ウクライナ危機で問われる国連の存在意義とは? ~3月21日ニュースワイドSAKIDORI!

ウクライナ危機で問われる国連の存在意義とは? ~3月21日ニュースワイドSAKIDORI!

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「国連として機能できない問題には主権国家が個々に連携して解決すべきだ」。
国連安保理の専門家パネル委員を務めた古川勝久氏が、『斉藤一美ニュース
ワイドSAKIDORI!』にオーストリアから生出演した。

国連安全保障理事会は17日、ウクライナの人道状況について協議する会合を開催、
欧米の理事国からロシア軍による民間人を標的にした攻撃に非難が集中した。
これに対しロシアのネベンジャ国連大使は「我が軍は市民を攻撃していない」と
反論。また18日にはロシアの要請の基づき、ロシアが主張するウクライナでの
アメリカによる生物兵器開発問題を議題に公開会合を開催した。
アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国の常任理事国のうち、1カ国でも
反対する国があれば重要事項の決定ができない国連の安全保障理事会。
ウクライナ危機に対し国連ができることはあるのだろうか?
そして国連の存在意義とは?

国連安保理・元専門家パネル委員で、現在はオーストリアのシンクタンクで
国際情勢の研究に従事している古川勝久氏に聞いた。

「大変申し訳ないが、率直に言ってロシアという国はたちが悪い」と古川氏。
「侵攻当初は『ウクライナが核兵器を作っている』ことを理由とし、その次には
『化学兵器や生物兵器をウクライナが作っている』ことを侵攻の理由とした。
こういう言いがかりのような難癖をつけることはソ連時代の1949年からずっと
やってきているが、しっかりとした証拠を出してくることはない」とした上で、
ウクライナ危機に関する国連の動きについては、
「国連の組織の中でも、例えば緊急人道支援に関係する組織であるユニセフや
国連難民高等弁務官事務所は、非常に迅速かつ的確に動く。反対に一番問題が
あるのが国連安全保障理事会だ。その理由は、いま世界で様々な問題を起こして
いる中国とロシアが、安保理で裁判官的役割を務めているからだ」。

その一方で、
「15カ国だけの参加で重要な決定については中国やロシアの反対があれば
決められない安全保障理事会と違い、全ての国連加盟国が参加できる
緊急特別会合が先月28日から開かれた。そこではロシアのウクライナ侵攻に関して
各国の代表が3日間にわたって演説を行い、今月3日に採決され、圧倒的大多数の
賛成でロシアに対する非難決議案が採択された。これは法的拘束力のある決議では
ないが、アメリカやヨーロッパ、および日本だけが科している経済制裁に、
ロシアへの非難決議案に賛成した国々も参加してもらう基盤を作ることはできる。
つまり、国連で行った1回きりの決議であっても、これを基に有志が集って
様々な経済制裁をロシアに科すことができる」と述べた。

また、国連の存在は意味がないのかとの問いに、古川氏はこれを否定。
「国連には様々な事務局が存在するが、大量破壊兵器などを扱う軍縮担当の
事務局の責任者を務めているのが、国連事務次長の中満泉さんという人物。
彼女は『ロシアの主張するような事実は国連として確認したことがない』と
ロシアに対して反論している。ロシアが言っていることはウソであることを
ロシア国民に知らせるために、国連がその情報を提供することはできると思う」
と解説した。

そもそも、ロシアが安保理の常任理事国であることに問題はないのだろうか。
国連改革は必要ないのだろうか。古川氏は、
「その話は昔から言われてきたが、残念ながら非常に難しい。安保理の改革に
あたっては、我々が改革の中心的存在だと考える中国とロシアがキャスティング
ボートを握っているからだ。この2カ国が『Yes』という改革でなければ改革は
できない。つまり国連安保理だけに期待を寄せるのは現実的ではない」とした
一方で、
「国連安保理が動かなければ何もできなということは全くない。先ほども述べ
たが、日本を含めた西側諸国がロシアに科している経済制裁は、安保理には関係
なくそれぞれの国の判断でできる。これに参加する国の輪を広げていくことで、
安保理に対し、より強固な補完を行うことができる。知恵を出すことでまだまだ
やれることはあると思う」。

では、国連の存在意義とは何か?
「あまり良い例えではないかもしれないが、自分は昔から『足の裏の米粒』という
表現をしている。それを取っても食べられるわけではないが、取らないと気になる。
それが国連だと」。
「実は国連がないと困ることは色々ある。例えば日本が周辺諸国と領海を巡って
争っているが、この問題を解決するために『海洋法に関する国連条約』という条約が
長い時間をかけて議論され締結された。今から国連を無くして、この条約をゼロから
作るのは大変なことだ。この条約のように、いま有用に使われていることは、
このまま効果的に使っていく。しかし国連として機能できない問題には主権国家が
個々に連携をとって解決に導くことが求められていると思う」。

最後に斉藤キャスターが、「かつて日本が国際連盟を脱退したように、今回ロシアが
国際連合を脱退するようなことは万に一つもないと思うか?」と質問したところ、
古川氏は次のように答えた。
「ロシアにとって安保理は彼らが意思決定を示すことのできる唯一の場、いわば
唯一の晴れ舞台。従ってロシアはこの椅子にしがみついて離れようとはしない
だろう。世界各国がロシアに対し、より厳しいチェックを続けていくことが必要だ」

『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!』は平日午後3時30分~5時50分、文化放送(AM1134KHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。
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