定年退職後も働いて、賃貸に住むには? 大人世代に送る「一番リアル」な老後準備(おとなライフ・アカデミーWEB)
今を楽しく生きるおとな世代のための情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」。
残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、暮らしにまつわる様々な事柄を語り合います。
この連載では、人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2021」で話した内容をもとに大垣さんが執筆した、ここだけのエッセイを掲載中。
ラジオと合わせてもっと楽しい、読んで得する「家とお金」の豆知識です。
2021年5月22日の放送は、リスナーメールをご紹介。定年退職後の暮らしを考えるようになってきた「ドリアン」さん。気になるのは、10年後、20年後の自分が、どうやって働き、どこに住むかなのですが・・・。
定年退職後の暮らしについての質問です
今回の放送では、横浜市保土ヶ谷区の「ドリアン」さんから、いくつか質問をいただきました。そのうちの二つをご紹介したいと思います。
まず、一つ目の質問。
今後、10年、20年先に、仕事はあるんでしょうか? 着々とAIに侵食されている感があるんですが。
10年後にも、もちろん仕事はある! ただし・・・
結論から言うと、仕事はあると思っています。ただ、誰にでもあるかというと、そうではないなと。
まず、ワンパターンな仕事はなくなるかもしれませんね。AIに取って代わられることもそうですが、そもそも、年齢が高くなってからもずっと毎日同じような仕事をしていると、だんだん能力も落ちてきて、評価されなくなるように思います。
ガンダムから出て、生身で戦え?!
それから、これは持論なのですが、10年後、20年後、さらには定年退職後も仕事をもらうために重要なのは「ガンダムから出て、生身の状態でも戦える」ことです。
皆さん、ガンダムってご存じですよね。人間が中に入って戦う、大きいロボットなんですが。
ガンダムの中にいると、自分のもともとの体では絶対にできない動きができます。飛んだり、すごい速さで走ったり。
会社で仕事をするのには、そういう側面があると思うんです。個人では絶対にできないような、大きな仕事ができる。
問題は、ガンダムのコックピットから降りたあと、つまり、会社を辞めたあとですよね。等身大の自分に戻ったときに何もできなくなる人は、私の周りでも結構いました。
等身大の自分にできることを意識しながら働く
そういう事態を防ぐためには、やっぱり、会社にいる時期から、会社に頼らなくてもやっていけるぐらい、自分の力を付けていくことが必要ですよね。
いつかは組織から出て、等身大の自分で戦わなければいけない、と理解してほしいです。個人的には、40代ぐらいからそういう努力をしなくなる人が増えるように思うのですが。
きょうより明日、明日より明後日の自分が良くなるように働いている人は、退職後もスムーズに、自分の場所を見つけられている印象があります。
仕事はある。でも、もらえるときまで待っていると・・・
ドリアンさんの質問を見ていて、少し気になったのは「仕事はあるんでしょうか」という表現です。
この表現ってまさにサラリーマン的なんですよね。もしかするとドリアンさんにとって、仕事とは「もらうもの」「雇ってもらうもの」なのではないでしょうか。
雇う/雇われる関係性だと、雇う側が採りたいのはやはり若い人ですよね。退職後に雇ってもらおうとすると、スタートラインからかなり不利なレースを強いられることになります。
それなら、自分で仕事を創ることができる人になればよいのではないでしょうか。
賃貸住宅の契約、定年退職後はどう変わる?
「ドリアン」さんからはもう一つ質問をいただいています。
定年後に賃貸住宅の契約をする場合、保証人はいりますか?
ということなんですが。
これ、不動産業界の人も頭を悩ませている、微妙な問題なんです。
シニア入居者を嫌がるのは、不動産業者ではなく・・・
意外かもしれませんが、不動産業者はいわゆる「シニア入居者」を嫌がらないんです。業者が本当に入ってほしくないと思っているのは、夜逃げをしたり、近隣トラブルを引き起こしたり、家賃の支払いが滞るような入居者ですから。
ではなぜ大人世代の賃貸契約は困難か。それは端的に、大家さんが嫌がるからなんですよね。入居中に家で死んだら困ると。
業者は大家さんの要望には答えざるをえないので、そうすると、60歳以上の人は無条件で断るとか、そういうことになるのです。
ただ、今はインターネットで物件情報サイトなんかを見ていても、条件のところで「高齢者歓迎物件」を探せるようになっていますから、ドリアンさんも、そういう物件を探してみるのは一つの手だと思いますよ。
高齢者を嫌がる大家は、自分で自分を不利な状況に持っていっている?!
さて、先ほど、業者は高齢者よりも、夜逃げやトラブルを起こすような入居者のほうを避けたいと思っていることをお話ししました。
実は、大家が「高齢者は嫌だ、でも空き家も嫌だ」と要望を出すことによって、言い方は悪いですが、こういった困った入居者が入ってしまう確率は上がってしまうんですよね。
年金などで収入の安定している高齢者をはじいて、トラブルを起こしやすい入居者を優先させるのは、本末転倒なのではないかなと思うんです。
大家さんの意識が変われば、賃貸は定年後でも借りやすくなる
ドリアンさんは保証人についてご質問をくださったのですが、やっぱり今は、物件次第、大家さん次第のところが大きいんですよね。
今後、大家さんの意識が変わってくれば、若い頃に賃貸物件を借りたのと同じような感覚で家が借りられるようになるとは思います。
というわけで、今回は、定年後の暮らしについてお話ししました。ドリアンさん、ありがとうございました。
■お知らせ
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住まなくなった家をJTIが借り上げ、入居者がいない空室時も毎月賃料をお支払い。
また、皆さまの大切な我が家をケアするパートナーとして、入居者トラブルにも責任を持って対応しています。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。
カウンセリングやご相談は無料。資格を持ったスタッフが、皆さまの家についてしっかりとお話をうかがいます。
制度についての詳しい情報は、「移住・住みかえ支援機構(JTI)」のサイトをご覧ください。
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