『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 月々の保険料って、誰がどうやって決めてるの? アクチュアリー(保険数理の専門家)の山内恒人さんに学ぶ、保険商品のウラ・オモテ(おとなライフ・アカデミーWEB)
今を楽しく生きるオトナ世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。
この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2021年9月4日の放送は、ゲストに、アクチュアリー(保険数理の専門家)で慶應義塾大学特任教授の山内恒人さんをお招きしました。放送の様子を、前・後編でお届けしています。
アクチュアリーとは、保険や年金などの商品開発や決算などの仕事をする専門職集団の総称です。司法試験よりも難しいともいわれる超難関の資格職です。ここでしか聞けない保険商品の裏側を、たっぷりうかがいました。
後編はこちら:一番安心できる保険を教えてください! 保険数理人の山内恒人さんに学ぶ、保険との付き合い方(おとなライフ・アカデミーWEB)
山内恒人さん プロフィール
1958年、東京・三鷹生まれ。日本アクチュアリー会正会員。慶應義塾大学大学院修士課程終了後、ソニープレデンシャル生命保険、アクサ生命保険、サムスン生命などを経て、2016年から慶應義塾大学理工学研究科の特任教授。
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生命保険の保険料って、誰がどうやって決めているの?
鈴木 本日のゲストは山内恒人さんです。よろしくお願いします。
山内 よろしくお願いします。
残間 山内さんはアクチュアリー(保険数理の専門家)として、生命保険数学をご専門になさっていますね。アクチュアリーって、あまり耳慣れない言葉ですが・・・。
山内 そうですね。アクチュアリーは、主に保険会社や年金の会社で販売する保険や年金の商品をつくったり決算を司る仕事をする人たちです。
大垣 保険や年金にまつわる計算って、ものすごく難しいんですよね。
アクチュアリーの資格試験って、合格するのが司法試験より難しいともいわれてますし。
私も以前保険会社に勤めていましたが、あれほど難解な数学の内容を扱う職業はなかなかないと思います。
残間 そうなんですか。
山内 実は保険会社って、商品作りや経営のために、大学から数学科や理工系の学生を定期的に採用するんですよ。ビジネスの根幹にかなり高度な数学があるんです。
社会の変化に応じて、生命保険の計算方法も変わる?
残間 長寿の時代ですが、生命保険も社会の変化に応じて、計算の内容が変わったりするんですか。
山内 いえ、計算のための枠組みは変わりません。
実は、アクチュアリーって、200年、300年と続いてきた、由緒ある職業なんです。
難解と言われる仕事ですが、実は保険数理の計算の原理原則はすごく単純なんですよ。
たとえば人の生死を扱う生命保険商品の場合は、計算に用いる素材は生命表と金利、事業費だけです。
大垣 原理的には、保険料(お客様が支払うお金)と、保険金(保険会社が支払うお金)の元利合計が同じになるように計算されたものが保険商品・・・と言ってしまっていいんでしょうか。
山内 結局は、そうですね。
数学とは、国や時代がどれだけ違っても、同じ解釈ができる学問
山内 数学のいいところは、数式の解釈が何百年経っても変わらないところです。
たとえば、残間さんがおっしゃったように、今は長寿の時代。「人生100年時代」なんて言いますよね。
これってつまり、いま生命保険の契約をしたら、保険金を支払う頃には100年が経っている可能性もあるということです。
大垣 今から100年前は1921年、大正時代ですが、その頃の契約について今確認するようなイメージですか。
山内 そうなんです。たとえ記録が残っていたとしても、それが文章だった場合、解釈の誤りが出てきてしまう。
ところが数式って、解釈の間違いが起こらない。確定するんですね。人や文化、社会が変わっても、変わらない「意味」を残せるわけです。
生命保険、会社ごとに保険料が違うのはなぜ?
大垣 もしも生命保険の保険料の決め方がそんなにシンプルなのだとすると、保険会社ごとに保険料が違うのはなぜなんでしょう。
山内 先ほど、生命保険会社が保険料や保険金の算定に使うのは、生命表と金利、事業費の三つだと申し上げました。
保険会社によって金額の差が出てくるのは、主に「事業費」をどう設定するかなんです。保険料はここでかなり差が出てきます。
そして安全メに色んな計算項目を設定するんですが、これは要するに「自分の会社を100年間潰れさせないため」にそうするんです。
大垣 今契約して、100年後に亡くなったら保険金が支払われるというのはつまり、「100年後も保険会社が存続している」ということですもんね。
鈴木 商店で考えると、100年続いているお店って、本当に老舗ですよね。
山内 ですから、かなり保守的に保険料は見積もるんです。
大垣 私は銀行から生命保険会社に転職したとき、保険会社の事業費が、銀行と比べて桁違いに多かったので驚いた記憶があります(笑)。
山内 昔からある生命保険会社なんかだと、それこそ100年前から続く「先祖伝来」のような事業費もあったりするんですよね。いわば因習もあって、事業費を大きく変えることはしないんです。
大垣 最近できた生命保険会社さんの保険料が比較的安いのは、そういう因習がないという裏側があるんですね。
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後編では「シニア世代におすすめの保険を教えてください」という直球の質問にお答えいただきました。
後編はこちら:一番安心できる保険を教えてください! 保険数理人の山内恒人さんに学ぶ、保険との付き合い方(おとなライフ・アカデミーWEB)
お知らせ 山内さんのCDが発売中です
アクチュアリーである一方、音楽プロデューサーとしての顔も持つ山内さん。
プロデュースされたCDが、全国で発売中です。
アイヴズ: ヴァイオリンとピアノのための4つのソナタ
2019年に発売されたこのCDは、第75回文化庁芸術祭レコード部門で優秀賞も受賞。
アメリカを代表する作曲家チャールズ・アイヴズの作品を、甲斐史子さん(ヴァイオリン)、大須賀かおりさん(ピアノ)が演奏しています。
作曲をしたチャールズ・アイヴズは、存命中は作曲家としてはほとんど認知されず、なんと生命保険の代理店(!)を設立してビジネスマンとしてニューヨークで勇名をはせていました。
大垣さんも「私もクラシックは好きですが、アイヴズは本当に通なんです」とコメントしています。
山内さんよりコメントをいただきました!
アイヴズが作曲家として認知されたのは70代になってからです。若いときから、演奏されるあてもなく作曲を続け、歌曲や管弦楽曲も多数作曲しましたが、演奏される機会は全くありませんでした。
後年認知され始めましたが、交響曲第2番の初演は作曲されてから50年後になってレナード・バーンスタイン指揮ニューヨーク・フィルによりなされ、72歳の時に初演された交響曲第3番ではピューリッツァー賞を受賞しています。
(ただし、作曲家本人は「賞なんてものはガキが欲しがるものだ、自分はもうすっかり大人だからな」と言って授賞式には登場しませんでした、でも賞金はチャッカリもらって初演をしてくれたルー・ハリソンに大半を渡しています。)
お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。
住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。
制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。
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この記事の番組情報
大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ
土 6:25~6:50
楽しいセカンドライフを送るためのご提案などがたっぷり! 金融・住宅のプロフェッショナル大垣尚司と、フリープロデューサー残間里江子が 大人の目線でお届けします。…