『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』 水道管断水のニュースに「壊れゆく日本」を見る。未解決のまま放置されたインフラ整備の問題とは(おとなライフ・アカデミーWEB)

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今を楽しく生きるオトナ世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。

この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。

2021年10月30日は、水道管のメンテナンス問題について。大雨が起きると頻繁に「水道管破裂」のニュースが流れます。実はこれ、かなり根の深い問題でもあるそうですが・・・。

6万世帯が断水、橋が落ちる・・・。水道管の断水が怖いです!

今回の放送では、水道管の破裂についてメールをいただきました。

先日、水道管が破裂して6万世帯が断水というニュースがありました。
断水も困りますが、それよりも突然橋が落ちたというのが気になっています。
後からの調査で、橋のあちこちに細かいかけらがあったとのこと、
怖いですね。
家ではこのようなことは無いのでしょうか。
微妙に風に揺れる、軽量鉄骨の3階建ての家に住んでいるので、
急に壊れたらと思うと不安です。

(みずみちばしさん・横浜市鶴見区)

昨今、大雨のあとはかなりの頻度で、水道管が破裂したニュースが流れるようになってきましたね。

軽量鉄骨の家はとても頑丈なので、壊れる心配はあまりないですよ。
ただし、建てて20年を超えているとか、心配なことがある場合は、一度メーカーの方に来てもらって定期点検をしてもらえば、よりいっそう安心してお過ごしいただけると思います。

インフラのメンテナンスにかかる費用は、年間国家予算の約4倍?!

実は、今回のメールを読み、リスナーや読者の方に知っておいてほしいと思ったのは、日本の水道管や道路などのインフラが、全体にかなり老朽化してきていることです。

それも、総入れ替えをしないといけないようなレベルで老朽化しています。

道路・水道管の総入れ替えにかかる予算は400兆円近く。
2021年の国家予算が約106兆円ですから、約4倍ですね。

国の借金が1100兆円を超えている状態では、なかなか工事には踏み切れないというのが現状なのです。

アメリカでも同じ問題が起こっている

実は水道管の劣化については、40年ほど前のアメリカでも、深刻な問題として扱われてきた歴史があります。

1983年に出版され、アメリカで話題になった本に” America in Ruins “があります。日本語にすると「壊れかけのアメリカ」といったタイトルなんですが。

1940年代から50年代にかけて、アメリカは政治的・経済的にたいへんな繁栄の時代を迎えました。「パックス・アメリカーナ」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。
この頃、アメリカは国の全土にわたってインフラを整備しました。

しかし、そこから数十年が経過した80年代、インフラ類は老朽化し、一斉に寿命を迎えます。この問題を指摘したのが” America in Ruins “だったのです。

日本がインフラ整備を進め始めたのは、パックス・アメリカーナの20年ほどあと、高度経済成長期の頃です。
アメリカの状況を見れば、日本でも同じ問題が起こるのは分かっていたはずですが、対策は後手に回り続けています。

民営化や、公民連携の動きも出ていますが・・・

さて、「水道の運営を民営化すれば費用を安くあげられる」という意見もあります。実際、民営化にすると最初の頃は安くなるのですが、最終的には似たような費用に落ち着いてしまうんですよね。
民営化すればいいというものではないと思います。

それならと、民間と政府が協調する仕組みも考えられていますが、こちらも、うまく流れが作れているとは言い難い。

公民連携の仕組みは、欧米の事例を見ていても「見かけ上、国の借金が増えないようにしよう」という考えが強くて、根本的な解決には至っていないことが多いんですよね。

報道されなくなっても、問題がなくなったわけではない

老朽化の問題は、一時期メディアでよく取り上げられていたんですが、最近では報道の勢いも下火になってきています。

老朽化を止められない以上、いつかは何らかの対応を取らざるを得ないのですが・・・。生活に欠かせないものであるだけに、今後が気になる問題です。

そんなわけで今回は、水道の老朽化について考えました。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。金融商品などの利用や法制度については、必ず取扱金融機関のサイト等で最新の情報をご確認ください。

お知らせ

パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。

JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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