鮮魚店に学ぶビジネスイノベーション#1『浜松町Innovation Culture Cafe』
魚は良質なたんぱく源として高く評価されており、最近の健康ブームの影響で世界的に水産物需要が高まっています。その一方で、日本の水産物の消費量は年々減少しています。水産庁によりますと、国民1人当たりの魚介類消費量は、2019年度が23.8キロとなっており、ピークだった2001年度の40.2キロに比べて4割減少しています。2006年に魚の消費量が肉の消費量を下回って以来、その差は開く一方となっています。魚離れが進む要因としては、食の欧米化にともなう肉中心の食生活の増加、調理が面倒であること、価格が高いこと、子どもが好まないことなどが挙げられています。
ではなぜ魚を食べた方が良いのでしょうか。それは含まれる脂質の違いにあります。肉類に含まれる脂質を構成する脂肪酸には、大きく分けて飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類があります。肉類に多く含まれているのは飽和脂肪酸です。飽和脂肪酸には、血液中の中性脂肪やコレステロールを増やす作用があり、摂取過多になると脂質異常症を引き起こします。中性脂肪やコレステロールが増えると、血液はドロドロになり、動脈硬化を進行させます。肉類中心の偏った食生活を続けていると、心筋梗塞や狭心症などの心疾患、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患といった重篤な病気につながる危険性があります。一方で、サンマやイワシなどの青魚に多く含まれる脂質は、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸で、血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させる作用などがあります。これらは前述した生活習慣病の予防に役立つことがわかっています。また、DHAには脳の機能を活性化する働きがあるとも言われており、特に子供の成長に重要な栄養素として世界で注目されています。
日本の水産業界の大きな課題となっている魚離れですが、新型コロナウイルスの影響による巣ごもり消費の影響もあり、家庭で魚を食べる動きが広がっているそうです。料理をする機会が増えた人、料理に時間をかけるようになった人が増加したのに加え、健康を意識した食材選びをする人も増えており、魚食回復への兆しが見え始めています。これを機に、皆さんも食生活を見直してはいかがでしょうか。美味しく食べて、いつまでも元気に過ごせたら良いですよね。
様々な社会課題や未来予想に対してイノベーションをキーワードに経営学者・入山章栄さんが様々なジャンルのトップランナーたちとディスカッションする番組・文化放送「浜松町Innovation Culture Cafe」8月9日の放送では、ディップ株式会社執行役員宮内俊樹さんと、東信水産株式会社代表取締役社長織茂信尋さんにご参加いただき、「現在のとりくみ」から「日本の食の現状と今後」について熱いトークが繰り広げられました。
現在のとりくみ
宮内 弊社は「バイトル」や「はたらこねっと」など求人サービスを運営しており、そのデジタル化を進めるミッションを行っています。またDXのSaaSのサービスや自社開発したものを販売しています。今後、労働生産性は確実に減るのでそこはデジタルサービスで補完し、より魅力ある人を採用するためにバイトルのサービスを伸ばしています。
織茂 デパ地下の魚屋をイメージしていただければと思います。注目されている理由は温故知新、当たり前の中身を変えたからだと思います。30店舗共通のバックヤードで効率的に魚を捌いて保管することにより、鮮度が高い魚が提供できます。かつ店舗ごとのバックヤードがなくなるので、広くなったスペースで店舗のパフォーマンスも上がります。あとは効率化を追求しても、インターフェイスを壊してはいけません。内政改革を行なっても、職人さんとのコミュニケーションなどエンターテイメント性を残しています。
日本の食の現状と今後
織茂 世界中の人が魚を食べるようになっている一方で、日本人の魚離れが問題になっています。日本は海洋国家なのに特定の売れる魚しか販売されていません。物流の効率化で都内に未利用魚を上手く運ぶことができたら、現状は大きく変わってくると思います。豊かな海を誇りとし、日本人皆で頑張っていけば、食生活も良い方向に変わっていくと思います。
宮内 ヤフーに勤めていた当時、ネットで魚を売っていましたが、「漁師のおまかせ」という詰め合わせが一番売れました。売り方によって食べる楽しみが生まれます。漁師しか知らない知識は人生の豊かさに繋がると思いますし、魚が身近な存在に戻ってくるきっかけとなると思います。
※この放送を経て、入山章栄さんが得た「学び」をゼロから整理した、完全オリジナルコンテンツをニュースレターで配信中です。
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この記事の番組情報
浜松町Innovation Culture Cafe
月 19:00~19:30
浜松町の路地裏にひっそりと佇むカフェ「浜松町Innovation Culture Cafe」 経営学に詳しいマスターが営むこのお店には、様々なジャンルのクリエ…