仮仮仮置き場って何?…えのきどいちろうが福島を撮り続けた写真家の講演を聞いて感じたこと
東日本大震災の発生から11年となる3月11日放送の「くにまるジャパン極」(文化放送)で、コラムニストのえのきどいちろう氏は、福島の様子を撮影し続けているフォトジャーナリスト・豊田直巳氏の講演会に行って感じたことについて話した。
えのきど「豊田さんの講演会で興味深かったのがお神輿を持った祭りの写真。同じような写真がいろんな新聞にもあって、お祭りが戻ってきたなーという絵ですごく良い。だけど豊田さんの写真は同じ情景で広く撮ってて、後ろにフレコンバッグがいっぱい並んでいる」
野村邦丸アナ「放射性廃棄物が入っている袋ですね」
えのきど「全体はこういうことなのか?とわかる。(新聞の写真では、若者にフォーカスするから見えなかったものが)広めに撮影することで、フレコンバッグが写っていることが見えて来る。それが興味深かったです」
もう1点、えのきど氏が豊田氏の講演会で興味深かったのが、除染した民家を定点観測した写真だという。
えのきど「民家を除染する様子の写真があった。まず、ホースで水を撒く。その後、雑巾がけをして表面をきれいにする。きれいになった後、そこに住むわけじゃないので家は解体する。さらにしばらく経つと、草ぼうぼうになっていく。そこを除染する。ナンセンスな感じの写真になっているんですね」
邦丸「除染されたものを置く仮置き場の話も聞かせてもらえますか?」
えのきど「除染した雑巾はどうなるかというと、これは放射性廃棄物になるので、仮置き場といわれる所に置かれるんですけど、仮置き場という名前って変な言葉ですよね。僕の仕事場はいろんなところに仮置きするから片付かない。これと同じ感じがする。いずれどかしますけど、今はここに置きますというエクスキューズですよね。それで、この仮置き場がいっぱいになってくると仮仮置き場が出来るんです」
邦丸「仮置き場に置けないものを仮に置いておく仮仮置き場ですね」
えのきど「さらには、仮仮仮置き場まである。そこまでいったんだって。今は仮に置いてますけど、いずれ仮仮置き場に移動しますけど、仮仮仮置き場も一生ここに置くわけじゃないです。仮置き場に行きますから。エクスキューズのエクスキューズのエクスキューズ。豊田さんのこの話を聞いて、場内はみんな笑ったけど、これが日常なんだよね。こういうことは政治がちゃんとやってくれよとももちろん思うけど、人間ってそうなっちゃうんだよ。日常の中に厄介なものが入り込んできて、どうやっていいかわからないようなことが起こる。災害が起きてから11年経ってるけど、ずっと日常は流れてるからその中で生きようとすると仮仮仮置き場みたいな変なことが現実化する。その中でみんな工夫して暮らしてる」
最後にえのきど氏はこう話す。
えのきど「整った社会正義みたいな感じの報道スタイルってあるじゃないですか?その中だとこぼれ落ちちゃうような日常的な目線とか、個人的な目線というのは、何か写り込んじゃうんですね。カメラマンの豊田さんの主張とは違うけど、僕はそこが興味深かったんですよね」
「くにまるジャパン極」は平日朝9~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。えのきどいちろう氏は第2金曜日にコメンテーターとして登場。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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