『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 前・国家安全保障局長の北村滋さんに聞く。日本って結局、どれぐらい安全な国なんですか?!(おとなライフ・アカデミーWEB)
今を楽しく生きるオトナ世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。
この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2021年11月6日の放送は、ゲストに前国家安全保障局長、内閣特別顧問の北村滋さんをお招きしました。白熱した放送の様子を、前・後編でご紹介します。
前編となる今回のテーマは、ズバリ「日本が国家安全を考える意義」。日本は安全な国だと多くの人は考えていますが、国家安全保障局長として、長年日本を見つめてきた北村さんには、どんな景色が見えているのでしょうか。
後編はこちら:趣味はスペアリブ作り?! 前・国家安全保障局長、北村滋さんのプライベートな一面に迫る(おとなライフ・アカデミーWEB)
北村滋さんプロフィール
1956年生まれ、東京都出身。私立開成高校、東京大学法学部を経て、1980年、警察庁入庁。フランス国立行政学院、在フランス大使館一等書記官などを経験。徳島県警本部長、兵庫県警本部長などを歴任後、2011年内閣情報官に就任。2019年、国家安全保障局長、内閣特別顧問。今年7月に退官。現在、北村エコノミックセキュリティ代表。
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9月に出版された始めての書籍が、たちまち重版
鈴木 北村さんは、今年(2021年)9月に『情報と国家 憲政史上最長の政権を支えたインテリジェンスの原点』(中央公論新社)を上梓されました。
たちまち重版(現在、4版)とのことで。
北村 ありがとうございます。
大垣 500ページを超える大著で、もはや、日本のインテリジェンス(情報)にまつわる教科書といってもいいような。ここまで体型的にインテリジェンスについて書かれた日本語の書籍は、これまでなかったように思います。
北村 そうかもしれません。
インテリジェンス=情報の扱い方で、国が左右される
残間 「インテリジェンス」という言葉がこの本の中でキーワードとして扱われていますが、この単語は、日常的には「知性」「知能」といった意味で使われることも多く、「情報」という訳をパッと思いつく人は少ないかもしれません。
大垣 「企業インテリジェンス」という言葉はありますが・・・。あまり日本語として一般に馴染んでいる印象はありません。
北村 確かに、そうかもしれません。ただ、たとえば戦国時代の「隠密」なんかは、情報を扱う職業として重宝されていたわけですよね。国内的な動きではありますが。
大垣 確かに、表現は色々でも、情報の扱い方が政治を動かしているのは同じですね。
安全保障政策の方針を決定する場をまとめあげる
残間 実はわたし、北村さんとは長いつきあいなのに、仕事の内容はよく知らないんです。
内閣情報官のほうが国家安全保障局長よりも偉いんじゃないかと思っていたほどで。北村さんから「局長になった」と聞いたとき「降格したの?」と思ったり・・・(笑)。
国家安全保障局長って、どんな仕事なんですか。スパイを探すとか?
大垣 また、そんなことを言って・・・(笑)。
北村 基本的には「国家安全保障会議」という、国家安全保障の重要事項を審議する機関の、いわば事務局長です。
「国家安全保障会議」では、月2回程度「4大臣会合」と呼ばれる会議を開くのですが、その準備がメインの職務内容でしたね。
総理、官房長官、防衛大臣、外務大臣の4大臣で、安全保障に関する政策を協議して、対外政策の基本的な方向性を決定していました。
前政権では副総理がいらっしゃったので、副総理も合わせて5大臣でしたが。
国民の安全を守るため、8年前に作られた機関
大垣 国家安全保障局が設置されたのは案外最近ですよね。
北村 はい。2014年に安倍内閣下で設置されました。
それまでは、外務省と防衛省がそれぞれバラバラに動いていたんです。
国民の安全に直接関わることでもあり、なるべく迅速に意思決定ができるようにという背景がありました。
自衛隊は1日3回のペースで、領空を守るための緊急発進をしている?!
残間 私たちの暮らしで一番身近な「安全保障」にはどんなものがありますか。
北村 たとえば、尖閣諸島の問題があります。
尖閣諸島の周辺海域は、ほとんど毎日、中国海警と、海上保安庁の船舶が睨み合っている状況が続いています。
無断で日本の領空を飛んでいる飛行機に対して、警告しても進路を変えない場合、自衛隊が緊急発進をすることがあります。
この緊急発進のことを「スクランブル」と呼ぶのですが、2019年に行われたスクランブルの回数は約1000弱。
大垣 1日3回のペースですか。思ったよりもずっと多いですね。
北村 我が国は安全だと思われている方は多いと思いますが、軍事的に非常に緊張感の高い地域に位置しているのもまた現実だと思います。
暮らしを豊かにするための先端技術が、むしろ暮らしを脅かす武器になる時代
大垣 身近な安全保障という話で言えば、以前、筑波大学の山海嘉之先生が、人体密着型ロボットスーツの「HAL」を実用化させるために会社を作られたとき、先生にお話をうかがう機会があったんです。
でも、先生の会社の作り方が、なんとなく「変な感じ」がしたんです。
たとえば、乗っ取りができないような仕組みの作り方であるとか・・・。普通の会社とは違って、どう言えばいいのかな。気を使いすぎていると言いますか。
先生に話を聞いてみると、実はロボットスーツに一番興味を示したのは、介護の業界ではなくて軍なんだそうです。
100キロ近いものを、簡単に動かすことができるというので。
身近にこういうことが起こりうるんだとかなり驚きましたが。
北村 そうですね。先端技術が標的になる事件は非常に多いです。
一方、国内の業者や企業が、先端技術を使った商品を、あえて性能を低く見せて輸出してしまうこともあるんです。
残間 安全保障の問題はあっても、利益を出したい企業や人々の思惑があるとすると・・・なかなか一筋縄ではいかない問題ですね。
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後編では、北村さんの素顔に迫ります。
後編はこちら:趣味はスペアリブ作り?! 前・国家安全保障局長、北村滋さんのプライベートな一面に迫る(おとなライフ・アカデミーWEB)
(※記事前編のリンク)
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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