『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 一番安心できる保険を教えてください! アクチュアリー(保険数理の専門家)の山内恒人さんに学ぶ、保険との付き合い方(おとなライフ・アカデミーWEB)
今を楽しく生きるオトナ世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。
この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2021年9月4日の放送は、ゲストに、日本アクチュアリー会正会員・慶應義塾大学特任教授の山内恒人さんをお招きしました。放送の様子を、前・後編でお届けしています。
アクチュアリーとは、保険や年金などの保険商品をつくったり決算を司る仕事をする人たちです。後編となる今回は、「保険って、結局何がオススメなの?!」という直球な質問にお答えいただいています。
前編はこちら:月々の保険料って、誰がどうやって決めてるの? アクチュアリー(保険数理の専門家)の山内恒人さんに学ぶ、保険商品のウラ・オモテ(おとなライフ・アカデミーWEB)
入院給付金の出る商品は、60代で加入を検討してみて
残間 最近、シニア層に向けた保険商品って充実してきていますよね。「85歳まで加入可能」なんて商品もあるようですが、結局どんな保険を選ぶのがいいんでしょうか。
山内 その人が生命保険に何を求めるかで変わってくるとは思いますが・・・。
個人的には、生命保険であればやはり「保障」を買うのが一番だとは思います。
残間 入院すると給付金が出る保険がありますよね。
山内 個人的には、悪くはないと思いますよ。
私の母親は2年前に亡くなったんですが、入院期間が長くなってくると、一時金が欲しくなるので入院給付が入るのは嬉しいですよね。だから、高齢者にとっても医療系の商品は悪くないと思います。
大垣 そうなんですか。高齢になってからの入院給付って、保険料が高くなりそうなイメージがありますが・・・。
山内 確かに、70歳、80歳になってから加入すると高いですね。60歳ぐらいから加入して備えておけば、悪くないと思いますよ。
民間の介護保険はあくまでサポートと捉えるべきかも
大垣 シニア層に向けた商品ということでいうと、民間の介護保険はどうでしょう。最近は「要介護認定を受けると給付金が降りる」というような商品がチラホラ出てきましたね。
山内 うーん。
私の母親は、最後は要介護5で、自宅で介護をしたんです。そのとき痛感しましたが、介護で重要なのって、お金じゃなくて、人手なんですよね。
残間 それはそうですね。
大垣 給付金が出ても「安心」につながりづらいんですね。
たとえば、「要介護認定を受けるとヘルパーさんが派遣される保険」といった保険商品はどうでしょう。
山内 そうなると、現金給付よりももっと多額の負担が保険会社にかかりますからね・・・。
そもそも、生命保険と違って、介護って保険商品が作りづらいんですよ。先が読めない上に、これからいくら、どのぐらい費用がかかるのか分からない。
大垣 国の制度もどんどん変わっていきますしね。
山内 私は、日本政府の介護保険ってよくできていると思いますよ。私自身も、政府の介護保険がなければ母の介護は難しかっただろうなと思います。
保険商品に触れる機会が少なくなってきている
残間 若い世代の保険はどうですか。周りの20代を見ていると、あまり保険をかけている若者がいないように思いますが。
山内 そもそも、保険に触れるチャンスが最近はないんですよね。若い人たちが保険というものに触れるチャンスをもっとたくさん作るべきだと思います。
昭和世代の人たちは、社会人になりたての頃、いわゆる「保険のおばちゃん」が会社に来て勧誘されて生命保険に加入した方も多いですよね。
大垣 ああ、ありましたね。
山内 若いころ昼休みのわずかな時間を使って会社の机で寝ているところで、背中をトントンと叩かれてね(笑)。わけもわからず保険に加入していました。
今は社外の人間が会社に入って来ること自体がそもそも難しいですから、会社で保険に加入することってあまりないのかもしれません。
残間 私の周りでは、「無理矢理加入させられたけれど、結果的にいい保険だった」と後から喜んでいる人も大勢いましたよ。
山内 そうですよね。わけわからなかったけれど、そうやって保険に触れてきたんですね。そして、そんなに悪い話でもなかった。
大垣 当時は、利回りも高かったですしね。
目先の損得よりも、100年のタイムスパンで考える
残間 今、若い人でも、外資系保険会社の商品を購入する人は多いように思います。
山内 かっこいいですからね、外資(笑)。でもやっぱり日本の生命保険は昔からある生命保険会社が伝統を背負っていてやっているんで、潰れずにやっているというのは、それはそれで素晴らしいんです。
ただ、若い人と話していると、保険を契約して、どれぐらい損をしたとか、得をしたとか、そういう「勝った負けたという」話を好んでしているように思うんです。
前編で申し上げたように、保険は100年という長いタイムスパンを考える商品です。
だから、100年間いつでも給付が受けられる安心感を考えたら、一時的な勝ち負けは関係ないじゃないか、と思いますけどね。
残間 確かに。保険商品と株の一番の違いはそこかもしれませんね。
鈴木 まだまだお話をうかがいたいところですが、お時間となってしまいました。
きょうは、生命保険数学の専門家、山内恒人さんにお話をうかがいました。
山内さん、ありがとうございました。
一同 ありがとうございました。
お知らせ 山内さんのCDが発売中です
アクチュアリーである一方、音楽プロデューサーとしての顔も持つ山内さん。
プロデュースされたCDが、全国で発売中です。
アイヴズ: ヴァイオリンとピアノのための4つのソナタ
2019年に発売されたこのCDは、第75回文化庁芸術祭レコード部門で優秀賞も受賞。
アメリカを代表する作曲家チャールズ・アイヴズの作品を、甲斐史子さん(ヴァイオリン)、大須賀かおりさん(ピアノ)が演奏しています。
作曲をしたチャールズ・アイヴズは、存命中は作曲家としてはほとんど認知されず、なんと生命保険の代理店(!)を設立してビジネスマンとしてニューヨークで勇名をはせていました。
大垣さんも「私もクラシックは好きですが、アイヴズは本当に通なんです」とコメントしています。
山内さんよりコメントをいただきました!
アイヴズが作曲家として認知されたのは70代になってからです。若いときから、演奏されるあてもなく作曲を続け、歌曲や管弦楽曲も多数作曲しましたが、演奏される機会は全くありませんでした。
後年認知され始めましたが、交響曲第2番の初演は作曲されてから50年後になってレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルによりなされ、72歳の時に初演された交響曲第3番ではピューリッツァー賞を受賞しています。
(ただし、作曲家本人は「賞なんてものはガキが欲しがるものだ、自分はもうすっかり大人だからな」と言って授賞式には登場しませんでした、でも賞金はチャッカリもらって初演をしてくれたルー・ハリソンに大半を渡しています。)
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アクチュアリーという仕事について語っていただいた、記事前編はこちらからどうぞ。
前編はこちら:月々の保険料って、誰がどうやって決めてるの? アクチュアリー(保険数理の専門家)の山内恒人さんに学ぶ、保険商品のウラ・オモテ(おとなライフ・アカデミーWEB)
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…