東京大学経済学部 柳川範之教授:孫子も知っていた「アンラーン」とは
30年を超えるコンサルタント歴の中で8000社を超える企業を見てきたNIコンサルティング代表の長尾一洋さんが、あるときは「孫子」の智恵を応用し、またあるときは「経営者としてのこれまでの経験」をもとにビジネスシーンでの課題をコンサルティングしていく番組・文化放送「孫子であきない話」(月19:30~20:00)
2月21日(月)は、1月に新刊『Unlearn(アンラーン)人生100年時代の新しい「学び」』(為末大さんとの共著・日経BP)を出版された東京大学経済学部教授・柳川範之さんにお越しいただきました。
「アンラーン(Unlearn)」という言葉を初めて耳にした方も多いのではないでしょうか。言葉だけを聴くと学びの否定(学ばない)のように思われがちですが、そうじゃなくてある種の「新しい学び方・考え方」のことだと語る柳川先生。長年の友人でもある為末大さんといろんなことを語り合う中で、アンラーンの考え方を広めることが現在の閉塞気味の日本社会をよき方向に動かすことにつながるのではないかと強く感じたそうです。
通常、「学び」といえば、知識や情報をインプットして積み上げていくことだと考えがちです。その努力はもちろんとても大切なことではありますが、人の頭の中は次第に固定観念にとらわれて凝り固まってしまい、発想はパターン化していきます。そうなると、いくら新しいことを学んでもなかなかしみこんでいかなくなる。せっかく新しい体験をしても、そこから学びを得ることができなくなってしまい、成長が止まってしまいます。
たとえば「今までは~だった」と、すぐに前例を持ちだしてみたり、「~するのが当然だよね」と「当り前」にとらわれてみたり。そういう口ぐせがある人は、頭の中の発想パターンが固定化しているサインです。「今まで」のやり方が本当に今回も有効なのか、「当然だ」と思い込んでいることは、ほんとうに常に真実なのか。もしかすると過去の成功体験にとらわれすぎて、未来の可能性を狭めてしまっているかもしれません。
そんなふうに知らず知らずのうちについた自分のクセや思い込み、パターン化にまずは気づくこと。日々の仕事はパターンでこなすからこそ効率よく進むというのも事実なので、すべてのパターンを否定するわけではありません。大事なのは、「パターン化している」ということに自覚的であり、いざとなったらそれを外すことができるという姿勢です。アンラーンは、出来上がってしまった「型」をいったん壊して、自分の経験や学びをもっと活かせるように新しい形につくりかえていくための技術でもあります。
ここで、孫子兵法家でもある番組パーソナリティの長尾さんから驚きの発言が。
「アンラーンという考え方、2500年前に孫子も言っているんです!」
「孫子曰く 兵を形(あらわ)すの極みは無形に至る」
これは、過去の勝ちパターンにとらわれてはいけないという教えで、「無形」というのは、まさにアンラーンが目指す境地と通じます。
人生100年時代の今、いくつになっても仕事の幅を広げ、人生を豊かに生きていくためには「より自覚的に学びの姿勢を持つことが大事だ」と、柳川先生。学びといっても難しい話ではなくて、「原動力は好奇心。自分が面白いポイントを探して、それをつきつめていけばいい」とニッコリ。先生も実践されているという「どんなことの中にも自分がワクワクできるポイントを探してみる」というのは、早速やってみたくなりますね。
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