ライター荒木美晴さん「東京パラリンピックは安心して取材できた」 ~11月2日ニュースワイドSAKIDORI

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東京パラリンピックを取材した障害者スポーツ専門サイト「MAスポーツ」の代表者、荒木美晴さんが、2日、文化放送「斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI!」内『応援!ユニバーサルスポーツ』に電話出演。制約の多い中で、長年取材する選手の金メダル獲得の瞬間に立ち会い、充実した日々を振り返った。

荒木さんは、シドニー大会からパラリンピックを取材している。今年に入って「応援!ユニバーサルスポーツ」で話していただくようになったのは、車いすテニスの国枝慎吾選手やクァードクラス(車いすテニスで手にも障害がある選手のクラス)について、番組としてもっと深く知りたかったことがきっかけ。パラスポーツを長く取材しているとある女性に、「車いすテニスに詳しいライターさんはいませんか?」と尋ねたら、「それなら、荒木さんね」とのことで、連絡すると二つ返事で引き受けてくれた。陸上や水泳など、国内の大きな大会でも荒木さんをしばしば見かける。5月のジャパンパラ水泳競技大会では、松井佐祐里アナと番組スタッフが顔と名前が一致しない選手がいて困っていると、荒木さんが助け舟を出してくれた。

 

東京パラリンピック閉幕から2ヵ月が経った。ライターの角度からあの大会を振り返ってもらいたく、今回、荒木さんに電話をつないだ。斉藤一美キャスターが「制約の多い大会だったが、何が大変でしたか?」と訊くと、荒木さんは「いつものパラリンピックと異なった点は、報道陣も専用のアプリを使った事前予約制だったこと。申請が許可された人しか入場できない。囲み取材のエリアに入れる記者の人数を制限する競技会場もあり、インタビューできない場面もあった。ただ、4日に1回はPCR検査をしていたし、そうした制限の中でも安心感を持って取材活動ができた」と振り返っていた。制限や制約のある中でも、しなやかに力強く現場に密着し、選手の生の声を拾うのがフリーランスのライターの真骨頂だ。

東京パラリンピックを取材した松井が「どの選手が印象に残りましたか?」と振ると、荒木さんは、まず、競泳の鈴木孝幸選手(34)を挙げた。鈴木は生まれつき右手の肘から先がなく、右脚は付け根から、左脚は太ももの半分から先がない。「鈴木選手は金メダルを獲った100m自由形をはじめ、エントリーした5種目でメダルを獲得した。前回のリオ大会では4位が最高だったが、イギリスを拠点に肉体改造に取り組み、今大会は出場した種目全てでメダルを獲ると公言していた。その言葉通り、有言実行の力強い泳ぎを見せてくれた。1本1本のレースに興奮した」と荒木さんはテンションを上げた。

 

もう1人、荒木さんが挙げたのが車いすテニスの国枝慎吾選手(37)だ。今大会、2大会ぶりにシングルスを制した。「国枝選手は決勝後のインタビューで『地元開催の重圧があった、大会直前は不調に陥っていた』ということを明かしたが、準々決勝で生涯のライバルというフランスのウーデ選手を破ったことで覚醒する。そこから決勝戦までは理想とした自分のプレーにたどりつき、涙の優勝となった。その2日後には渡米して全米オープンに出場し、優勝した。まさにキングの名にふさわしい活躍を見せてくれた」と、ここでも荒木さんのテンションが上がった。

 

一方で、メダルに届かなかったものの、見る者を感動させる選手がいる。それを松井が尋ねると、荒木さんは「車いすフェンシングの藤田道宣選手(34)に心を打たれた。藤田選手はフェンシングの名門、京都の平安高校で活躍。大学生の時に、頸椎損傷で車いす生活となり、車いすフェンシングに転向した。胸から下の感覚がなく、右手の握力はゼロ。出場選手の中で最も障害が重い方だったが、相手によって剣のサイズを変えたり、手と手をテーピングで固定するなど様々な工夫を凝らし自分よりも障害が軽い相手との勝負に挑んだ。フルーレ、エペともに予選敗退となったが、自分だけの戦い方を追求していく姿に感動したし、車いすフェンシングの奥深さを教えてくれた」と熱く伝えた。

 

他方、来年3月4日開幕の北京パラリンピックまで、あと4ヵ月しかない。その中で、先日、パラアイスホッケーの日本代表が、一時、出場の道が絶たれたものの、チャンスが出てきたことについて、斉藤が荒木さんに訊いてみると、「日本は9月の世界選手権Bプールで4位となった。(この時点で、日本は)上位3位までが出場できる最終予選の出場権を獲得できず、北京パラリンピックへの道が絶たれたが、開催国枠を持つ中国(世界選手権Bプール1位)が最終予選出場を辞退したため、日本は繰り上がって出場できることになった。最終予選は今月下旬ドイツで行われ、日本が6チーム中2位以内に入れば、北京パラリンピックに出場できる。是非、頑張ってほしい」と荒木さんはエールを送った。続けて斉藤が「行けそうですか?」と振ると、荒木さんは「そうですね、頑張ってほしいと思うが、最終予選は世界選手権Aプールの下位チームが出てくる。強豪ぞろいの大会になる」と付け加えた。

 

最後に、松井が東京パラリンピックで活躍した若い選手について訊くと、荒木さんは「新採用となったパラバドミントンの里見紗李奈選手(23)がシングルスとダブルスで2冠。世界選手権でも優勝しているが今大会も粘りと勝負強さを見せつけてくれた。そして19歳の梶原大暉選手は、シングルスで世界の強豪を次々に倒し、決勝では世界選手権4連覇中の韓国人選手を初めて破って金メダル!ダブルスでも銅メダルと躍動した。2人とも、これから追われる立場になるが、頑張ってほしい」と期待を込めた。

 

荒木さんをはじめ、今、パラスポーツの取材現場にいる多くの方々が、東京パラリンピック開催のずっと前から、パラスポーツの魅力を発信してきた。こうした方々がいるからこそ、競技や選手の魅力が引き出され、パラスポーツに関心を持つ人が増えて行く。そして大会の大小にかかわらず、現場では歴史や記録の証人になる。もう少し時間が経ったら、東京パラリンピック開催の意義やレガシーについても、ライターの皆さんに訊いてみたい。来週(9日)は、車いすバスケットボールに詳しいスポーツライター斎藤寿子さんに電話をつなぎ、東京パラリンピックで銀メダルを獲った車いすバスケ男子日本代表やドイツでプレーする香西宏昭、藤本怜央両選手の最新情報について伺う。

 

(構成 後藤)

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