もちろん謙遜されていますけれど。確実に通じる英語を話されていましたよ。ペラペラ喋れることよりも、そのことのほうが重要です。
泉 東南アジアで英語は第二言語ですから、お互いにあまり得意じゃないことは分かっていますしね。
財務副大臣の前で、前日に作成した4ページの英文を読み上げ
残間 「英語力の不足を補うため、英作文ノートをそのまま読み上げて、財務副大臣の心をつかんだ」と帯には書いてありますが。
泉 その日の前日に急遽、お会いできることが決まったんです。
何の準備もなかったので、仕方なくノートに4ページぐらい、言いたいことを書いて。「これを読ませて欲しい」といって、読み上げました。
残間 暗記じゃなくて。
泉 暗記じゃないですね。暗記したのは「あなたの大切な時間を潰したくないから読ませてほしい」という2行だけ(笑)。副大臣も笑っていましたけどね。
大垣 ただ流暢にプレゼンされるより、むしろ印象に残るかもしれませんね。
いい意味での「ゆるさ」が結果につながった
残間 三井住友銀行の仕事として行ったのですか。
泉 はい。今風の言葉でいうと、SDGsとか、CSRとか、そういう部類の事業に入ると思うんですが、とてもそんな高貴な感じではなくて、野放し状態でした(笑)。
だからこそ、銀行の厳しいルールに縛られず、いろんなところにも行けたんですが。
残間 本社からいろいろ言われなかったんですか。
泉 全く言われませんでした。
大垣 もともと、ミャンマーと三井住友銀行には関わりがあったんですか。
泉 いえ。ミャンマーが急速に民主化に舵を切ったことをきっかけに「何かいいことがあるかもしれないから、名前を売っておこう」という考えがあったそうです。
当時ミャンマーに外国銀行は一つもできていませんでしたので。
残間 (笑)。
大垣 余裕だなあ。
泉 時間が経つうちに、状況はいろいろ変わってしまいましたが・・・。
最終的にはミャンマーと三井住友銀行、お互いのために役に立ったかな、と自分では考えています。
***
後編では、書籍執筆の経緯などを、詳しくお聞きします。
後編はこちら:疫学研究者になるはずが、ミャンマー現地銀行COOに?! 泉賢一さんをゲストにお迎え
『ミャンマー金融道』(河出書房新社)、発売中です
『ミャンマー金融道 ゼロから「信用」をつくった日本人銀行員の3105日』(河出書房新社、2021年12月)
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お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…