「電車で気まずい」コロナと間違われがちな咳喘息│原因と対策を医師が解説
電車に乗っていて、軽く咳をしただけで、周囲の厳しい目線を感じたことはありませんか?新型コロナウイルスの感染者数が減っているとはいえ、いまだに電車内などで咳をすると、周囲の人に気を遣ってしまいます。コロナと間違われがちな咳喘息の原因と対処法を医師が解説します。
冬は気温の低下と空気の乾燥でコロナを含めてインフルエンザや風邪といった感染症で咳が出ることが多い。一方、秋は感染症のケースもあるが、感染症以外で咳が出ることが1年で最も多い季節でもある。
中でも近年増加しているのが喘息だ。呼吸が苦しくヒューヒュー、ゼーゼーと音がするアレルギーの病気のイメージがある喘息は、病名で言うと「気管支喘息」。秋に増えるのだが、音がしたり呼吸が苦しくなることで本人は気が付くことが多い。
ところが、最近は咳だけが出る「咳喘息」が急増中だそうだ。咳喘息は気管支喘息よりも症状が軽いが、軽症だからこそ「風邪気味なのか」と思いこみがちで、実は10年ほど前まで医師も見落としがちだった。
では、気管支喘息と咳喘息のそれぞれの特徴は?
まず気管支喘息はアレルギー反応で気管支や気管の空気の通り道が細くなる。
さらにアレルギー反応による炎症で気管支や気管の内側に粘液がつく。そのために空気が通りにくくなり、呼吸がしづらくなる。無理やり空気を通すので、笛を吹いているのと同じ原理で音が出る。一方、咳喘息は体内で起きている現象は気管支喘息とほぼ同じだが、空気の通り道はある程度確保されている。ただし炎症は起きているので咳だけが出る。もちろん症状が軽いからといって放置は絶対ダメ。徐々に悪化し、本格的な気管支喘息へ移行する。ちなみに気管支喘息により国内だけで年間1000人以上の方が亡くなっているのだ。
ではなぜ、秋に気管支喘息も咳喘息も増えるのだろうか?
その理由は、まず気温の変化で気管支や気管に炎症が起きやすくなり、気圧も変わりやすいということ。先日、台風16号が接近したが、秋に多い高気圧から低気圧に変わることで、自律神経が反応し誰もが気管支や気管が細くなるのだ。中でも喘息の人はアレルギー反応が加わり激しい症状になる。「そういえば台風の時に咳が出たな」という人は咳喘息かもしれない。
秋に喘息が増える2つ目の理由は、夏の間に室内に目に見えないダニやカビが増え、その死骸が増えてアレルギー反応を起こすため。対策としてお勧めは大掃除だ。アレルギー対策の効果は大きい。咳喘息の特徴として一般的な咳止め薬がほぼ効かない。場合によっては悪化する。一般的な咳止め薬は脳の中で咳をする指令を出す中枢を麻痺させることで咳を止めるのだが、咳喘息の脳への刺激は咳止め薬の効果を大幅に超えているので、咳は止まらないのが一般的。逆に咳止め薬が空気の通り道を狭くし、咳喘息が悪化することもある。なお咳喘息の治療は空気の通り道を広げてくれる気管支拡張剤などを使うのだが、適切な治療をすれば1~2週間で咳が出なくなる。
秋に咳が出るもう一つの原因は花粉症だ。ブタクサ、ヨモギ等の秋の花粉症の最大の特徴は、春のスギやヒノキと比べて花粉のサイズが小さいこと。気管支の奥まで吸い込んでしまうので咳が出やすい。かつて花粉症といえば春の代名詞だったが、最近は秋の花粉症に悩む人が急増している。特にヨーロッパは大変なことになっている。原因は地球温暖化。ブタクサやヨモギは雑草で暖かい気候になると育ちやすくなるから飛散量も増加。さらに大雨、洪水の影響で雑草の種が流され、生育地が拡大中。都会でも雑草が増えている。
昨今、高層ビルが増えているが、高層ビルを建てた場合に、建蔽率の関係で周囲に建物を建てられないため、そのスペースにブタクサやヨモギが生えるという仕組みだ。ただし、秋の雑草は背が低いので遠くまでは飛ばない。雑草近くに行かなければ花粉も飛んでこないので、雑草のそばには寄らないことが賢明だ。
吉田たかよし医師の「サキドリクリニック」は、文化放送で毎週水曜日の午後5時25分ごろから放送中。
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