吉崎達彦氏「現職事務次官が政策論争にモノ申した件、私はこう読み解いた!」~10月12日「くにまるジャパン極」
財務省の矢野康治事務次官が今月発売の月刊「文藝春秋」に、最近の政策論争を「バラマキ合戦」などと指摘する寄稿をしたことについて、エコノミストの吉崎達彦氏は10月12日の「くにまるジャパン極」(文化放送)で矢野事務次官の発言の意図や、社会に与える影響などについて解説した。
野村アナ「矢野康治さんという現職の財務事務次官が、月刊『文藝春秋』にこういう寄稿をする。かなり気骨のある人だなという感じもするし、骨太の事を言っているように見えるわけですが、この時期にこれを書くってのは何なんだろう?と」
吉崎氏は矢野事務次官が一ツ橋大学の1年後輩であり、知り合いであることを前置きし、
吉崎氏「いや~まあ、彼らしいなという。ただ、彼自身財務省の中で自分が出世するとかはまったく思っていない人なんで、それもあって言いたいことを言い続けて来たわけですよね。この論文の中にも出てきますけども、公文書改ざん問題という、とんでもない不祥事を財務省は起こしていますよね。それから矢野さんは官房長をやっていた時に、福田前事務次官のセクハラ問題というのがあって、この時は彼が福田さんが途中で辞めたあとの事務次官代理を短期間務めたりもしているんで、天下の財務省がもうガタガタになってきたところで、もう普通の人事じゃ駄目だっていう理由で、彼にお鉢が回ってきたという風に思いますね。」
野村アナ「国家財政が大赤字ってことはリスナーの皆さんもよくご存じのことなんですけど、矢野事務次官がおっしゃっているのは、日本はまさにあのタイタニック号が氷山に向かって邁進しちゃってるんだと。タイタニック号と違うのは、日本の経済、財政は氷山にぶつかることはみんなわかってんじゃないの。このまま氷山にぶつかっていいのかという警鐘を鳴らしたというところから具体論に入っていますが。」
吉崎氏「そこをまず突っ込むのであれば『貴方はオオカミ少年じゃないですか?』というのが普通の攻め方。矢野さんという方はかつて「ワニの口」という非常に有名なフレーズを作った。「ワニの口」とは、歳出が上あごで、歳入が下あごになっているから開く一方だ。財政破綻するって言い始めたのは1998年ぐらいの話なんです。それからもう20年以上経っているんだけども、むしろ金利は下がっているじゃないかと。本当に財政が破綻するんであたら金利が上昇して、大変なことになっているはずなんだけど、なってないじゃないか。そのことをおまえはどう思っているんだ?というのが、普通のツッコミ方ですね。」
その一方で今回の論文については、
吉崎氏「コロナによって各家庭にはざっくり20兆円ぐらい、使いたかったけど使えなかったお金がある。それをうまく解き放てばおのずと消費活動は活発になると。今コロナが沈静化しつつある中で何でそんな大きな財政のパッケージが必要なんですか?」という意見など、いくつか賛成する箇所はあると吉崎氏は述べた。
野村アナ「このタイミングで月刊文藝春秋に寄稿した矢野事務次官のことがこんなに影響を及ぼしている。これは矢野さんが岸田総理に『大風呂敷やめてくださいよ。あとで困るのは岸田さんなんだから』という意図で論文を発表した可能性はありますか?」
吉崎氏「矢野さんがやってるかどうかはわからないですけど、それに近いことは…財務省は組織で動くんで、ある程度はやってるんじゃないですかね?ただ矢野さんって方は私の知る限りこういう本音の方で、政治ゲームとして『文藝春秋』を使っているってことは、おそらく無いと思います。」
すでに矢野事務次官には更迭の噂も出ているが、それについても吉崎氏は「全然平気じゃないかと。そもそも自分が事務次官というポストにいることが間違いだと思っているのでは?」と推測した。はたして、この影響がどこまで広がって、どういう結末を迎えるのか、今後注目していきたいところである。
「くにまるジャパン極」は平日朝9~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。吉崎達彦氏はコメンテーターとして毎週火曜に登場。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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