『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    将来的な人口減で、住宅価格はどうなるの?

『大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ』    将来的な人口減で、住宅価格はどうなるの?

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情報番組「大垣尚司・残間里江子の大人ファンクラブ」では、残間里江子さん(フリープロデューサー)と、大垣尚司さん(青山学院大学教授、移住・住みかえ支援機構代表理事)が、お金や住まいの話を中心に、大人世代のあれこれを語ります。

この連載は、番組内の人気コーナー「おとなライフ・アカデミー2025」の内容をもとに大垣さんが執筆した、WEB限定コラム。ラジオと合わせて、読んで得する家とお金の豆知識をお楽しみください。

★メールまとめ
人口が減ったら、住宅価格は下がりますか?

★メール本文
住宅価格の高騰、ホントに問題だと思います。
ただ、今後、人口がどんどん減っていって
買う人も減っていったら、値段も下がったりしないでしょうか。
素朴な疑問です。
(多摩市 東京のどさんこ)さん

土地は下がると思いますが…
土地はそうだと思います。土地の値段は下がっていく。でも建物の値段自体は、円安とか、もともとの人件費が上がったりとか、そういうことで上がっているんです。だから、そう簡単には下がらないと思うんです。物価が上がっていくのと同じように上がるし、土地もまあ、物価が上がってると、そうはいっても上がるんです。人口が減ったから単純に土地が安くなる、っていうものでもないので。買う人が少なくなるかならないか、ということもあるんだけど、投げ売りになるほど供給と需要のギャップがあれば、おっしゃるようなことが起きるとは思います。でも結局、家を買いたい人と売りたい人が同じくらいいる…ということだと、そんなにも値崩れするものでもありません。土地についてはキャベツが豊作で300円が150円になる、という下がり方はしないと思います。

預金が投資に回っていくと…
ただ問題だと思ってることはいくつかあります。そのうちの一つは「貯蓄から投資へ」と言ってるでしょ。これってやる人から見ると、貯金を下ろして投資信託を買ったりとか株を買ったりということですよね。いまの貯金は温存して、次に収入が増えたんでそこから改めて株を買う、というよりは動かしてますよね。これを銀行の立場から見てみると、貯金を投資信託に回すのだから、預金が減ってその分だけ窓口で投資信託を売って、そのお金はマーケットに行きますよね。そうすると住宅ローンを貸してるお金って、何かというと、銀行預金。実は実際にアメリカで起きたことがあるんですけど、ギューって金利が上がっていったり、マーケットがいま良くなってますね、とくに給料増えてないけど株が上がってますよね、みんな何したいですか?っていうと、貯金を減らしてマーケットに回すんです。投資信託のお金は住宅に投資したりはしません。株を買ったりします。

銀行預金が不安定になると
そうすると銀行が貸すお金がちょっと…不安定になっていってる。急には減りませんし、なくなったりはしませんが。でも皆さん、ネットでぱっと見て、たとえばいま入ってる銀行が地方の銀行が0.2%の預金のときにネット銀行が1%のキャンペーンとかやっていたらどうします? 昔だったら、田舎のおばあちゃんは「そんなネットの方が高いわ」ってわざわざ町まで出てって変えませんよね。でも今はスマートホンでピュってやると動いてしまう。現に動いてるんです。欧米は「デポジット・フライト(預金が飛んでく)」って呼んでいて、これが現実に問題になりだしています。全体の預金の額はそんなに動くものじゃないんですけど、やっぱりそんなにがんばって高い金利をつけても運用ができない地方のところとか、そういうところにメガバンクがもう今度は…メガバンクは、貸すところはいいっぱいあるわけじゃないですか。いくら集めてもいいから集めますよね。そうすることで少し動きが出てきちゃってんですね。

住宅ローン「ただ同然」時代の終焉
そうするとローンを貸すと30なん年間ずーっと貸し続けなきゃいけないから、貸すためのお金をキープし続けないといけないんですけど、減ってきて足りなってくると、マーケットで調達するんですね。よその銀行から借りたりする。そうするとその金利は、自由金利なので、けっこう高くなるんです。弱いところが強いところから借りようとしますので、足元を見られるレートになったりして。実際、80年代にアメリカの地方銀行がみんな赤字になったことがあるんです。4分の1ぐらいの銀行が潰れました。そんな極端なことは日本では絶対に起きませんが、それにしても、そろそろ預金でずっと貸せるのか、っていうことが、不安になってくると何が起きるでしょう。住宅ローンが今まで日本の人は当たり前だったんですね、タダみたいなのが。そっちが、そうでもなくなってくるぞという時代のほうが、たぶん土地が…人がいなくなって下がるよりも、ずーっと先に起きると思います。当時、アメリカではその事態を受けていろんな工夫が生まれました。日本ではそういうことはまったく充実してないので、そろそろ始めた方がいいよと…ということで、いつもの通りできっと10年早いんですけど、残価設定型住宅ローンを含め私たちはいろいろなことを始めています。そういう意味では、住宅をめぐる環境は大きく変わってきています。

今日は「住宅価格が下がることはないのか」について考えてみました。

メールをお寄せいただき、ありがとうございます。

大垣尚司 プロフィール
青山学院大学 法学部教授、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構代表理事。

第一線で培った金融知識をもとに、住宅資産の有効活用を研究・探究する、家とお金のエキスパート。

東京大学卒業後、日本興業銀行、アクサ生命保険専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学大学院教授などを経て、現在、青山学院大学法学部教授。
2006年に「有限責任中間法人移住・住みかえ支援機構」(現、一般社団法人 移住・住みかえ支援機構)の代表理事に就任。
日本モーゲージバンカー協議会代表理事を兼務。著書に『ストラクチャードファイナンス入門』『金融と法』『49歳からのお金ー住宅・保険をキャッシュに換える』『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』『生きづらい時代のキャリアデザインの教科書』など。

家とお金に関するご質問、お待ちしてます
番組では、家とお金にまつわるメールやご質問をお待ちしています。
宛先は、otona@joqr.netまで。

※この記事で掲載されている情報は全て、執筆時における情報を元にご紹介しています。必ず最新の情報をご確認ください

お知らせ
パーソナリティの一人である大垣尚司さんが代表理事を務める一般社団法人「移住・住みかえ支援機構」(JTI)では、賃貸制度「マイホーム借上げ制度」を運用しています。

住まなくなった皆さまの家をJTIが借り上げて、賃貸として運用。
入居者がいない空室時でも、毎月賃料を受け取ることができます。
JTIは非営利の公的機関であり、運営には国の基金が設定されています。

賃料の査定や、ご相談は無料。資格を持ったスタッフが対応いたします。

制度についての詳しい情報は、移住・住みかえ支援機構のサイトをご覧ください。

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