『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 不動産小口化商品で相続対策ができる? 金融のプロが解説します

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 不動産小口化商品で相続対策ができる? 金融のプロが解説します

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2022」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定のエッセイ。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

不動産小口化商品が流行っているそうですが

メールをご紹介します。

最近よく目にするようになってきた
「不動産小口化商品」についてどう思われますか?
今年80になる母親の相続税対策に
候補の1つとして考えております。
高齢の両親が40-50年の木造アパートを
3棟持っていて、5年ほど自主管理は経験しているので
賃貸管理に多少は慣れています。
しかし新規物件購入は未経験なので
「不動産小口化商品」に魅力を感じています。
是非大垣さんのお考えをお伺いしたいです。
よろしくお願いいたします。

Sさん(男性・東京都板橋区)

不動産小口化商品って、バブル崩壊の直前にものすごく流行ったんです。
その頃は、土地の値上がりを前提にして商品が作られていたので、バブル崩壊で大勢の方が泣きを見ることになって。その後10年ぐらいは業界内でもタブー扱いだったのですが・・・。

商品の仕組みそのものに問題はないので、また扱われるようになってきているようですね。

数万円で、高級マンションを所有できる商品!?

不動産小口化商品とは、ビルなどの不動産を、一口数万円から100万円程度の買いやすい価格に小さくして販売するものです。不動産の賃料収入や売却額から、分配金が受け取れます。

よく新聞に、「2億5000万円のマンションを買いませんか」というような、いかにも富裕層向けの(笑)チラシが入っていますよね。
このマンションのように、一人で購入するにはとても手が出ないような大きなビルを、小さく分けることによって買いやすくしたものだとお考えください。

バブル前に売られていた頃は、一口が1億円ぐらいで売られていて、「どこが小口だ」とツッコミたくなったものですが(笑)、最近は価格も下がり、手が出しやすくなっているようですね。

また最近では、ビットコインのようにデジタル化した商品も出てきています
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001330169.pdf)。

その不動産に住めるわけではないので注意!

ちなみに、小口化商品で購入するのは、「ビルそのもの」の持分です。
小さく区切るというと、「マンションのこの部屋を購入する」といったようなイメージがどうしても出てきてしまいますが・・・。

そうではなく、もっと抽象的に、ビル全体を小口の持分に分けてを購入しているとお考えください。

小口化してビルを買ったからといって、「○号室に住める」とか、そういうわけではないということですね。

不動産投資信託(REIT)とは異なります

不動産小口化商品と混同されやすい商品に「不動産投資信託(REIT)」がありますが、REITと小口化商品は全く異なる商品です。

小口化商品が、不動産そのものを購入しているのに対して、REITは、不動産を運営している会社の株を購入しています。
つまりREITは、一企業の株を買っているのとそこまで変わりがないのですね。

建物そのものを購入している小口化との違いがお分かりいただけるでしょうか。

相続税対策になるのはなぜ?

さて、今回相談者のSさんは、相続対策に小口化の購入を検討されているということ。

なぜ小口化が相続対策になるといわれているかというと、小口化してビルを購入した場合、この商品は相続において「不動産」として価値が計算されるからです。
不動産は、相続する場合、本来の価値より低く評価されるので、現金で持っているよりも税金の額が安くなるのですね。

中途解約が難しいケースも

投資の感覚で購入でき、相続税対策になる・・・と聞くと、手を出してしまいそうですが、注意点もあります。

まず、中途解約ができない商品もあることは抑えておいたほうがよいですね。
これは、不動産を購入しているという商品の性質上、持分だけを売るということが難しいからです。

同じ理由で、仮に中途解約ができたとしても、その持分について次の買い手が見つかるまで待たなければならないなど、すぐには解約できないことがあります。

結局、手放すために、市場価格よりも安い価格で売るしかなくなり、損をするケースもあるでしょう。

購入時には、中途解約が可能なのか、可能だとしたらどのような条件で解約できるのかを確認しておいたほうが良いですね。

どんなリスクがある?

また、購入する際は、よく業者を選ばれることをお勧めします。

というのも、小口化商品で得られる利益は基本的に、賃貸収入や売却など、業者の手腕によるものが大きいですよね。
REITなら、業者の腕が悪いと思ったら株を売却すれば良いだけですが、前述の通り、小口化商品の売却は困難です。

自分に不利な条件で購入をしようとしていないか、その業者が信頼できるか、購入前に今一度確認されることをお勧めします。

おわりに

どんな金融商品でもそうですが、不動産小口化商品も、一概に「良い」とか「悪い」と言うことはできません。

購入される方が、何を目的に買われるのかを明確に理解した上で購入することが必要です。
信頼できる専門家によくご相談なさってから購入されると良いかもしれませんね。

今回は、不動産小口化商品について考えてみました。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介してい
ます。必ず最新の情報をご確認ください。

お知らせ

パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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