吉崎達彦氏「開幕直前の東京五輪、世界の有識者はどう見ているのか?」~ 7月20日「くにまるジャパン極」
7月23日に開会式を迎える東京五輪について、エコノミストの吉崎達彦氏は『海外ではどんな風に東京五輪を見ているのか』をテーマに、7月20日放送の「くにまるジャパン極」(文化放送)で海外の有識者の声を紹介した。
吉崎氏「世界最大の言論機関といわれるNPO『PROJECT SYNDICATE(プロジェクト・シンジケート)』というニュースサイトに『Tokyo’s COVID Games(トウキョウズ・コビット・ゲームズ)』という特集がありまして、その中から賛成論、反対論、中間論の3つをご紹介してみようかと思います」
吉崎氏はまず、東京五輪に対する「賛成論」を紹介した。
吉崎氏「賛成論を語っているのはビル・エモットさん。イギリスのエコノミスト誌の編集長です。元々は日本支局長で、日本がバブル絶頂期の頃に『日はまた沈む』という本を書いた、大変日本の事をよくわかっている人です。このエモットさんの意見を端的に言えば『ゲームは進む』。日本は出来るんだからやるべきだ。日本の感染状況というのはヨーロッパやアメリカの基準から見ると全然大したことなくて、日本がやっているロックダウンは(イギリスに比べると)全然ロックダウンじゃないんだ、というようなことをいっています。ワクチンの接種も遅れているけど、進んではいるんでまあやれますよ、やりましょうよ!という意見です。」
続いて吉崎氏が紹介した「反対論」とは……。
吉崎氏「反対派の意見というのはオランダ人作家のイアン・ブレマーさん。若い時に寺山修司の演劇を観て感動して日大芸術学部に学んだ面白い経歴の方で、週刊東洋経済などにコラムを載せてますね。この方も日本について詳しいのですが、山口香理事の五輪反対の話などを紹介しながら『日本は中止のタイミングを逃した』といういい方をしています。」
ブレマーさんの意見は辛辣で、五輪そのものを全否定している。
吉崎氏「これまでで良かった五輪は敗戦国だった19年後に日本が経済的に繁栄を取り戻し、なおかつ平和国家として戻ってきた1964年の東京五輪と、軍事国家だった韓国が民主化のきっかけとなった1988年のソウル五輪の2つだけで、あとはろくなもんじゃないと。2004年のアテネ、2008年の北京、2014年のソチなどで、アテネは借金しか残っていないと。こんな金のための大会をいつまでやってんだと、五輪そのものを全否定しているんですね。」
そして吉崎氏は「中間論」も紹介した。
吉崎氏「中間論を語っているのはコロンビア大学教授の伊藤隆敏先生で、『日本の静かな五輪』というタイトルで書いていまして、日本は五輪によって国論が割れちゃった。とにかくお祝いムードはもう無いし、経済効果も今さら期待が出来なくなっていて、これだけ意見が分かれちゃうと中間採るしか無くて、無観客開催になっていると。これで五輪が終われば多分政局になりますねと。政府に対する批判は高まっているんで、五輪が終わったら菅さん大変よ?と日本の状態を世界に説明しています。」
最後に吉崎氏は自らの意見も述べた。
吉崎氏「私が思うのは変な話中止にならなくて良かったなあと。だってこれもし中止になってたら、東京って五輪に3回選ばれて1回しか出来なかった呪われた都市ってことになって、この評価は多分永遠に消えなかったと思うんですよね。これがどんな終わり方になるかわからないけど、とりあえず2勝1敗になっただけでも良かったなと思います。ただ最悪なのは、やったけれどもかえって都市の評判は落ちた。これだけは避けたいですね。」
運命の東京五輪、果たしてどんな結果になるのか。その行方はまったく読めない。
<参考ニュース>
【ワシントン共同】米紙ワシントン・ポスト電子版は17日、開幕を23日に控えた東京五輪について、これまでのところ「完全な失敗に見える」と指摘し、1964年の東京五輪のように日本に誇りをもたらすことは期待できないと伝えた。新型コロナウイルス流行の影響で国民に懐疑論が広がり、当初の五輪への熱気は敵意にすら変わっていると報じた。 同紙は64年の東京五輪について、日本が第2次大戦の敗戦から立ち直ったことを象徴し、大規模なインフラ整備も進んだと説明。今回の五輪は首都圏での無観客開催が決まったことで経済効果も期待できないとした。
(共同通信ニュースより)
「くにまるジャパン極」は平日朝9~13時、文化放送(AM1134kHz、FM91.6MHz、radiko)で放送中。吉崎達彦氏はコメンテーターとして毎週火曜に登場。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。
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