映画「アイダよ、何処へ?」で知る“ジェノサイド”の恐怖 〜斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI「サキドリ最前線」
「ニュースワイドSAKIDORI」で毎週月曜日お送りしている「サキドリ最前線」コーナー、13日の放送では、吉田愛梨レポーターが、旧ユーゴスラビアの、ボスニア・ヘルツェゴヴィナで26年前に起きたジェノサイド(大量虐殺)の悲劇をテーマにした映画『アイダよ、何処へ?』を紹介した。
多くの民族が共存し平和に暮らしていたヨーロッパ・バルカン半島の国ユーゴスラビア。
しかし国をまとめていたチトー大統領が死去し、その後東西の冷戦構造が崩れたことにより、ユーゴでは内戦が起きた。中でも、ユーゴを構成する国のひとつボスニア・ヘルツェゴビナでは、ボシュニャク人(ムスリム人)、セルビア人、クロアチア人の3民族が自分たちの国づくりを求め、その結果、仲の良かった隣人同士が、対立し殺しあうという悲劇の構図が生まれてしまう。
そして内戦末期の1995年7月、ボスニア東部の街、スレブレニツァでは、およそ8千人のイスラム教徒がセルビア人によって虐殺されるという民族浄化という名の大量殺戮(ジェノサイド)が起きるのだ。
「アイダよ、何処へ?」は、この「スレブレニツァの大虐殺」の真実に迫った映画だ。
ボスニア紛争末期の1995年7月11日、ボスニア東部の街スレブレニツァがセルビア人勢力の侵攻によって陥落。避難場所を求める2万人の市民が、町の外れにある国連施設に殺到する。国連保護軍の通訳として働くアイダは夫と2人の息子を強引に施設内に招き入れるものの、町を支配したムラディッチ将軍率いるセルビア人勢力が、国連軍との合意を一方的に破り、避難民の移送と残虐な処刑を始めたのである。
愛する夫や息子、そして同胞たちの命を守るため、主人公のアイダはあらゆる手を尽くそうとするが…
綿密な取材に基づき、スレブレニツァの大虐殺という繊細かつ重いテーマの作品を手掛けたのは、青春時代にこのユーゴ紛争、ボスニア紛争を経験したヤスミラ・ジュバニッチ監督。
ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞したデビュー作『サラエボの花』(06)以降、一貫してボスニア紛争の傷跡を描き続けてきた。
2020年ヴェネチア国際映画祭で大反響を呼び、ボスニア映画としては『ノー・マンズ・ランド』(01)以来、19年ぶりに米アカデミー賞国際長編映画賞へのノミネートを達成。
ジュバニッチ監督の最高傑作として絶賛を博している。
この『アイダよ、何処へ?』は、1995年夏にボスニアで何が起きたのかを再現ドラマのように緻密に描いた映画だが、スクリーンの中で起きている光景は、26年前の過去の歴史の中の出来事というわけではない。家を追われ、国を追われた人たちが逃げ惑う姿は今も世界の何処かで繰り返されている。シリアで、ミャンマーで、そしてアフガニスタンで。
そのことを思うとき、ボスニアで起きた悲劇は今の世界を予言したものとも言えるだろう。
映画『アイダよ、何処へ?』は
9月17日(金)から全国で順次公開される。
過去を眺めるのではなく、現在を見つめる映画だ。
『斉藤一美ニュースワイドSAKIDORI』は平日午後3時30分~5時50分、文化放送(AM1134KHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。
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