パラ競泳の富田宇宙「スペインの暮らしは素晴らしいが、言葉に苦戦」~ニュースワイドSAKIDORI
東京パラリンピックの競泳・視覚障害のクラスで2つの銀メダルと1つの銅メダルを獲得した富田宇宙選手が、11日、文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」内『応援!ユニバーサルスポーツ』に電話出演。去年11月から自身の競技力向上のため、スペインに滞在しているが、所用で一時帰国している今、近況を語った。
去年10月5日、12日にスタジオ出演した富田は、11月からスペインに行くことを心待ちしていた。その理由は、スペインでは視覚障害者が社会でとても活躍しやすい国と言われているから。リオデジャネイロ・パラリンピックで富田と同じ全盲のクラスのバタフライで金メダルを獲った選手もスペイン出身。ブラインドのサーフィンの世界チャンピオンもスペイン出身。パラリンピックにおける、視覚障害者の割合もスペインは高い。そういった世の中、社会の中で、富田は自分の競技力を高めていきたいと話していた。斉藤キャスターが「スペインでの暮らし」について訊くと、富田は「素晴らしい。ごはんが美味しいし、気候もいい。文化が(日本とは)違う。電車を乗る時も周りの方々が(自分を)捕まえに来る勢いでサポートしてくれる。視覚障害者がポイントやスタンプを与えているのかなというくらい、みな、我先にサポートしてくれる。カルチャーの違いをひしひしと感じる」と充実している様子だった。
5月のジャパンパラ競技大会、この夏の東京パラリンピック、そして前回の放送で富田や視覚障害の水泳に関心を深めた松井アナが、「スペインでは、視覚障害者をサポートする雰囲気が育まれているのか」と尋ねると、富田は「それが当たり前なのだろう。オープンマインドというか、人と人との距離がすごく近いので、視覚障害者、外国人として見るのではなく、分け隔てなく手を差し伸べることが自然と出来るのではないか」と伝えた。
斉藤が「スペインのアンダルシアで、急遽、競泳のレースに出場することもあったとか?」と振ると、富田は「急に出る?とチームのマネージャーから言われ、慌てて飛んで行った。せっかくスペインに来たので、積極的に交流しようと。他の競泳の選手とは、資金面や活動していく上での課題をいろいろと共有した。スペインは日本より進んでいる部分もあれば、難しい部分もあるので、ディスカッションしながら、今後、パラリンピックがこんな風に発展すれば、僕らもこういう風に活動できるよねという話をたくさんした」と、日常会話ではなく、かなり深いところまで議論したことを教えてくれた。知り合って日が浅い海外の選手と、さりげなくこのレベルまで話せる富田は日本のスポーツ界における至宝ではないだろうか。また、「(選手同士)お互いにどういった環境で練習しているのか、普段の練習のことに興味が向く。日本文化についても聞かれる」そうだ。
松井が「言葉は通じたのか?」と訊くと、富田は「当初、スペイン語が話せるサポートの方がいた時は、他の選手と会話ができたが、その方が帰国してからは、私はスペイン語が話せないし、英語でどうにかしている。でも、スペインは思った以上に英語が通じない。とにかく笑顔とグラシアス(ありがとう)で乗り切っている」と笑っていた。さらに富田は前回の放送で、2028年のロサンゼルスパラリンピックで、もしサーフィンが採用されれば挑戦してみたいと話していた。松井は「スペインでサーフィンをする機会は?」と問うと、富田は「やはり言葉も話せないし、毎日生きているだけで精一杯。なかなか水泳以外のことをやろうという余裕は出てこない。観光や食事には行くけど」と苦笑。富田といえば、どんな時も心に余裕があって、冷静であることが特長の1つだが、斉藤は富田の「今の余裕の無さ」にツッコミを入れ、富田も認めていた。富田は「目も見えず、言葉も通じないで1人でスペインに来ているので、何とか練習と日常生活は確保できて来たが、サーフィンをやろうとしても言葉が通じず、そのまま海に出ても危ないので」と返し、サーフィンについては時期尚早であることを明るく訴えていた。
オミクロン株の感染拡大により、今は日本に残ることを選んだが、3月には再びスペインに渡り、5月の世界選手権に向けてトレーニングを積む富田は、進取の精神に富んでいる。スペイン語に慣れてくれば、自らの世界と可能性を広げていくことだろう。定期的に話を訊きたい男だ。
(構成・後藤)
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