いよいよ月内の総選挙へ。岸田政権が目指す「新しい資本主義」とは?~10月5日(火)ニュースワイドSAKIDORI!
岸田総理大臣は5日夜の記者会見で、今月14日(来週木曜日)に衆議院を解散し、19日公示、31日投開票の日程で総選挙を行うことを明らかにした。解散から投開票までの期間が戦後最短となる総選挙が与野党双方にどう影響するのか、そして総選挙最大の争点とみられる経済対策で岸田総理が目指す「新しい資本主義」とは何なのか。「斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!」で検証した。
番組には、選挙コンサルタントで政治アナリストの大濱﨑卓真氏が電話で出演し、今月30日に投開票が行われる総選挙について解説した。当初予想されていた11月7日よりも1週間早く総選挙が行われることになったが、その理由について大濱﨑氏は、「ひとつは新型コロナの第6波が来る前に行いたいため。2つ目は新内閣発足のご祝儀相場狙い。3つ目はマスコミ各社の世論調査は月末月初に行われることが多いため、10月末の調査の結果で支持率が高くなかった場合、選挙に不利になる。それを避ける意味で早めた」「選挙が早まり、与党も野党もバタバタしているのが現状だが、より厳しいのは野党の方だ。野党共闘を成立させるための調整時間が短くなってしまった」と解説した。斉藤キャスターの「河野太郎、小泉進次郎、石破茂の小石河連合が応援演説にかり出されることはあるか?」との質問に、大濱﨑氏は「総選挙の顔にはしないが、この3人を有効活用したいのが岸田総理の考えだと思う。この3人は無党派層や野党支持者からも票が取れるのが強みだ。一方で、(ライバルであった)この3人が目立ちすぎると、岸田内閣支持率が下がる可能性がある。票は取ってきて欲しいが、目立って欲しくないというのが本音だろう」と推測した。
火曜コメンテーターの小西克哉氏は「自民党は総裁選で衆院選の予行演習をしたと思っているのではないか。だとすると野党に比べ有利なはずだが」の質問。大濱﨑氏は「その通り。総裁選では1ヶ月もの間、メディアジャックをし、自民党内部だけでなく国内でも盛り上がっていた。既にエンジンは暖まっていていつでも戦える状態にあると言える。それに比べて野党は立憲、共産、社民、れいわ新選組による野党共闘をインパクトある形で成立させて急発進できるかどうかにかかっている。これが出来るかどうかで獲得議席数も数十単位で変わってくると見ている」と答えた。
後半には経済評論家の加谷珪一氏が電話で出演し、岸田総理の「経済政策」について解説した。岸田総理の掲げる「新しい資本主義」とはどのようなものなのか?加谷氏は「まだ岸田総理は明確には言ってはいないが、総裁選の中では、これまでの自民党政治で豊かな人とそうでない人との格差が拡大してきたと主張している。そこから考えると、新しい資本主義とは、所得の再分配を行って、これを成長につなげていきたいという主旨だと理解している」と読み解いた。
では、岸田総理が打ち出した「令和版所得倍増計画」とは池田内閣が半世紀以上前に進めた「所得倍増計画」とどのような違いがあるのだろうか?加谷氏は「多くの人が、池田内閣の所得倍増計画で国民が豊かになり所得が2倍になったとイメージしてると思うが、現実は違う。当時は年間の成長率が既に10%超えており、数年間で年収が2倍になることは最初から分かっていた。どちらかと言うと後付けと言える。つまり所得倍増計画は政治的メッセージが強かったと言える。当時は60年安保闘争で岸内閣が退陣し、国民が分断状態にあった。この状況を打破するため、所得2倍という非常に分かりやすい経済メッセージを発信したことで、池田内閣は政治的に成功を収めた。翻って、今はそれほどの高成長ではない。黙っていても所得が2倍になると言うことはない。そのため所得倍増の実現は難しいのではないかというのが市場関係者の間では一致した意見だ」と解説した。
経済には成長と分配が必要だと岸田総理は語っている。成長なくして分配なし。経済の成長をしっかりと財源として使っていかなければならないとも言っている。令和版の所得倍増計画にしろ消費税減税にしろ、それを行うためには財源が必要となってくる。では岸田総理の言う「経済の成長を財源にする」とはどういう意味なのだろうか?加谷氏の答えはこうだ。「にわとりが先か、タマゴが先か的な論争だ。一番理想的な姿は、経済が成長すれば税収も増えるので、その増えた分の税収を再分配に回そうというもの。かつての所得倍増計画がまさにそれで、経済が成長してくれたので再分配が出来た。ところが今は経済が成長できていないので、他から財源を見つけ出し、それをカンフル剤として経済成長をさせ、そこで生まれた果実を分配しようということになる。成長してから分配というのはなかなか難しいというのが正直なところではないか。」
では他の財源とは、富裕層や大企業への増税に踏み切ると言うことなのだろうか。加谷氏は「これはなかなか難しい。岸田総理は富裕層の株取引の課税強化などと言っているが、どこを財源にするかははっきりと言っていない」と答えた。分配の財源として考えられるのが、富裕層の株取引に対する課税と法人税のアップだと思うとの小西克哉氏の質問に加谷氏は「岸田総理は、富裕層の株取引に対する課税については言及したが、法人税に関しては明確に発言していない。株取引への課税をアップさせることで1兆円は分配分への財源として組み込めると予想している。ただ日本にはアメリカのようなすごい富裕層がいるわけではないので、アメリカほどの税収増は見込めないだろう。そうなると一番現実的なのは法人税だ。安倍政権下では法人税減税が3回行われている。これを元に戻せば2兆円ほど増えると思う。しかし財界からの反発があるので、岸田総理はまだ正式には発言していない」解説した。
岸田政権の経済政策。その正体はまだ輪郭も見えていないのかもしれない。
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