「水銀に罪はない。全て、取り扱う人間の問題」 ~100%リサイクルで環境に貢献するオンリーワン企業
30年を超えるコンサルタント歴の中で8000社を超える企業を見てきたNIコンサルティング代表の長尾一洋さんが、あるときは「孫子」の智恵を応用し、またあるときは「経営者としてのこれまでの経験」をもとにビジネスシーンでの課題をコンサルティングしていく番組・文化放送「孫子であきない話」(月19:30~20:00)
11月29日(月)は、日本で唯一の水銀リサイクル処理企業、野村興産株式会社代表取締役の藤原 悌さんにお越しいただきました。
日本ではまさにオンリーワン、世界を見渡しても5社ほどしかないという水銀リサイクル処理を行う野村興産株式会社。水銀と聞くと、どうしても水俣で起こった公害とその被害の大きさを思ってネガティブな反応になりがちだが、実は人間と水銀の歴史は非常に長いんです、と藤原社長。
水銀は地球上の比較的どこにでもある物質で、特長として「金属の中で唯一、常温で液体」「比重が重い(水の13.5倍)」「沸点が低い(365℃)」ということがあり、かつ、防腐作用や殺菌効果があります。そういう特長を活かして、古くから薬やおしろいなどの化粧品に使われてきました。また、硫黄と結びついてできる硫化水銀の赤い色は壁画や神社の鳥居などの塗料としても、大変重宝されています。たとえば、2016年に60回目の遷宮が行われた奈良の春日大社の本殿には硫化水銀を用いた「朱」という塗料が使われているそうです。
野村興産は水銀リサイクル処理を行う企業ですが、前身の野村鉱業は北海道の北見市で発見された水銀の大鉱床イトムカ(アイヌ語で「光り輝く水」の意)での水銀採取事業から始まりました。ピーク時には年間数千トンの水銀が様々な用途に使われていたそうですが、昭和30年代に水俣で起こったメチル水銀化合物による被害(水俣病)をきっかけに、水銀を使わない方向へと世の中が動きました。昭和48年に野村鉱業は会社をたたみ、その設備と人を引き継いで、「水銀廃棄物処理」を一手に引き受ける野村興産が設立、次第に取り扱う範囲を広げ、資源の100%リサイクルにも挑みながら現在に至ります。
「便利だと散々使われて、その結果公害を引き起こしてしまったのは水銀が悪いんじゃなくて取り扱う人間に責任がある」と、藤原社長。同様のことが、プラスチックでも起こっている。プラスチックごみが海の汚染を引き起こしているという問題も、プラスチックが悪いんじゃなくて、やはりそれを扱う人間の問題。「物質との付き合い方」を人間はもっとちゃんと考えるべきだというご指摘に、おおいに納得。背筋がピンと伸びました。
2017年8月には「水銀に関する水俣条約」が発効、地球規模の水銀および水銀化合物による汚染や、それによって引き起こされる健康や環境の被害を防ぐために世界が動き始めました。そんな中で、野村興産はリーディングカンパニーとして環境省やJICAと組んで東南アジアなどへの技術供与などを行っています。
「先達たちの経験や技術の積み重ねのおかげで今がある。地球環境を維持していくための非常に重要な役割をこれからも継続していきたい」と、最後に藤原社長からの熱い志を伺いました。
おぼろげにしか知らなかった水銀のことを学ぶと同時に、地球の資源を循環させていくという重要な課題について考えさせられたひとときでした。
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