
「やなせたかし特番」放送を終えて【アーカイブの森 探訪記#38】
3月31日、ついに『ドンとモーグリとライオンと 〜やなせたかし 名作前夜』が放送されました。文化放送アーカイブスの半年間(資料発掘からは1年強)の集大成のような番組でした。みなさん、お聴きいただけたでしょうか?
後日各種Podcactでも配信予定ですが、一部音源が差し代わってしまうため、是非radikoのタイムフリー期間中にもお楽しみください。
※タイムフリーは1週間限定コンテンツです。
※他エリアの放送を聴くにはプレミアム会員になる必要があります。
今回の番組は、大きく分けて3つの柱で構成しました。少し詳しくお話しさせてください。
1.ラジオドラマ台本の朗読
この度発見された『トランジスタコメディ めい犬ドン』(1961 年~1963 年)の台本には、後にやなせさんの代表作となる「アンパンマン」や「やさしいライオン」に繋がるモチーフがいくつも散りばめられていました。
そこで3つのエピソードを抜粋して、朗読をお届けしました。
①「パンテンランタンの巻」(1961年1月30日放送)
②「アンコ・キッドの巻」(1962年3月25日放送)
③「やさしいライオンの巻」(1962年3月2日放送)
「パンテンランタンの巻」と「アンコ・キッドの巻」は、その名前を聞くだけでも「アンパンマン」を彷彿とさせますよね!やなせさんが大人向けの短い童話に登場させたのが1969年ですから、その何年も前にラジオの中でアンパンマンは産声をあげていたようです。
朗読を担当したのは、番組ナビゲーターで、アンパンマンが大好きなお笑い芸人・やす子さん。ラジオのナビゲーターに挑戦するのは初めてのことでしたが、はつらつとした温もりのある声で届けてくださりました。
「やさしいライオン」は言わずも知れた名作ですが、これもまた、始まりは文化放送のラジオドラマ「やさしいライオンの巻」でした。『めい犬ドン』の台本の中に「やさしいライオンの巻」を見つけた時は、思わず手が震えたことを覚えています。
当時『めい犬ドン』で「坊や」役を務めた女優・久里千春さんが、朗読を担当しました。実際にご出演されていた久里さんが60年以上ぶりに息吹を吹き込んでださったことで、収録ブースにいても当時の雰囲気を追体験することができました。
そして、やなせさんのご著書からの朗読を担当したのは、やなせさんと同郷の声優・小野大輔さん。小野さんのお声を通じて、やなせさんの大切にしていた想いがラジオによみがえっています。
2.当時のラジオドラマ音源を最新技術でリマスタリング
文化放送では、1950年代後半から60年代にかけて『現代劇場』という番組の中で、週替わりで30分間のラジオドラマを放送していました。やなせさんが手がけた作品も、この『現代劇場』で放送されていたのです。
今回の番組では、3つのラジオドラマをデジタルリマスタリングして一部お届けしました。
①現代劇場『チーラッタ号 最後の航海』(1960 年2月18日)
②現代劇場『潜水艦モーグリ号の冒険』(1961 年8月31日)
③現代劇場『ぼくは塩辛い噴水を愛す』(1960 年1月14日)
当時聞こえていたものよりもクリアな音質で、お届けすることができました。技術の進歩を感じるとともに、まるでドラマの世界に迷い込んでしまったかのような没入感は特別でした。
実は番組内で作品を紹介する際のBGMも、作品本編のものを使ったりしています。そこにも注目して改めて聴いてみると、新しい発見があるかもしれません!

3.生前のやなせ氏を知る関係者の声
やなせさんと親交の深い4名の方にインタビューを行いました。
①久里千春さん(女優)
やなせ作品に多数出演。当時の収録エピソードを紹介。
②加藤タキさん(コーディネーター)
やなせさんとともに番組審議委員を務める。当時のやなせ氏の人となりを紹介。
③平松利律子さん(編集者)
やなせさん最後の担当編集者。幼少期から積もるやなせ氏への想いを語ります。
④仙波美由記さん(やなせたかし記念アンパンマンミュージアム振興財団)
今回発見された資料の価値を学術的な見地から評価。
みなさんとお話を伺って印象的だったのは、やなせさんの「人生は、よろこばせごっこ」という精神。素敵なお話しばかりなので、これは是非本編でお聴きください。
さて、これまで長々と番組について紹介しましたが、今回番組は若手を中心とするスタッフがあえて白紙の状態で「やなせ作品」に向き合って制作したものです。「やなせたかし=アンパンマン」のイメージが強かった私たちにとって、やなせさんがラジオで生きた時代はとても新鮮で、そこに詰まった想いに胸を打たれました。
「やなせファンも知らなかった、やなせ作品の足跡」、そしてなにより、世界各地では戦争の絶えない時代だからこそ、戦争を憎み、平和を愛し、自己犠牲の精神に満ちたやなせさんの想いが、ラジオを通じてみなさんにも伝わっていたら嬉しく思います。
まだまだお話したいことはありますが、それはまたいつかどこかで…
執筆:豊澤
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