スポーツファーマシスト清水雅之氏「日本でもうっかりドーピングが無くならない」ニュースワイドSAKIDORI

スポーツファーマシスト清水雅之氏「日本でもうっかりドーピングが無くならない」ニュースワイドSAKIDORI

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薬の専門知識でアスリートを守っている、静岡県島田市の合同会社「みどりや薬局」の薬剤師でスポーツファーマシストの清水雅之氏が、22日、文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」内『応援! ユニバーサルスポーツ』に電話出演。スポーツファーマシストの役割、世界と日本のドーピングの状況について語った。

そもそもドーピングとは、「スポーツにおいて禁止されている物質や方法によって競技能力を高め、意図的に自分だけが優位に立ち、勝利を得ようとする行為」(公益財団法人「日本アンチドーピング機構」HPより)である。日本で広く知れ渡るようになったのは、1988年のソウルオリンピック陸上100mで、カナダのベン・ジョンソンが世界新記録をマークして金メダルを獲り、その後、ドーピング検査で陽性が出て(筋肉増強剤の使用)、金メダルをはく奪されたあの事件からではないだろうか。ドーピング(doping)・・・スペルではなく、音の響きが何かいかがわしさを漂わせる独特のワードである。

さて、ファーマシスト(pharmacist)とは薬剤師だ。スポーツファーマシストを直訳するとスポーツ薬剤師??

斉藤キャスターが、スポーツファーマシストについて訊くと、清水氏は「ドーピング防止に関する専門知識を持った薬剤師で、アスリートからのドーピング相談、ドーピング研修、学校教育現場での医薬品の適正使用の啓発を行っている」と答えた。補足だが、全国には1万人以上のスポーツファーマシストがいるとのこと。清水氏以外にも、多くのスポーツファーマシストが見えないところで日本のアスリートを支えているのだ。そしてドーピングといえば、北京オリンピックでも大きく取り上げられた。フィギュアスケートのロシアのワリエワ選手の検体から去年12月、狭心症や心筋梗塞の治療で用いられる禁止薬物「トリメタジジン」の陽性反応が出ている。
松井アナがこの「トリメタジジン」について清水氏に問うと「ドーピングの禁止物質のカテゴリーとしては、大会中でもそうでない時でも、常時禁止される薬で、心臓の循環機能を改善し、持久力が強化される。1回でも飲むと(尿に)反応が出て、意図的でも、何かの間違いで飲んでしまっても引っかかる薬」と紹介した。

斉藤が「これまでパラリンピックに出場したアスリートや大会関係者から、薬の服用について、何か相談を受けたことがあるか?」と尋ねると、清水氏は、「今回はコロナ渦という事もあり、アスリートからの直接の相談はなかったが、東京パラリンピック、北京パラリンピックの現場に帯同する医師から、薬やテーピング等の使用についてドーピングの規則に問題ないかとの相談を受けた」と教えてくれた。斉藤が「テーピングでもドーピングになるのか?」と振ると、清水氏は「基本的にテーピングでドーピングになることはないが、様々なところでドーピングの禁止物質が隠れていることがあるので、医師はそれを心配して連絡をくれたのだろう」と振り返っていた。放送外で、清水氏は「リオデジャネイロパラリンピックの際は、とあるパラアスリートに対して、現地に持参する薬の取り揃えをアンチドーピングの証明書とともに作らせてもらった。その選手とはじっくりと面談させていただき、痛み止め、化膿止めの塗り薬、下痢止め薬、胃薬、風邪薬等、私たちも海外旅行に持って行きたくなるような薬をドーピング禁止物質に該当しないものを証明書ともに取り揃えた」と教えてくれた。

障害を抱えるパラアスリートは、日常で薬を服用する機会が多い。松井が「今の季節に注意したいことは何か?」と訊くと、清水氏は「パラアスリートに限らず、今は、風邪や花粉症の薬が良く出る時季と重なり、その中にドーピング禁止物質が含まれていることがあり注意が必要。風邪薬、ドラッグストアに売っている薬にも禁止物質が含まれているし、お医者さんが出す処方薬、例えば薬剤の貼り薬にもドーピング違反の事例が出ている」と明かした。アスリートは、自分が使用する薬について、常に「これは使っても大丈夫か」あるいは「もしどうしても使わないといけない場合はスポーツファーマシストに相談しなければならない」という意識を持たないといけないのだ。


斉藤が「世界と日本のドーピングの状況について、どんな風に感じているか?」と訊くと、清水氏は「世界ではまだまだ意図的なドーピングが多いが、日本はクリーンスポーツの意識が高く、ドーピングで引っかかるケースとしては、病気で飲む薬やサプリメントによるもので、意図的ではない『うっかりドーピング』が未だに無くならないのが状況」と説明した。
最後に斉藤が「清水さんは、うっかりドーピングを防ぐカードゲーム『ドーピングガーディアン』の生みの親でもあるが、ゲームをすることで、どんな風に知識が高まるか?」と振ると、清水氏は「ドーピングのルールはすごく化学的で、法律的で、学ぼうとすると難しい。カードゲームでなら引っかかってもいい。どのような行為がうっかりドーピングを招いてしまい、どうすれば逆に防ぐことが出来るのかをスポーツファーマストの活用とともにゲームで疑似体験できる」と紹介した。清水氏をはじめ、大勢のスポーツファーマシストは、今やアスリートと一心同体ではないだろうか。遠くから力強くアスリートを守る人たちもいるのだ。

(構成・後藤)

『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI』は平日午後3時30分~5時50分、文化放送(AM1134KHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。
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